魔王とキナヴァリと三傑
魔王を歓迎する宴が開かれると鬼神族の砦に招待された魔王ヨウヘイと側近ブロンドであったが、そこで待ち受けていたのは鬼神族による暴力であった。
殴り飛ばされたヨウヘイは、よろめきながら立ち上がると鬼神族を睨んだ。その口元には血が流れていた。
「きっついなぁ、、、」
「ほう、この三傑トリア様の拳を受けて立てるのか。やるではないか人間。」
「オニぃ、なにをさらっと聞いてもない自己紹介しとんねん。しばくぞボケェ。それに俺は魔王や!」
「魔王?いやそう名乗る人間だろう。」
「違うわアホ!魔王や!!」
ヨウヘイは再び力を込めて青龍を具現化する。今度は先程よりも大きく具現化されていた。
「またその龍か?ワシには通用せんぞ。」
「血だらけで強がんなやオニぃ」
「では、放つが良い。また正面から受けてやろう。」
「調ぉ子ぃ乗んなぁやーーー!!」
青龍はヨウヘイの叫びをのせて咆哮をあげ襲い掛かった。青白い光と衝撃が崩れた部屋を更に破壊する。青龍は三傑トリアに衝突してもまったく勢いは収まらずに外にいた幾人かのダイモナスを巻き込み最終的に砦の塀をも破壊して霧散した。
地面には青龍が通った跡が焦げ付き煙を上げて残っていた。
「どや!オニクソ!」
ヨウヘイはかなりの魔力を消費したのか、肩で息をしていた。
土煙が晴れていくと、大の字で倒れるトリアが見えた。
「ほれ見ろ!クソオニ!お前なんか魔王の足元にも及ばへんのじゃ!」
「、、、ふぅ。」
倒れていたトリアは目をパチっと開き、むくっと上体を起こした。
「イタタタ、、、。最初のに比べりゃケタ違いじゃのお。」
「し、しぶとっ!マジか!?」
ヨウヘイは、上体を起こしたトリアに驚きつつも好機とみて追撃をと身体に力を込める。
「ゔぅっ、、」
ヨウヘイは脱力感を覚える。気を失った時の記憶が蘇るが、それでもここで放たなければと踏ん張った。
「クソオニがぁーーーー!!」
両手を前に突き出し全力で青龍を具現化させた。
ヨウヘイの背中からみゃあっと咆哮をあげ青龍が飛び出していく。
「みゃ、みゃあ?」
ヨウヘイは両手の先にある青龍をゆっくりと覗き込む。
そこには青い蛇という表現が的確であろう青龍がニョロっと飛んでいた。みゃあ、みゃあと可愛い咆哮をあげてトリアに近付く。
トリアはゆっくりと近付いてくるニョロニョロの青龍をしっかりと見届けてから、座ったままハタキ落とした。
「はっはっはっはっ。ガス欠か?」
「ゔぅ、、クソがぁ。」
ヨウヘイは力を振り絞り放った攻撃が空振りに終わり片膝を付いた。
途切れそうな意識を繋ごうと膝をつねるが、徐々に視界がぼやけていく。薄っすらと、トリアが近付いて来るのが見えたが何かできる力は無かった。
「ゔっ、、ゔぅ、、、」
ヨウヘイが意識を取り戻すと目の前には豪華な料理が並んでいた。身体を動かそうとしたが、思うようにいかなかった。腕は後ろ手に縛られ、足も拘束されていた。身体は上半身を中心に布と縄を用いて幾重にも重ねて縛られている。
「目を覚ましたか魔王。」
「だ、だれやお前、、、」
「魔王様!ご無事ですか!!」
ヨウヘイの背後からブロンドの声がした。振り返る事が出来ず様子は分からない。
「ん?、、、無事やないなぁ。」
「貴様らぁー!魔王様を拘束するとは何たる無礼か!!今すぐ解放せよ!」
「黙っていなさい。」
ギヴンはそう言うとブロンドを踏み付けた。
ヨウヘイは背後の様子に聞き耳を立てていた。
「この声、ギヴンがおるんか?お前、これが宴か?いう程豪勢ちゃうやんけ。」
「魔王様、宴は三日も前に終わっております。これは、我が主キナヴァリ様のお食事です。」
「三日!?うわぁ。また三日も寝てたんかぁ。」
ギヴンは拘束されたヨウヘイの側に近づき耳元で答える。
「ええ。いつでも殺せるぐらいにぐっすりと。」
「、、、はいはい、そうでっか。」
ギヴンが離れると今度は拘束されたヨウヘイの肩に腕を回す鬼神族が現れた。
「はっはっはっはっ。やっと目え覚ましたか!ワシなんぞとうに全ての傷が癒えたというのにお前は弱いのぉ。」
トリアであった。組んだ肩を揺らしながらヨウヘイを馬鹿にしていた。
「クソオニ、、、しぶとい奴や」
「あんなんで魔王を名乗るなんぞ百年早いわ!はっはっはっはっ。」
「トリア、その辺にしておけ。」
「はっ。すいません。」
トリアはキナヴァリに言われて下がった。
キナヴァリはヨウヘイの目を見て静かに語りかけた。
「さてメガミノオトシモノよ。お前は何故魔王を名乗るのだ?」
「何故?そんなんに理由がいるんか?」
「何も無いのか?」
「ただやりたいように生きたいだけや。」
「欲望のままに?」
「そう、それそれ欲望や。」
「では魔王などと名乗る必要はなかろう。」
「なんでアカンねん。名乗りたいから名乗る、殺したいから殺す、ヤリたいからヤル。それが欲やろ?」
「そうであるが、魔王とは特別な意味を持つのだ。そう我々魔族を総べる者、それが魔王なのだぞ。」
「はぁ!?なんやそれ?総べる?お前らアホか。誰かに従う為に生きとんのか?お前らも暴れたきゃ暴れりゃエエし、欲望のままに勝手に生きろや。」
「ならば、お前を殺しても構わぬと?」
「したかったらそうせぇやイチイチ聞くなアホ。俺はこの先も魔王を名乗るで、それは絶対やめへん。それが嫌やったら今殺せ。」
キナヴァリは拘束されても臆することなく話すヨウヘイにどんどん興味が湧いてきた。
「ギヴン、ジュニアを連れて来い。」
「はっ。」
キナヴァリが言うジュニアとはその名の通りキナヴァリの息子である。そして三傑の一人であった。
キナヴァリの息子ジュニア、ギヴン、トリアの3人がキナヴァリに次ぐ実力者鬼神族三傑である。
三傑が揃うと、キナヴァリはヨウヘイの拘束を解くように伝えた。ギヴンは言われた通りに外す。
「イタタタ。きつく縛んなや。痛かったわぁ。」
「魔王、三日ぶりの食事だ。たんと食え。」
「ほな、そうさせて貰うわ。」
ヨウヘイは異様な状況であっても欲に忠実であった。いま何よりも優先すべきは空腹を満たす事であった。
「美味っ!なんやこれ。美味っ!お前ら食べへんのか?勿体ないわぁ。」




