表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここに俺がいても良いんですか?  作者: ぱぱのです
6/77

オエド

泉の西にあるウエストバンクから伸びる街道を馬が引く荷台で進む。サキチとサヨは二人で一頭の馬に跨り、「これぞ青春」という光景が眼前に広がっている。

若さって良いなと眼福の面持ちで見ていると、後ろのサヨが振り返る。


「ヨウヘイさんっていくつ?」

「え?ああ、45だよ。」

「へえ。若いねえ。」

「ん?若いかなあ。」


ドベルクの話しを聞く限り、45年などほんの少しのことなのかも知れない。300年も前の話しを楽しそうに話していたのだから。青春の群像に見えた彼女たちも随分と年上なのだろうか。


「私達はね、今年で丁度80歳よね。」

サヨがそう言うと、手綱を引くサキチが頷いて振り返る。


「そ、そうなん、、、あっ、そうなんですね、、、は、80。」

「やだあ、そんな顔しないでよ。あはは。」

戸惑う俺の様子を見たからか、サキチが言葉を繋げてくれた。

「俺達は、メガミノオトシモノに会うの初めてなんだけどさ、聞いた話しだとヨウヘイさんがいた世界で言えば俺達なんて子供みたいなものらしいからさ、そっちで言えば年下と思っても良いよ。」

「あはは。そうよ。ヨウヘイさんも見た目だけなら、私達とそんなに変わらないわよ。」

「え?見た目?そ、そうかな。」


自分の容姿は、自分がよく分かっている。どこからどう見てもおじさんである。海外の人からすると日本人は幼く見えるとは聞くが、その部類からも外れている筈だ。

それに、こんな黒ずんで荒れた手の肌感、、、、、

俺はそう考えながら自分の手に目をやった。


「え!!あれ!?なんで!?」


「ど、どうしたの!?忘れ物??なに?」


手を見て驚いた俺の声を聞いたサヨが心配そうに見ていた。


「いや、ごめん、、でも、こんな事、、、」

「ねえ、どうしたの?大丈夫?」


サヨの問いかけに答える事が出来ない程、驚いていた。

幾つもバイトを掛け持ちし、酷いときは月に400時間を超えた事さえあった。その影響か、俺の手はひび割れや、肌荒ればかりでいつしか黒ずんでいた。黒ずんでいた筈だった。それがどういう事か、なんとも若々しい肌をしている。自分から生えている筈の手が自分のものとは思えなかった。


「、、、あの、、、サヨさん。鏡とかある?」

「え?何?急に鏡?ちょっと待ってね、、、どうぞ。」


サヨから手渡された鏡を覗き込む。

絶句した。懐かしい、、、そこには、高校に通っていた時の俺が映っていた。その光景に余りに信じられず、鏡で周囲のものを映しては覗き込む。サヨは、俺が見えているサヨで、サキチも同じ。馬も景色も。


「サヨ、、さん。サキチさん。俺、45じゃないのかも。」


目を丸くしながら話す俺が可笑しかったのか、二人は顔を見合わせると爆笑していた。


「くくくく。何だよそれ。ヨウヘイさん、変だよ。さっきは自分で45って言ってたのに。あははははは。」

「あははははは。本当よ。変なの。」


二人につられたのもあるが、自動的に

若さを取り戻した俺も笑っていた。


そうこうしている内に、荷車は【オエド】が視界に入る所まで進んでいた。


「ヨウヘイさん、見える?あれが【オエド】だぜ。」

サキチが指差す方向に、街並みが見えた。


「おお、、、見えるわあ。おーん?、、、なんや見覚えがあるような、、、」


近づくにつれて、その様子が日本のものだとわかった。

最初に目に入ってきたのは、金で装飾された派手派手しい天守閣。立派な城へと伸びる一本の大通り。その周囲には商店が立ち並び、横道の先には長屋が見える。まるで時代劇の中に飛び込んだようだ。京都にある映画の村とも違い、ここには生活感や現実感がある。

また、ウエストバンクとは違って建物の大きさも日本のそれと大差なく作られていた。


もう一つ驚いたのは、サキチ達のようなドワーフだけではなく、他の種族が往来にいた事だった。


「日本やなあ、、、そやけど歩いてる人だけ見たら、めちゃくちゃ異世界やわ、、、不思議やわ。」

俺がキョロキョロと辺りを興味深く見回すのと同じように、荷台にのった俺を異世界の人々はジロジロと見ていた。なかには近づこうか、話してみようかとコソコソと話しをしている人もいる。メガミノオトシモノが来たのはかなり久しぶりの事なのだから、仕方の無い事だろう。


「なあ、サキチさん。あれは、俺と同じ見た目に見えるんやけど、何の種族なんやろうか?」


俺は背丈や顔立ちが日本人のような人を見ていた。他の往来に比べて、尾や犬のような耳を持っていなかった。


「ああ、あの人達はヨウヘイさんに近いというか。普通の人間だね。」

「普通の?じゃあメガミノオトシモノ?」

「違う違う。その子孫っていうのかな。オエドを作った、、、名前なんだっけ、、えーと、、」

サキチが考え込むと、サヨが助け舟を出す。

「サマーイよ。」

「そうそうサマーイの子孫。」

「子孫、、サマーイ?日本人っぽくない名前やなあ。」

「そうなんだ。でもサマーイだったと思うよ。」


サマーイという名前は不思議だが、オエドを造ったのは間違いなく日本人だろう。前回のオトシモノが150年前ということならば、幾人かの子孫がいてもおかしくはない。

オトシモノ同士で子を育んだのか、それとも、、、。


サキチに、ここに住む種族の事を聞いた。

人型と言われる種族は、このように街に訪れるという。最も多い種族は、獣人といわれる種族で多種多様な獣人がいる。尾と大きな耳が特徴で、それぞれに特徴があるようだ。往来でよく見かける獣人は皆、【レイスウルフ】と呼ばれる狼だ。俺の目には狼らしさは無く、もし犬だと言われてもそうなのかと思ってしまう。

男女の違いは分かりやすい。その辺りは、人型と言われるだけある。衣服や顔立ちだけで分かる場合もあるし、身体付きでも分かる。獣人とはいえ尾と耳以外は、そこまで人間とかけ離れている訳ではなかった。

昔何かのアニメで見かけた、猫耳で可愛らしい女の子は残念ながらまだ見かけていない。興味本位で猫は?と聞いてみたが、猫?うーん?と言われたので、いないのであろう。

しかし、この街並みもそうだが同じ日本にルーツを持つ人達がいたことは、嬉しい発見であった。


「サキチさん、ところで俺は何処に行くのかな?」

「あっそうか言って無かったね。まずはヨウヘイさんがハコニワに来た事を登録する場所だよ。」

「登録。転入手続きみたいなもの?ここで生きるなら必要やな。」


馬が止まり、荷台から降りた場所がその登録を行う場所。

日本で言えば、市役所的な場所だろうか。この施設は、【ギルド】と呼ばれており、大きな街には必ず一つあるそうだ。異世界感はずっと感じていたが、その登録が終われば俺も異世界側の人間になる。少しドキドキワクワクしているのは、見た目だけでは無く気持ちも若返っているのかも知れない。


「さあ、ヨウヘイさん。入って登録してもらうよ。」

サキチとサヨに促され、俺はギルドに足を踏み入れた。

ご登録、いいね、評価、お待ちしております!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ