貴賓室
ラフテリアの王レオターリが望むフィリア連合国の王達との会談は突如として実現し、新しい貴賓室は緊張感に包まれていた。
「アオイ王、私はこれから大切な事をアオイ王にお伺いします。我々以外を退出させますか?」
「え?このままで良いですけど、、、」
「そうですか。分かりました。では、その前にお話ししたい事がありますのでお聞き下さい。」
レオターリは、ハコニワの現状を話し始めた。
ラフテリアの西、魔族の狭間からは日々魔族が現れては騎士団で抑え込んでいた。そのような状態になったのは、今から20年前からであった。
「アオイ王、メガミノオトシモノが厄災や災いと呼ばれていることはご存知で?」
「ええ、まあ。」
今から20年前。このハコニワの裏側で衝撃的な事件が起きた。セントラルという泉に落とされたメガミノオトシモノが、女神の祝福という儀式を経てオエドという大きな都市を壊滅させた。
「そのオエドはソウジロウの故郷でございます。」
「はい。ソウジロウさんから聞いています。でも、そんな事があったなんて。」
オエドを壊滅させたメガミノオトシモノは、それだけでは飽き足らず魔族を引き連れてハコニワにある国々を蹂躙しては属国としていきました。
その者は、自身の事を【魔王】と呼びハコニワの王となったのです。
「魔王ですか、、、。」
「はい。こちら側で無かった事は不幸中の幸いだと思っています。」
魔王が誕生してからの20年。裏側では壮絶で凄惨な状況が続いていると伝わっていた。何よりソウジロウがその惨状を目の当たりにしていたのだ。それからだという。メガミノオトシモノは厄災であり、ハコニワに災いを齎す存在であるとされた。
「そんなにも酷い人なんですね。魔王は。」
「はい。私は見ていませんが、偵察にやった者からの話しでは、欲望のままに生きていると聞きます。」
今までラフテリアはこの脅威からハコニワを死守しようと前線で踏ん張ってきたが、ここ数年は魔族の勢いが増しており、騎士団も日々重症者を出している状況が続いていた。フィンの薬が無ければ、今頃は裏側と同じ状況になっていたかと知れない。
「アオイ王、お尋ね致します。そして願わくば正直にお答え頂けると幸いです。」
アオイは、遂に自身の正体が露見すると強張ったが皆の顔を見回すと、やはり嘘は良くないと思い直す。それにメベドとオズワルドは微笑んでアオイを見ていた。既にメベドやオズワルドは知っている事でもあるのだ。
「どうぞ。お聞き下さい。答えます。」
「アオイ王は、メガミノオトシモノではないですか?」
ドラクル王やプロゴノス王、そしてソウジロウとリンデコールはその質問に驚きを隠せない。
「はい。そうです。僕はメガミノオトシモノと呼ばれる存在のようです。皆さん黙っていてごめんなさい。」
アオイは、素直に認めそして知らしていなかった者達に謝罪した。
「、、、やはりそうでしたか。アオイ王、正直にお答え頂きましてありがとうございます。」
「いえ、、、いずれ言わなきゃいけない事でしたから。」
レオターリは冷静なオズワルド、対象的に驚いているドラクル王とプロゴノス王に目をやる。
「オズワルドさんはご存知だったのですね。」
「ああ、そうですよ。アオイは我が家族ですからな。メガミノオトシモノであろうと何であろうと変わりは無い。」
「そうですか。では、ドラクル王とプロゴノス王にお伺いします。アオイ王が厄災であるメガミノオトシモノと聞いても連合国は継続されますか?」
二人はレオターリの質問を受けると、アオイを見た。アオイも、二人を見ていた。それは、二人が思うように答えて構わないという想いを込めていた。
二人はその場で立ち上がった。
ドラクル王が話す。
「レオターリ王、そのような愚問を我々にするとは何たる無礼か。我々はアオイ様に忠誠をお誓いしたのである!メガミノオトシモノかどうかなど、アオイ様の前では些末な事である!」
プロゴノス王も続いた。
「そうじゃな。レオターリ王、我々はただの利害関係でアオイ様に近付いたワケではないのです。アオイ様はアオイ様!紛れもなく我々がお慕い申し上げる連合国の王である!」
二人の話しをじっと聞いていたレオターリ王もその場で立ち上がった。そして、ドラクル王とプロゴノス王に向かい頭を下げた。
「皆様のお気持ちを試すような無礼をはたらいた事、この通り謝罪致します。どうか無知な者の戯れ言とお赦し頂け無いでしょうか。」
「レオターリ王の気持ちも分からぬワケでは無い。分からぬワケでは無いが、アオイ様と魔王を同列で扱うなど、今後は容赦なく切り捨てる。良いか。」
「勿論です。」
「理解したのならば、これ以上は何も言わん。プロゴノス王は如何か?」
「私もそれで構いません。」
3人の王は再び席につく。アオイは、二人が離れずにいてくれて嬉しく思っていた。
「アオイ王、度重なる非礼何とお詫びすれば良いか。」
「気にしないでください。僕も反対の立場なら聞いていたと思いますし、レオターリ王はソウジロウさんの為にも話しをしてくれたんですよね。」
「ええ、、、お分かりでしたか。」
「ソウジロウさんにとっては、メガミノオトシモノは許されない相手なのかと。そうかも知れない人が近くにいたら僕も聞いちゃいますし。」
「はい。ソウジロウは私が冒険者であった頃からの知り合いでもあります。彼の過去に私も憤っておりました。」
「そうだったんですね。じゃあ、もう謝らないで下さい。僕も事情を知らなかったとはいえ黙っていた事は事実ですから。ソウジロウさん、ごめんなさい。」
「いえ、アオイくんがメガミノオトシモノならば私は恨みもしなかったしあのような経験はしなかったでしょう。私が憎いのは魔王という人間だけです。」
「それで、王様よ。何がやりたいんだよ?」
メベドはレオターリの真意を聞きたかった。
「、、、、アオイ王。」
「はい。」
「我らラフテリアと共に魔族を討ち滅ぼしてはくれませんか。」
魔族が攻勢を強めて20年。
レオターリは現状を憂いながらも打開策を模索していた。そこに現れたアオイは、一筋の光に見えていた。
アオイの協力なくして願いは叶わない。しかし、アオイもまた魔王のような存在だとすれば、、、と疑念を持ち訪れたが霧散した。レオターリは決意する。




