冒険者の枠をこえる
ラフテリア王国内にある議事堂。ここには、国王が住む官邸がある。官邸の前には中庭があり、噴水の回りには季節の花々が美しく彩っている。
「ほう。またあの子たちの話題か。」
「はい。もう飛ぶ鳥を落とすどころか、あの子たちの前を飛ぶ鳥がいないといいますか。」
「本当に凄い冒険者が出てきたものだ。」
「ええ、今度はあの東のドラクル王が配下になったとか。」
「なっ!?ドラクル王が、、、つ、ついに冒険者という枠からも外れたか。」
ラフテリア王国の国王は先代から王位継承された初の獣人国王である。レイスライアンのレオターリは、冒険者として類稀な成果を上げていた。当時の最高到達点であった8階層を踏破し戻ってきたときは大喝采で王国中がお祝いをした。当時は謎もまだまだ多く、冒険者殺しのスキアなど攻略法も分からない中での偉業であった。レオターリの凄さは単純な強さだけではなく百獣の王の気品と器量で他の冒険者達に何かあると駆けつけるリーダーとして尊敬されていた。
先代の王は、崩御する少し前にレオターリと議会の者を呼び王位継承を伝えた際も満場一致で決定した程であった。
「規格外の子たちは、今どこにいるのだ?」
「確かメガミノ村のフィンという薬屋で雇われているとか。」
「薬屋で?何ともおかしな経歴だな。折を見て会ってみたいものだな。」
レオターリ王は、日課である花の水やりをしながらのんびりと中庭を散歩する。
その頃アオイ達は、里で土産話をし終えてデコ達の住処を訪れていた。
そこでアオイが見たのは、この世のものとは思えぬ惨状であった。
「こ、これは、、、」
「き、、、汚え、、、」
20頭に増え大所帯となったデコたちの住処は、荒れに荒れていた。聞けば片付けや掃除などは、一番デカいヴィンディードッグが小まめにやっていたという。あの時オズワルドと一騎打ちをしたヴィンディードッグの事だ。
「だとしてもさ、食べ残しとかは片づけられるでしょ?」
「食べ残し。違う。食べてる。途中。」
「じゃあ、この藁は?バラバラだけど。」
「布団。干してる。」
「いや、バラバラに散らばってるだけじゃん。」
「干してる。途中。」
「はい出たぁー。片付けられない人の言い訳えー、途中、途中って終わらせないとダメなんだよっ!ほら、片付けるよ!」
アオイとメベドはデコ達の住処を掃除していく。汚れものや不要品は取り敢えず袋に詰めて空間収納で消していった。藁も新たに集めてきて寝床を整える。
「ふぅ、、。デコ、毎日少しでも片付けしたらこんなにはならないんだからね。」
「、、、。」
「デコっ!」
「ウォン。」
「喋れるでしょっ!」
それから数日後にアオイ達が訪れるとまたグチャッとなっていた。どうやら20頭の中に片付けが習慣化出来るものがいないようだ。
「よし!もう分かった!」
アオイは収納からテントを出すと、デコ達の巣穴の側に広げる。
「アオイ、何やってんだ?」
「住む!もう、僕は怒ったんだ。ここに住んで、デコたちが汚さないよう見とく!」
「はあ?本気かよぉ〜」
「メベド、一人で里に戻ったりしないよね。」
「、、、」
「僕がいるなら地獄でもついて行くって言ってたよね。」
「、、、そうだな。」
アオイはせっせと野営の道具を並べていく。メベドの分も当然並べていく。あっという間に巣穴の横には二人分のテントたちが準備された。
「メベドさ木の板を買ってきてよ。」
「板?何で?」
「囲むに決まってるじゃん。あっちこっちに行くから色んな所にゴミも置くしモノも無くなるでしょ。だから買ってきて。」
「おう。」
「あ、凄く沢山いるから。この辺全部囲んじゃうし。」
「そんなに持てねえだろ。どうすんだよ。」
「ふふふふ!それは大丈夫。」
アオイはコーリウスをもっと便利に使えないかと夜な夜な実験していた。そして布袋に空間を転移させる事に成功していた。
「見て、これねコーリウスって唱えなくても袋の入口に近づけると入っちゃうの。」
「入っちゃうのって、、、それ凄すぎるだろ。」
「うん!マンガで見た事あってね。出来たらいいなって思ってたら昨日出来たの。」
「、、、おう。」
「それとこれは金貨ね。どんだけいるかわかんないし、半分持っていって。」
アオイは金貨と無限収納袋を渡してメベドを見送った。
「ノアールさんいる?」
「はっ。こちらに。」
「うん。他の人も全員来て欲しい。」
シュタタタっと全員が揃う。
「はい。では説明しまーす。」
アオイは、現場監督のように指示を出していく。
「これから辺り一帯に柵を作るので、手分けして丸太を集める人とこの辺りからぐるーっと一周等間隔で穴を掘る人に分かれてくださーい。」
シュタタタと3人と4人に分かれるマヴロスドラコン達。
「はーい。ではノアールさんは、里に戻ってマリーナさんからホウキを沢山借りてきてくださーい。掃きまーす。」
「はっ!」
「では、ご安全に!」
「?」
「えーと、僕に続いて言ってくださーい。ご安全に!」
「ご安全に!」
シュタタタっとそれぞれの持ち場へと向かっていった。
後ろではのんびりと日向ぼっこをしているヴィンディードッグが幸せそうに戯れていた。
「デコ、なんでみんな横になってるの?」
アオイはキッとデコ達を睨む。
するとササッと全員座り直した。
「丸太運ぶ!レッツゴー!」
バババッと全員森へと走っていった。
「よしっ、、、こっちには食料とか置いとく倉庫も欲しいなあ、、あ、ここはトイレかな。」とアオイはブツブツ言いながら地面に図面を書いていった。
まだ知らない。これがとんでもない騒ぎになるなんて。




