帰郷
紙面を独占するニュースを連発するアオイ達。
【神器の大巨人、トロール3体撃破】【6階層で無双の二人 神器のメベドとその子供】と見出しが踊る。
アオイは、メベドの子供として見られていた。アオイも悪い気はしていないしメベドも気にしていなかった。それに、その方がイチイチ関係性を説明をしなくて済むので楽であった。
見出しが出てからというもの、メベドが歩けば至る所で質問やら声援やらが飛び交い冒険者と話す機会も増えていた。しかし、それと同時に居づらさも感じるていた。迷宮の中も外もひと度二人が現れると囲まれ声援が上がる。
王国滞在7日目。遂に二人は決断をする。
それは、ほぼ同時であった。
『里へ帰ろう』
ピッタリと息の合った二人は、ワクワクしていた冒険を一旦やめて騒ぎが落ち着くまではゴブリンの里へと帰ることになる。
ギルマスのソウジロウにその旨を伝えると、約束のお金はどうしますか?と聞かれたので、里に持って来てはくれないと考え、フィンを経由してほしいと頼んだ。
建前ではあったが、二人はフィンの薬屋で雇われているのですんなりと決まった。
フィンには里に帰る前に立ち寄って説明をする。80枚を越える金貨にめちゃくちゃ驚いてくれたが、メガミノオトシモノとパグロームベアならあり得るのかと納得していた。
持たせてくれた薬草のお礼にと金貨何枚かを渡そうとしたが、それは二人で大切に使いなさいと言われてかえされた。
アオイ達は薬屋を後にする。
「メベド、、、」
フィンは、頬を赤らめて呼んだ。
「何だ?金貨か?やっぱり貰うか?」
「い、要らないわよ。そうじゃなくて、、、」
「何なんだ。早くアオイと里に帰りたいんだが。』
「もう、、、イジワル。また来てくれる?」
「ん?、、、来ないな、用が無い。」
「もうっ、、、イジワルなんだから、、、私が里に行けば会える?」
「そりゃそうだろうよ。俺たちは里に帰るんだ。何なんだお前?おババが言ってた変な薬か?」
「違うわよ。もう、、、待っててね。」
「知らん。行くぞ。」
メベドは変なフィンを放置し里へと帰っていく。アオイはくすくす笑いながらついて行った。
「メベド、その格好は続けるの?」
「ん?あぁ、斧があるからなぁ良いだろ?」
「勿論良いよ。メベドがそうしたいならそうしなよ。」
「アオイを背に乗せる事が出来ずにすまんな。」
「え?そんなの全然良いよ。一緒に歩こっ!何かこっちの方が慣れてきちゃった。」
二人は歩いて集落を離れて、「この先キケン」の立て札を通り過ぎ深い森へと入っていった。
生い茂る草木を掻き分けて、ズンズン進んでいくと見慣れた景色が広がっていく。ゴブリンの里だ。
里の入口ではマリーナが薬の素材を採取しているのが見える。防壁の上に立つゴブリンが二人に気付くと、下にいるマリーナに声をかけた。
マリーナは、手を振りアオイ達を出迎えてくれた。
「帰ってきたね。」
「あぁそんなに経っていなのだが、久しく感じるな。」
「うん。それだけ里が好きなんだよ僕達。」
「好きか、、、かも知れんな。」
アオイ達を出迎えたマリーナは屋敷へ一緒に行き、オズワルドと二人の子供を呼びに行く。
モブとコリンは一報を聞くと稽古そっちのけで二人の下に急いで走ってきた。
「アオイ!メベド!」
「お帰りーー!」
そこからはモブとコリンからの質問攻めの時間であった。
フィンの集落、薬屋の事、不思議な夢と魔法が使える事、ラフテリア王国の事、オルデン騎士団長やギルドマスターのソウジロウ、出会った獣人達、そして迷宮の冒険の話しをする。
「ほらこれが、冒険者の登録証だよ。」
モブとコリンは凄い凄いと目を輝かせていた。
迷宮で見つけた神器の斧の話では、メベドがブンブン振り回し自慢していた。果実スライムの美味しさや、ゴーレム、トロール、スキアなどの魔物の話しをして、最後は金貨をどっさりと見せて驚かせた。皆、感心しきりであった。
感心していたのはモブとコリンだけではない。オズワルドも、たった数日里を離れただけで、これだけの話題と神器や大量の金貨を持ち帰るなんて、里の誇りだと二人を持ち上げた。
その夜は、戻って来た祝いを里の者達総出で楽しんだ。
アオイは、メベドとモブとコリンの4人で里の近くにある秘密基地に移動した。
「ぷはぁーっ。食った食った。マリーナの飯は美味いなぁ。」
メベドは横になると、直ぐに寝てしまった。
「もう、折角4人で来たのに。」
「アオイ、俺達な稽古してんだ。」
「うん。オズワルドさんとやってるんだよね。」
「僕達もいつかね、アオイ達とね、、、」
「うん。」
モブはすくっと立ち上がる。
「俺達、お前らに追いつくからな!」
コリンも続いた。
「絶対追いつくから!待っててよ!」
アオイは立ち上がった二人の横に立つ。
「うん!一緒に冒険しよう!!」
3人がそう誓った後ろでは、メベドが大イビキをかいて幸せそうに眠っていた。
秘密基地で3人はワイワイと楽しむ。夜中まで騒いで話し疲れるとメベドの横に並んで眠りについた。
メベドのふかふかは無くなったけれど、4人は暖かく優しい空気に包まれて眠る。
翌朝、夢を語ったモブとコリンは早朝から稽古へと勤しんでいた。
アオイとメベドは、ヴィンディードッグの様子を見に住処へと向かう。繁殖活動を終え無事に妊娠したと聞いてから、20日程度経っていた。
彼らに栄養のあるものを与えようと、王国で燻製の肉をガッツリと買っていた。
「まだ産まれてないよね?」
「ああ、あとひと月ぐらいか。」
「可愛いかな?」
「可愛い?ヴィンディードッグが?ガハハハどーだろうなー」
フィンとリカバリーの素材となる苔を取りに来た以来の訪問であった。
滝壺の側に来ると
「アオイーーーっ」っと滝の上からデコが飛び出す。
尻尾をぶるんぶるん振りながら再開を喜んだ。
「デコ!元気そうで良かったよ。」
「デコ。元気!みんな!元気!」
「うん!今日は元気な赤ちゃんが産まれるように、みんなに燻製のお肉を持ってきたんだ。渡してくれるかな?」
「アオイ。一緒。みんな。あっち。」
「えっ。良いの?うん!行こう。」
デコに先導され滝の上に登る。そこには、大きな木があり、太い幹の隙間に枯れ葉などを敷き詰めたデコ達の巣穴があった。妊娠している、ハナ、ミギ、テイルが横になっていた。巣穴の前では3頭を守るように、マウスとダリが座っていた。
全員アオイに気付くと顔を上げて尻尾を振っていた。
「デコのお嫁さんは誰なの?」
「デコ。ハナ。」
「じゃあ他のみんなは?」
「マウス。テイル。」
「ダリ。ミギ。」
「あっ右左で揃ってるんだねぇ。偶然なんだろうけど、何か良かったぁ。」
アオイはカトリコと唱え収納していた燻製の肉100個をみんなの前に山積みにした。
「足りる??」
「アオイ。足りる。ありがとう。」
「本当?実はまだまだあるんだよね。」
アオイは、王国にいる間毎日屋台を回っては買えるだけ買わせて貰って収納していた。
保管リストには、燻製の肉がまだ500個入っていた。
「アオイ。大丈夫。今度。欲しい。」
「うん。子供が産まれたらまた、持ってくるね。あと30日ぐらいで産まれる?」
「分からない。だけど産まれる。絶対。」
「そうだよね。待つしかないね。また、何か持ってくるよ。」
アオイはデコ達と少しのあいだ触れ合う。
しかし、妊娠している3頭に気遣って早目に帰宅する事にした。
アオイは念の為と燻製の肉をもう100個置いて帰った。
お肉は巣穴の中だけではなく、外に溢れ出ていたがみんな喜んで尻尾を振っていた。
森に新しい生命が誕生するまで、あと少しだ。




