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ここに俺がいても良いんですか?  作者: ぱぱのです
35/77

魔族との対峙

迷宮は4階層から本格的になっていく。

魔物と魔族が入り交じる4階層は、並の冒険者であれば二の足を踏む者も多いだろう。

ある程度の実力を備えていなければ、即死もあり得る環境であった。


アオイ達の前に3人の冒険者が魔族と対峙している。

ゴツゴツとした岩が身体を生成しているこの魔族は、ゴーレムという。力任せに腕を振り回し、倒れようものなら容赦なく踏み潰しにくる。広範囲に打撃が来る為、逃げ場の少ない迷宮では防ぐのに一苦労する。


3人の冒険者は善戦していた。


「メベド、あの幕みたいのは何?」

「防御魔法だな。ほら後ろのトンガリ帽子、あれが発動させてるんだろうよ。」

「魔法かあ。良いなあ。」


3人は魔法使いが後方に控え、前衛は戦士が二人。

防御魔法と盾を駆使して何とか防いでいる。

ゴーレムの大振りを狙って空いた胴体や足元に何度も剣を当てているが、なかなか削り取るのに苦労している様子だ。


「メベド、攻撃魔法はどんなのがあるの?」

「ん?攻撃魔法か。聞いた話しだと、爆炎の魔法があるな。って言ってもあそこのトンガリ帽子じゃ使えない代物だろうな。」

「爆炎かぁ。そんなの使ったら、この辺一帯が炭になりそうだね。」

「そういう上級魔法を使う奴らは、針の糸を通すようにピンポイントで狙うらしいな。俺も見た事はないがな。」

「使ってみたいよね。何か呪文的な言葉があるの?」

「爆炎は、、、エクリティクフローガだな。」


アオイは、自分が使うならと妄想を働かせる。

人差し指をピストルのように突き出すと。

「針の糸、、照準をゴーレムの胴体に合わせて、、、えーと。呪文呪文、、、エクリティクフローガっ」


ズドンっ


アオイの指先から途轍もない炎が尾を引き、一直線にゴーレムの胴体を捉える。3人の冒険者は、真横を通った炎の熱を感じたがその瞬間にゴーレムは倒れ込んだ。


3人はそおっと炎が飛んできた方を振り返る。

そこには人差し指から煙が上がる子供が微笑んでいた。

いや、3人にはそう見えたのだ。実際は、苦笑いをしていただけだった。

「メ、メベド。これって、、、」

メベドも目を丸くして驚いていた。

「お、おう。それが、爆炎魔法だな。た、多分、、。」


3人の冒険者は、サササッと小走りでアオイ達の前に来て一礼すると、そのままサササッと3階層へと戻っていった。


「あれ、あの人達帰ったよね。」

「そ、そうだな。」

「僕のせい?」

「どうだろうか、、、まぁ助けてやったんだ。良しとしよう。アオイ、、、、、爆炎魔法は控えようか。」

「う、うん。そうだね。危ないもんね。はは。」


アオイ達は倒したゴーレムを見に行く。

胴体はぽっかりと穴が空き、穴の周囲は焦げた跡があった。アオイが放った爆炎魔法はゴーレムを捉え貫通すると消失したようで背後の壁などには跡が付いて居なかった。


「これは、ダメだな。」

メベドは空いた穴に手を入れて何かを探っていた。


「何?どうしたの?ヤバイ??」

「あぁ、ヤバイ。これは核ごと消し炭になってら。」

「核?スライムみたいな?」

「ああ。魔族にも核があってな、まぁ石みたいなもんだ。ほら、アオイにあげただろ。」

「石?もしかして、星空みたいなやつ?」

「そうだ。アレは拾っただけだがな。あの石は魔族の核で高く売れるんだよ。」

「石に値段が付くんだ。」

「そうだ。人間にとっちゃ、加工したりと何だかんだ使えるらしい。」

「じゃあ、勿体無い事したね。」

「だな。爆炎は禁止だな。」


魔法が使えた事はさておいて、メベドは知っている魔法の中で覚えているものを伝える事にした。取り敢えず炎については、爆炎ではなく一つ下の魔法フローガを使えと伝えた。


「うん。フローガね。」


アオイがそう言うと、メベドはサッと避けた。

「な、何??何??」

「、、、いや、また飛び出るかと思ったが、、、出ないな。大丈夫だよな?」

「あっ。そういう事?さっきは、使えるならって想像して打っちゃったからかな。」

「なるほど。それならば安心だ。知ってる呪文は教えよう。でも、想像するなよ。覚えるだけにしろよ。」


「えへへへ。」

「やめろ。俺が死ぬ。」

「あははは。冗談だよぅ、教えて。」


メベドが知っている限りでは、攻撃魔法は属性に分かれていおり、火・水・風・雷の4種類。

火の魔法の最高位が爆炎というように、それぞれの属性には最高位魔法が存在する。

属性によって、通常、中位、高位、最高位と段階があり熟練の魔法使いであれば中位を主に使い、中には高位の魔法を使える者もいた。一つ下と言われ教えられたフローガは高位魔法であった。

アオイの魔法が規格外であることは言うまでも無い。そこらの冒険者であれば、道を譲るのも頷ける。


「アオイ、魔法まで使えるとは何なんだメガミノオトシモノって奴は。」

「えー、、、元から使えたのかなぁ?呪文を知らなかったから使えなかったのかなぁ?」

「まっ、何でも良いか。その魔法があれば10階層なんてあっという間に突破するかもな。」

「えへへへ。そんな事ないよ。えへへへ。」

「使うなよ。」

「え?」

「爆炎。使うなよ。」

「もう、しつこいよ。分かったって。」


メベドが教えた魔法は、高位魔法が中心であった。メベドが覚えていた呪文が偶々高位以上ばかりであるという事だから仕方ない。アオイはどんどん規格外になっていくが、それは二人には知ることの出来ない事であった。


水魔法ドラコストネロー

風魔法リピアネモー

雷魔法スフィリブロンテス


「今はこれだけにしておこう。それでも威力は凄いかも知れん。狙いは定めて使えよ。」

「ドラコストネロー、リピアネモー、スフィリブロンテス。うん、覚えた!ありがとね。」


二人はゴーレムの死体を通路の端に寄せて進んでいく。二人は気付いていない。4階層の魔族が怯えて隠れている事など。


「押すな!ちょっマジで、マジだから。」

「行けよ!」

「お前がいけよ!俺はヤダよ。」

「なぁ、下に任せようぜ。」

「、、、だな。見てない事にしよう。」

「だな。秘密だな。4階層の秘密だコレは。」


横穴では、魔族達がそんな会話をしているなど誰も知らなかった。

そして、逃げるように出ていった3人の冒険者もまた、3階層で他の冒険者に話しをしていた。


「やべえ奴っス。悪魔みたいな奴ッス。」

「悪魔の方がマシなんじゃない。あんな魔法、お師匠様でも放てないわよ。」

「いや、ゴーレムを突き抜くなんて魔法協会ですら放てる奴なんているかよ。ありゃあ伝説級だろ。」


3人の冒険者の話しは、冗談だろと話半分で伝わるものの人外の強さを持つ子供と大男の噂は迷宮を駆け抜け、王都まで広がっていった。

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