ご褒美
メガミノ村の先っちょ女神様が祀られた祠には、綺麗な玉が置かれていた。女神様の涙の一部と言われ、御神体として置かれている。
3人は王国ラフテリアからメガミノ村へと戻り、フィンの薬屋兼自宅に行った。牢屋に入れてしまったお詫びにと、フィンは得意な薬膳鍋を振る舞ってくれた。
里でも何度か作ってくれていたが、自宅の方がより本格的な薬膳料理が作れると張り切ってくれていた。
その日はそのままフィンの家で一泊する事になる。
その夜、アオイは夢を見る。
「アオイちゃん、、、アオイちゃん、、、」
「うーん、、、誰?」
「アオイちゃーん。私だよ〜。」
夢に出てきたのは、アオイをハコニワへと連れてきた女神だった。
「ああ!女神様!えっ!?あれ、僕また死んじゃった?」
「ふふふ。死んでないわよ〜。大丈夫。これはあなたの夢の中よ。」
「ゆ、夢の中、、、良かったぁ。またみんなとお別れしたのかと思ったよ。」
「アオイちゃん、今日はねご褒美について話しに来たのよ。」
「あーご褒美!本当にありがとうございます。元気になっただけじゃ無くて、子供時代まで戻してくれて。それにモブやコリン、メベドやデコとか凄いいっぱい出会う事も出来たし、もう本当にありがとうございます!」
「アオイちゃーん、全然ちがーう。」
「え?」
「ご褒美全然貰えてないからね。それ。」
「え?なんで??」
「幼い姿になったのは、あなたの心の中で止まった年齢になっただけ。それはハコニワに来たらみんなそうなのよ。」
「そうなの?え?でもみんなと仲良くなれたし。」
「それも、アオイちゃん自身の人柄よ。」
「強くなったよ。」
「それは、最初に元気にしただけ。ほら、あの時に序の口って言ったでしょ。とりあえず、起きたら先っちょの祠にいらっしゃい。待ってるからね。」
「祠?先っちょ??」
「あら時間だわ。じゃ~ね〜。待ってるからねぇ〜。」
そう言われて間もなくアオイは目が覚めた。
「夢、、、なのかな。」
フィンの家で雑魚寝をしていたアオイは、早目に起きてしまったので、二人を起こさないようにそおっと外へ出る。
「先っちょ、あっちの細い所かな。」
早朝、誰も起きていない村の先っちょに歩いていく。
「本当にあるのかな?」
アオイがのんびりと歩いて進むと、本当に祠があった。立て札には「女神様の涙」と書かれていた。
「本当にあったあ、、、女神様会いに来てくれたんだ。」
アオイは、祠の前で手を合わせる。すると祠の中にある御神体が光を帯びた。
「ん?え?何?ヤバイ?大丈夫??」
誰もいない村の先っちょでアオイは光に包まれていく。頭の中でピコンピコンピコン、、、と何度も何かのスイッチが押されたような音がした。
「え?え?何?何??」
するとドラムロールが流れてシンバルが鳴る。
目の前でくす玉が割れて「祝 ご褒美全部あげた記念 by女神」と書かれた垂れ幕が現れる。
「ご褒美、全部、、、あげた記念。」
光が強くなりアオイは目を閉じた。
再び目を開けた時には、静かな祠が先っちょにあるだけだった。
アオイは辺りを見回すが、くす玉も垂れ幕もない。
「夢の続きかな、、、と、とりあえず戻ろう。」
アオイはフィンの家に戻ると、そおっと毛布に包まり眠りについた。
「おーい、アオイ。朝よ。起きて。ご飯食べよ。」
「おはよう、フィン。」
アオイは伸びをして起きた。辺りを見回すが特に変わった所も無かったし、フィンもいつも通りだった。
「ふぁあ。やっぱり夢だったんだなぁ。」
アオイはメベドを起こしてフィンが作ってくれた朝食をいただいた。
メベドとフィンに夢で見た事を話す。
「へえ。不思議な夢ね。でもここは女神様と縁のある場所と言われてるし、メガミノオトシモノなら何か共鳴?みたいな事があるのかもね。」
「聞いたことは無いが、そんな事もあるのかもな。まぁ、見た目もそうだが何も変わったように思えんしな。魔法でも使えるんなら話しは別だがな。ガハハハ。」
「だよねぇ。もういっぱいご褒美は貰ってるし、これ以上貰うのは申し訳ないよね。」
3人で食事を終え、アオイとメベドは里へと帰る。
フィンには、リカバリーが出来れば知らせてくれと伝えて別れた。フィンからはマリーナにと素材と調薬のレシピを預かった。里への良いお土産ができた。
「まさか、牢屋に入るなんてねぇ。楽しかったね。」
「ガハハハ。牢屋でも楽しめるとは、アオイも十分変な奴だ。」
里へはのんびりと散策しながら帰っていく。
農作業をしている人がギョッと驚いたり、家畜が震えたりと余り良い影響は無さそうだったので、後半は早足で森へと帰っていった。
里に帰り、フィンを無事に送り届けた事や王国の牢屋、村の先っちょにある女神の祠、夢の話しなど土産話しに花を咲かせた。マリーナは、フィンから貰った調薬を早速試し、モブとコリンは集落の話に興味津々だった。
「メベド、お前牢屋に入るぐらいなら人化すれば良かったじゃないか?」
「ん?フィンの奴が問題ないみたいな顔してやがったからな。まさか捕まるなんてな。ガハハハ。」
「それも一興と思えば良いか。ハハハハ。」
「ねぇ、オズワルドさん。何の話し?」
「ああ、今メベドにな人化しておけば、牢屋なんぞに入らなくて良かったんじゃないかと言ってたんだ。でも、それも一つの経験だなと話しててな。」
「じんか?」
「そう、人に化ける魔法の事だ。パグロームベアのような上位種は、そんな魔法が使えるんだよ。」
「そんな事出来たの!?メベド、出来るの?」
「ん?言って無かったか?出来るぞ。しかし、力が弱まるからな好きじゃ無いんだ。」
「そうなんだ。ちなみに、今出来たりするの?何か準備とかいるの?」
「要らんぞ。見るか?」
「良いの!見せて!」
メベドは「アラギ」と唱えると白い煙が立ち込め、みるみる熊から人へと変わっていく。全身を覆っていた毛皮はなくなり皮膚となり、筋骨隆々な大人の男に変化した。
「うわっ!凄っ!人間じゃんっ!」
「だろ?」
その様子を見ていたモブは鼻で笑っていた。
「そんな3メートルもある人間なんていないけどな。デカすぎだよ、メベドは。」
「そう言われるとそうかも。僕も見た事ないな。」
「まあ王国なら獣人も多いと聞く、そこであれば紛れるのでは無いか?」
「レイス共か。まあそうだろうな。ウルフなどは小せえが、ベアやリノなんかは体格だけなら遜色ないかも知れんな。」
「それじゃあ、冒険行けるんじゃない!?」
アオイはキラキラと目を輝かせてメベドを見ているた。
「冒険?迷宮か、、、しかしこの姿だと弱いからなぁ。」
「いやいや、メベド。人化してもお前は十分化け物だから、気にする必要は無いだろうに。」
「うーん、、、そうか?」
メベドは二の腕に力こぶを作りながら満更でも無さそうな顔をしている。
「アオイ、行くか?迷宮。」
「本当に!行く!行きたい!」
「良しっ!そうしよう!冒険だ。」
アオイは喜びを爆発させてモブやコリンと踊っていた。しかしモブとコリンは少し寂しそうである。
その夜、モブとコリンは眠れずにいた。
「モブ、アオイまた行っちゃうね。」
「おう、そうだな。」
「アオイは、どんどん知らない世界に行くのかな?」
「さあな、、、」
「僕たちは、ずっと里にいるのかな、、、」
「だろうな、、、」
「メベド凄いね。人に化けれるなんて。」
「まぁ魔物だし。上位種だしな。」
「うん、、、」
「何だよ、コリン。行きてえのかよ。」
「モブは、行きたくないの?」
「、、、」
「ねえ?行きたくないの?」
「、、、行きてーよ。」
「え?何て?」
「行きてーよ!うっせえな。もう寝るぞ!」
そんな会話を部屋の外で聞いてる人がいる。
二人の母であり勤勉で逞しく優しいマリーナだった。




