ヴィンディードッグ
アオイは、ゴブリンの里での暮らしにも慣れてきた。
モブやコリン以外とも仲良くなり、里の中で作物を育てる手伝いをしてみたり、洗濯をしてみたり、ご飯を作ってみたりと日本では出来なかった生活を楽しんでいた。
メベドも門の修理や補修など力仕事を中心に馴染んでいった。
「アオイ、あいつらに名を付けには行かないのか?」
「ん?、、、あっ!!忘れてた!!っていうか全然会いに行ってなかった!!」
そう、ヴィンディードッグ達のボスとなってからあっという間に一週間が経っていた。
アオイはメベドの背に跨って、森の奥へと走っていった。
「メベド、まだ遠いの?」
「いや、前と変わらないならこの辺りの筈だぞ。」
そこは岩がゴロゴロとして滝壺がある少し開けた場所だった。
「うわあ、、、綺麗なとこだね。」
「ああ、ここは泉から流れ出た水があるからな。他に比べても住みやすい場所だ。」
「本当にいい場所だね。ところで、何処にいるんだろう。」
辺りをキョロキョロとしていると、滝の上からウオーーンという鳴き声と共に6頭のヴィンディードッグが飛んできた。スタッとアオイ達の前に座ると尻尾をブンブン振って喜んでいた。
「か、か、可愛いぃねえ。」
ウォンウォン
「待ってましただとよ。」
「ごめんよー。今日はね。キミ達に名前を付けに来たんだよ。」
ウォン!!
「嬉しいってよ。」
「えへへへ。喜んでくれて僕も嬉しいよ。」
「えーと、、これで全員だよね。」
ウォン!
「そうだとよ。」
ヴィンディードッグは、茶色の毛並みで頭の上は少しだけ伸びてモヒカンのような特徴を持っている。背中には黒い斑模様があって、尾は真っ黒である。個体差が出るのは顔の模様。片目の方だけ黒かったり、鼻の周りだけ黒かったりと似ている個体もあるが、少しずつ違っていた。
「うーん。やっぱり顔の模様が分かりやすいね。」
ウォン!
「じゃあ、僕達の言葉が分かるキミは、おでこに黒い模様があるからデコだね。」
ウォン!!デコはお辞儀をして、次のヴィンディードッグと交替する。アオイの前には1列に並ぶヴィンディードッグが待っていた。
「キミは、ハナ!」ウォン
「キミは、マウス」ウォン
「キミは、ミギ!」ウォン
「キミは、左だから、、ダリっ!」ウォン
最後のヴィンディードッグは尻尾を振って待っている。
「キミで最後だね。ん?キミは尻尾が黒くないんだ。どうしようかな、、、そうだ!キミは、テイル!」ウォン
デコ、ハナ、マウス、ミギ、ダリ、テイルの6頭は満足そうにアオイの周りをぐるぐると回って喜んでいた。
ウォン!デコがアオイに話しかける。
「何?どうしたの?」
ウォンウォン!
「ほー、、、繁殖しても良いか?ってよ。」
「え?繁殖?しても良いよ。でもなんで?」
ウォンウォン!
「ヴィンディードッグは、ボスの許しがなけりゃ新しい家族は持てないんだ。」
「えっ!そうだったの。それもメベドみたいな掟?」
「まあ、そうだな。掟だな。で、どうすんだ?良いのか?駄目なのか?」
「も、勿論良いよ!子供が産まれたら教えてね!キミ達が良かったらまた名前を付けさせて欲しいし。」
ウォンウォーーン!
「ありがとう、是非頼むってよ。」
「えへへへ。」
デコ達はそわそわとしていた。
「あれ?どうしたの?」
「いや、アオイ、、、俺達邪魔なんだよ。」
「えっ!?なんで?嫌われた??」
メベドはため息をつく。
「はあ、、、俺達魔物は、交尾を見られるのが嫌なんだよ。」
「交尾、、、あっ!そうか!ごめん!恥ずかしいよね!」
メベドは深いため息をつく。
「はあーーー、、、違うぞ。恥ずかしいからではない。無防備になるからだ。そんな姿をボスに見られたくないんだよ。」
「そ、そうか!まあ邪魔な事には変わり無いもんね。じゃあ、デコ。僕達もう行くね!またね!」
ウォンウォンウォーン!
「いつでも来いってよ。」
アオイ達は名付けを終えて里へと帰っていった。
ヴィンディードッグの繁殖力は凄く、1回の出産で4〜6頭程を産む。名付けられたヴィンディードッグ達は、偶然にも雌雄一対になっており、それぞれ番いとなって繁殖活動に勤しんでいく。また、交尾から出産までは2ヶ月と短く成長も早い。成犬になるのは出生後半年程であった。
ただ交尾は年に一度だけと決まっていたのと、新たに家族を増やす場合は必ずボスの許しを得ていたので無限に繁殖するような事は無かった。
この森の中には複数のヴィンディードッグの群れがあり、それぞれに縄張りを持っているが争うような事はなく親戚のような関係性があった。
アオイがボスとなり初めての繁殖。ウォンウォンと皆張り切っていた。
里へと戻る途中、ベネトが寄り道を希望した。
「全然良いよ。どこ行くの?」
「アオイにピッタリのモノがあったと思ってな。」
ベネトは、泉の反対側へと進んでいく。
「こっちは初めてくるね。」
「そうだな。ゴブリン達も近寄らないからな。」
「なんで?」
「俺達パグロームベアが住んでるからさ。」
「うわあ。嫌だわあ〜。」
「ガハハハ。アオイなら、どいつが来ても余裕だぞ。」
「えへへへ。」
ベネトは、アオイの従者になる前に寝床にしていた洞窟へと入っていく。
「なんか、色々置いてあるね。」
「まあな。俺は珍しいモノを集めるのが好きなんだ。あの日も何か無いかと探してたのさ。」
「モブとコリンの秘密基地みたいだね。」
「まあ、そうだが。あいつらよりも、俺の方が良いモノ集めてるけどな。」
「そんな所で張り合うんだ。あははは。変なの。」
メベドはガサガサと宝を物色する。
「ここに、、、あった、、、筈。」
ガサガサゴソゴソ。
「ねえ。これ、綺麗だねえ。」
「ん?気に入ったなら持っていけば良い。」
「ほんと!くれるの?ありがとう!!」
「ああ。構わんさ、、、っと。あった。これだ。」
メベドが見つけたのは、ナックルガードと呼ばれる籠手だった。
「ほれ。」
「ありがと。えーと、これなに?」
「腕にはめるんだ。ぐっと。」
アオイは言われた通りにはめてみる。しかし、ぶかぶかでゆるゆるだった。
「、、、そうか。アオイは子供だった、、、忘れてた。」
「あははは。もう忘れないでよね。でも、マリーナさんなら合わせてくれるかも。」
「そうだな。よし、帰るか。」
「うん。帰ろっ。」
アオイ達はぶかぶかの籠手と綺麗なモノを里へと持ち帰っていった。




