パグロームベアのメベド
ゴブリンの里へと向かう道中。深い森の中に木漏れ日を浴びてすやすやと眠る一行がいる。
「う、うーーん。」
一行の中でコリンが最初に目覚める。心地良い昼寝を終えてスッキリとした面持ちであった。
両腕を伸ばして大きく背伸びをして、隣で眠る二人を見る。モブもアオイもふかふかの毛皮に包まれて気持ち良く眠っていた。
「ふかふかだなあ〜。」
コリンは毛皮に顔を埋め、幸せそうな顔を浮かべた。
「ふかふかあ。」
「ふかふか?」
バッと何かに気付いて後退り。ゆっくりと見回すと、、、
「わああああーーー!!」
コリンは大声をあげた。そして、眠っていた二人とパグロームベアが起きる。
「あわわわわわ。」
コリンは小刻みに震えている。
「何だよ、コリン。うるさいなあ。」
「ううう、、後ろ」
震えるコリンの指先。モブがゆっくりと後ろを振り返ると寝起きのパグロームベアと目が合った。
「うわっ!!」
モブも飛び起きて後退り。
「何?どうしたの?二人共?」
アオイはゆっくりと目を開けて、二人を見た後にふかふかの毛皮に再び顔を埋める。
「ふかふかだなあ。」
「アアア、アオイ、、、そ、それ、、、パグローム、、、」
「ん?何??ふかふかだよ。」
「起きたか小僧。」
アオイを見つめるパグロームベアは、野太い声で話しかけた。
「うん。おはよう。よく眠れたよ。疲れてたのかな。」
「そうだろうな。俺もぐっすりと眠れたわ。」
「お腹、大丈夫?」
「ああ、何とかな。ガハハハ。」
「そっか。良かったよ。」
穏やかに会話を続けるアオイとパグロームベアをモブとコリンは「あわわわ」と小刻みに震えて見ていた。
「ゴブリンの二人よ。そう怖がるな。何もしない。」
パグロームベアは二人にも話しかけた。
二人は震えるのは止められないものの、何とか頷いた。
その様子を見たパグロームベアは座り直した。
「ゴブリンの二人、そして小僧。すまなかった。」
大きな身体を窮屈そうに曲げて頭を下げていた。
モブとコリンは、そんな姿を見れるなんて思ってもなく驚いたが、それと同時に凶暴なパグロームベアにそんな一面もあったのかと感心していた。
「熊さん、謝ってくれて僕は嬉しいよ。」
アオイはふかふかの毛皮を小さな手で撫でている。
「小僧、俺の名はメベドという。熊さんはやめてくれないかな。」
「そっか。メベドだね。えへへへ。僕はアオイ。よろしくね。」
「アオイ。確かにそう呼ばれておったな。ゴブリンの二人よ、良ければお前達の名も教えてくれないか?」
「お、おう、、、俺はモブ。」
「ぼ、僕はコリンだよ。」
「そうか、モブとコリンか。それにアオイ、、、3人共、ありがとう。お前達のお蔭で俺は生きている。感謝している。」
メベドは、3人が居たことで他の魔物が近づかないようにしてくれていた事に感謝を伝える。そして、3人も感謝の意味を理解していた。
「じゃ、じゃあ、行くか。アオイ。」
ゴブリンの里へと再び歩みを進めようとモブが声をかける。アオイもコリンも呼応し、立ち上がる。
3人が歩き始めると、ドシドシと大きな足音も続いた。
「ねえモブ、、、」
「何だよ、コリン。」
二人は小声で話し始める。
「モブ、、、ドシドシってあれついてきてるよね?」
「、、、お、おう。」
「どうするの?」
「、、、お、おお?ど、とうしようか、、、」
ドシドシ。
「ねけメベド、君も一緒に行くの??」
アオイは振り返ってメベドに問いかけた。
「当たり前だ。俺もついて行くぞ。」
「なんで?家に帰らないの?」
「俺達パグロームベアには、掟があるのだ。それを守らねばならない。」
「掟?どんな?」
「敗者は勝者に付き従うのだ。俺はアオイに敗れた。だから俺の居場所はアオイの側になった。それが掟だ。」
「ええ〜。別に気にしないで良いよ。メベドにも家族いるんでしょ?」
「家族は居らぬ。それに掟は絶対だ。気にしなくて良いなどと軽いものでは無いのだ。守らねば、死ぬしかない。」
「ええ!厳しいっ!怖っ!」
「厳しいからこそ、俺達パグロームベアは常勝だけを目的に生きているのだ。」
「うーーん。そうかあ。じゃあ仕方ないね。」
「仕方ないんかーーーい!!」
アオイとメベドの会話に聞き耳を立てていたモブが叫んだ。
「いやいやいや、仕方なくなくなくない!?今から行くのは、俺達ゴブリンの里だぞ!そこに、メガミノオトシモノと、パグロームベアって!仕方ないで済まなくない!?」
モブの隣では、コリンがブンブンと何度も頷いていた。
「モブ、コリン。お前達は勘違いしている。俺が付き従うのはアオイだ。アオイが居る場所が俺の居場所。そこが偶々お前達の里だろうが、そこが地獄だろうが俺は離れない。」
「うんうん、、、いや何が勘違い何だよ!結局里に来てんじゃん!!」
「いや、お前達の里に興味は無い。」
「うんうん、、、いや興味とかそんな話ししてなくない!?」
「まあまあ、モブ落ち着いてよ。」
「はあ!?アオイ、何が落ち着いてだよ!このままじゃ、俺達の里は大パニックなんだけど!!」
「ええ〜。そうなの〜。」
「アオイ、お前はメガミノオトシモノだったのだな。」
「え?ああ、何かそうみたい。女神様がここに連れてきてくれたみたい。」
「ガハハハ。そうかそうか。俺は強運なのかも知れんな。厄災と呼ばれるメガミノオトシモノと出会い、共にする事が許されたのだから。ガハハハ。」
「厄災って酷いよ〜。もう。えへへへ。」
メベドとアオイは、楽しそうに笑っている。
「いやいやいや!ガハハハじゃねえーし!何か良い感じに解決しました、じゃねえーーしっ!!!」
モブはパグロームベアもお構い無しにブチキレていた。コリンの頷きもどんどん大きくなっていた。
「ええー。じゃあどうしようかな、、、」
「アオイ、俺は何処にでもついて行くぞ。」
「うーーん、、、どうしよっかな。行くとこ無いし。」
不安な顔を浮かべるアオイ。それを見ていたモブは思案する。言い過ぎたのか?自然な感じで里に入るか?いやそれは大混乱になる、、、里には連れていけない。でもアオイは心配だ、、、。
「モブ、一旦あそこに避難は?」
「ん?どこだよコリン。」
「ほら、僕らの秘密基地だよ。」
「おお!そうか!それなら大丈夫だな!」
モブとコリンには、秘密基地がある。里の近くで、大人達に邪魔されない自分たちだけの秘密基地。そこには、おやつを隠していたり、森で見つけた珍しい形をした石ころや魔物の折れたツノなど宝物を隠していた。
「とりあえず、二人は俺達の秘密基地で待っててくれないか?その間に何とか母ちゃんに説明して分かって貰うようにしてくるからさ。」
「僕も、二人が里に入れるように話しをするからさ。」
アオイとメベドは二人の提案を受け入れて、秘密基地へと向かった。そこは森の中にある洞窟。入り口は生い茂る雑草の中にあり外からは全く見えなかった。メベドには少し手狭な感が否めないが、隠れるには丁度良い空間であった。
「ここにあるおやつは好きに食べてていいからな。でも、そっちの宝には触るなよ!集めるの大変だったんだからな。絶対壊すなよ!」
「それじゃあ、アオイ、メベド。僕達は里に行くからね。準備出来たら呼びにくるから、それまでは隠れててね。里の人に見つかっちゃったら大変なんだからね。」
モブとコリンに釘を刺された二人は、仕方無しと洞窟内で大人しく待つことにした。
アオイはそんな状況でも楽しそうにしている。子供にとっての秘密基地は特別なもの。特に病院しか居場所の無かったアオイにとっては薄暗い洞窟であってもキラキラと光って見えていた。




