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ここに俺がいても良いんですか?  作者: ぱぱのです
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青年はアオイ

魔王がハコニワを支配して20年。とある場所のとある泉での出来事。



泉に落ちた青年は、ほとりの茂みで喧嘩する者達を見つけるとこのまま放置は出来ないとゲンコツによって制止しようと試みる。

しかし、加減が分からぬ青年は強く叩いてしまったのではと、おろおろと謝っていた。


「本当にごめんなさい。大丈夫??大丈夫??ごめんなさい」


平謝りする青年に呆れ顔の二人。


なぜなら、里の大人達からメガミノオトシモノには近付くな、あれは災いだと口うるさく言われ続けてきたからだ。

ただ、彼等は初めて目にしたメガミノオトシモノである目の前の青年と、大人達が言う「災い」が同じモノを指しているとは思えなかった。

どう見ても気弱な人間にしか見えなかった。


「い、いや、大丈夫だから。」

「うん、、もう良いよ。」

二人は、少し拍子抜けしたような表情で青年に接した。


「本当に!?ああ、、、良かったよお。」

青年は、二人が許してくれた事にほっと胸をなでおろした。

「えーと、改めまして僕はアオイといいます!日本から来ました!宜しくお願いします!」


突然の自己紹介に二人は再びキョトンとする。

その様子にアオイは慌てふためいている。


「あれ?え?駄目だったかな、、、えーと、、アオイです。おや、アオイと申します!、、、かな。」


二人は流石に放置出来ずに自己紹介をした。

馬鹿のモブとヘタレのコリンと罵りあっていた二人は、泉の近くに住むゴブリン一族の者達だった。


「モブくんとコリンくん。名前を教えてくれてありがとう!よろしくね。」


アオイは名乗ってくれた事に喜んでいた。二人との距離も縮まったものと考え浮かれていた。

20歳といえば、もう少し大人びた雰囲気があっても良いものだが、アオイは幼少期から亡くなるまでの間、学校に行くこともなく家族と病院関係者以外との付き合いがなく精神年齢と実年齢に開きが出ていた。


「う、うん。まあ、、、よろしく。」


そう答えるモブの脇腹をコリンがつつく。

モブは小声でコリンに「なんだよ?」と耳打ちする。コリンもかすれるような小声でモブに耳打ちをする。

「何で、仲良くなってんの!ダメだよ!」

「じゃあ、どうするんだよ!戦うのかよ!?」



コソコソと話すモブとコリンをアオイはにこやかに見ていた。アオイは新しい場所での出会いに浮かれていて、これから二人ともっと仲良くなりたい、そうする為には何をすれば良いのかと思案していた為、二人が話しをしている様子や内容は気にもとめていなかった。


「ねえねえ。モブくん、コリンくん。君たちと友達になりたいんだけど、ダメかなあ?」


アオイは、二人が耳打ちしあっている隙間に強引に割って入ってきた。二人は「うわあ!」とのけ反ってしまう。


「ご、ごめん!驚かせるつもりは無いんだ。ごめん。」


モブは、アオイのほんわかとした様子や、すぐに謝る性格を見ていて決心をした。


「、、、い、いや。うん、、、こっちこそ驚き過ぎた。ごめん。アオイは、悪くないよ。」

「ちょっとモブ!何言ってるんだよ!」

「コリン、ちゃんと見ろよ。こいつ、何も考えてねえよ。」

「、、、」

「コリン、こいつが災いに見えるのかよ?」

「、、、確かにそうだけど。」

「ほら、お前もちゃんと言えよ。」


「う、うん。アオイ、謝らなくて良いよ。気にしないで。」


二人は短時間ではあるがアオイの無邪気な様子を目の当たりにして、大人達の話しよりも自分たちの目で見て感じた事を信じる事にした。


「モブくん、コリンくん!ありがとう!!」

アオイは二人の言葉が嬉しくて、喜びはしゃいで抱きついた。二人は困惑することも、呆れる事もなく子供みたいなアオイに身を任せた。

ギュッギュッとアオイは二人に抱きつく。

ギュッギュッ。ギュッギュッ。

ギュッギュッ。ギュッギュッ。


「いや、長いわ!恥ずかしい!」モブがアオイの腕を払う。

「えへへへ。つい嬉しくて。ごめんねモブくん。」


「くんは無くて良いよ。何かムズムズする。コリンもそうだろ?」

「うん。コリンで良いよ。」


「そっか!分かったよ!モブとコリンだね!うん!そうするね!」


「とりあえずさ、アオイはメガミノオトシモノだろ?」

「え?何?落とし物?」

「アオイは、女神様の所から来たんでしょ?」

「あー、そうそう。すっごい美人の人でね、その女神様のお蔭でここに来れたんだ!」


アオイは、ここに来た経緯を説明した。日本で病弱だった事で色んな人に助けられ支えられてきた事。いつか恩返しがしたいと思っていたが、結局何も返す事が出来ずに死んでしまった。でも、こうやって新しい場所に来て生まれて初めて自力で立って歩いた事や、泳いだ事を嬉しそうに話した。そして、モブとコリンという友達が出来たとはしゃいでいた。


「いや、アオイの事情は分かったけど俺達と友達って、、、」

「え!?ち、違うの。」

アオイは、急に悲しそうな表情を浮かべた。


「ちょっとモブ!酷いよ!アオイは友達だよ!」

「え!?何だよお前!さっきまでそんな事言って無かったじゃないか!」

「何言ってるんだ!誰が何と言おうとアオイは僕達の友達だよ!モブ、謝って!」

「なっ、、なんだよコリン。」


コリンは、アオイの日本での境遇に共感しそして、ここに来た喜びに理解を示した。

「ほら!モブ!謝ってよ!」


アオイは、コリンが自分の為に怒ってくれているのが申し訳なくも嬉しかった。

「コリン、もう良いよ。大丈夫。コリンがそう言ってくれただけで十分だよ。ありがとう」

「アオイ、、、そんな事。」


コリンとアオイに挟まれたモブは、気まずい空気に居た堪れない。「ゔゔゔ、、、、」


「ご、ごめーーーん!アオイ!俺が間違ってた!アオイは友達だ!!」


変な空気を変えようとモブは腹の底から大声を出したのだった。急に耳元で大声を上げるモブにコリンは再び叱っていた。アオイは二人が掛けてくれた言葉がとても嬉しく、モブとコリンを見て楽しそうに笑っている。


ここは、魔王の影響を受けていないハコニワ。

そこで出会ったメガミノオトシモノのアオイと、ゴブリンのモブとコリン。新たな物語が動き出す。

よろしくお願いします!

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