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ここに俺がいても良いんですか?  作者: ぱぱのです
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20年

魔王がハコニワ全土を支配して20年が経っていた。


支配の影響を受けていないとある場所。そこに一人の青年が着水する。



その青年は、日本で生まれ育ったが幼い頃より病に伏しており満足に歩く事さえ出来なかった。

それは、少年から青年へと年月が経過しても尚、病院のベッドから一人で降りる事すら出来なかった。スマホで読むマンガや、動画サイトで冒険譚を漁る日々を送っていた。

いつしか、青年の口癖は「いつか、僕が皆を助けたい。皆の支えになりたい。」と話すようになっていた。

しかしそんな青年の思いは現世で叶う事は無かった。

20歳になったばかりの冬、連日の厳しい寒さが嘘のようによく晴れた日。青年は、家族に見守られて天寿を全うした。

色々な人に支えられ、助けられて生きてきた生涯に青年は笑顔で「ありがとう」と感謝を伝え旅立っていった。

傍らで涙を流す両親は、青年の耳元で「お前は、私達の自慢の息子だ。どんなに辛くても弱音を吐かず、俺達を気遣い続けた優しい子。そんな強いお前は、俺達の誇りだよ。ありがとう。」「そうよ。貴方がいたから私達は親になれたのよ。本当にありがとうね。もし私達の願いが叶うなら、来世は誰よりも健やかな人生を送ってほしい。そして、貴方がしたかった全てを叶えてほしい。私達はいつまでも応援しているからね。」




青年は優しい空間の中にいた。


「父さん、、母さん、、、。」


青年はそう呟くと、呟いた事に驚いて目を開けた。

「え!?あれ??何で??」


目を覚ました青年がいたのは、心地良い風が吹き抜ける丘の上だった。水色の入院着がはたはたとたなびいていた。


「??どこ??天国、、、なのかな?」


「おめでとうございまーす!」

青年の目の前に、神々しい光が舞い降りた。


「え?あ、ありがとうございます。」

「いえいえー。お気になさらずうー。」


神々しい光の中に美しい女が微笑みながら立っている。


「あのう、、、ここは天国ですよね。だから、、、その、、貴女は天使でしょうか?」


「えー。私が天使?やだっもう照れちゃう」

「あ、あ、違いましたか。すいません。ファンタジーばかり見ていたもので。」

「やだあ、良いのよお。でも私は天使じゃなくて、メ・ガ・ミ・よーー。うふふ。」


美しい女神は青年の前でくるりと回りおどけて見せた。


「ええ!め、女神様!!それも凄いですよ!だからそんなにもお綺麗なんですね!」

青年は目を輝かせて、おどける女神を見つめていた。


「もう、凄い褒めるうぅ。キミには、沢山ご褒美があるからね!期待しちゃってね!」

「え?ご褒美ですか、、、でも天国に来れたので、もうそんなには。」

「まあまあ、ほら立って。」


青年は女神の手を取り、立ち上がる。弱々しかった筈の足は力強く立つ事が出来ていた。それに、身体が軽くなっている事にも気が付いた。


「うわあ!これが、ご褒美ですね!!凄い!」

青年は入院着をひらひらとさせながら、その場でジャンプをしたり屈伸をしたり、逆立ちしてみせた。生まれて初めて自分の思う通りに自由に身体を動かせたのだった。


「うふふ。可愛いわねえ。でもね、それだけじゃないのよう。こんなの、まだまだ序の口なんだからね!」

「え?まだあるんですか!?」


「うふふ。そうよ。でもそれは、ここじゃプレゼント出来ないのよね。」

女神はいじわるく、ウィンクをして青年を見ている。


「、、、女神様、もしかしてそれは、、、」

「なになにいー。気付いちゃったあ??」


「はい、、、いや、、まさか、、、」


「もう、はっきり言っちゃいなさい!ほらほら!」

「は、はいっ!て、て、転生では?」


女神はその言葉を聞くと、再びくるりと回る。


「だーい、せーい、かーーーーい!」


女神がそう言うと、辺りの景色が光に包まれる。


次に青年が気が付くのは、水の中だった。


バシャンっと着水した青年は、大慌てで水面へと浮上する。呼吸を整えるよりも先に、泳げる喜びが青年の心を満たしていた。


「凄い!水だ!泳げる!」


泉の中を楽しそうに泳ぐ青年を遠巻きに見ている者達がいた。その者達は茂みに隠れ青年の様子を見ていた。

「なあ、あれ、、、メガミノオトシモノだよな、、、」

「う、うん。そうだよね。だって落ちてきたし、、、」

「やっぱり、そうだよな。どうする?」

「え?何?どうするって?」

「何だよ!だから、話しかけるかどうかだよ!」

「ええ!だめだよ!やめようよ!絶対だめだよ!!」

「チェッ。コリンは臆病だな!」

「ち、違うよ!モブが無鉄砲なんだよ!お父さん達も、近付いたら駄目だって言ってたじゃないか!」

「何だよ無鉄砲って、、、知らない言葉使うなよ!臆病コリン!」

「な、、、!僕は臆病じゃない!それに知らないのはモブが馬鹿だからだ!馬鹿モブ!モブ馬鹿!」

「な、何だとお!言ったな、ヘタレコリン!」

「へ、ヘタレ!?こ、このおーー」


二人は茂みの中で取っ組み合いの喧嘩を始めた。


「ねえ、喧嘩はだめだよ。仲良くしなきゃだよ。」


「うるせぇ!黙って見てろ!」

「そうだ!この馬鹿モブが悪いんだ!」

「また馬鹿って言ったな!ヘタレ!弱虫!」

「モブこそ!また言った!」


二人は取っ組み合いの喧嘩をやめようとせず続けた。


「うーーん。こういう時は、、、えいっ!」


ポコポコっと二人の頭を小突いた。


「痛え!」

「あいたたた、、、」


小突かれた二人は、声のする方へと顔を向けた。


「!!」「!!」


「もう、喧嘩はだめだよ!両成敗っ!なんちゃって、、、ははは。」


そこには、泉で泳いでいた青年が立っていた。二人は、メガミノオトシモノに関わってしまった事に驚き、そして恐怖していた。


青年は、震える二人を不安そうに見ている。

「ご、ごめん。もしかして凄く痛かった??僕、まだ身体に慣れてなくて、、、もしそうなら、本当にごめんなさい。」


青年は、二人に頭を下げて謝った。そして、小突いた頭をさすっていた。

二人は、里の者達から聞いていたメガミノオトシモノと目の前で謝りながら頭を撫でる青年が余りにも違い過ぎて恐怖を通り越して唖然としていた。


「ほ、本当にごめんなさい!ごめんなさーーい!」

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