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ここに俺がいても良いんですか?  作者: ぱぱのです
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震撼

朝露が倒木に落ちる。静かな一日が始まる。しかし、全てが終わった訳でも、夢だった訳でもない。

ドベルクとミザは、自分たちの家の前に座り込み一夜を明かした。傍らにはサキチとサヨが眠っていた。

周囲にもドワーフの者達が数人残って座っていた。


バタン。扉が開く。

「んーーーー」


青白い龍を纏う裸のヨウヘイが背伸びをしながら、出てきた。


「ん?おはよう。そこにおったんか。入ったらええのに。」

ヨウヘイは、座り込んでいたドベルクに話しかける。


「、、、、カタリーさんは、、、無事なんでしょうか」

ドベルクは振り絞るように声をだした。


「無事?そりゃもう、無事に決まってるやん。はははは。冗談きついで。下ネタか?ん?はははは。」


そう聞くとミザは、自宅へと駆けていった。

「お、おお。何やねんミザも慌ただしい奴やで。はははは。」ヨウヘイは欲を満たしご満悦の様子だった。


自宅の中には何とも言えない匂いと、熱気が籠もっていた。その中に力なく横たわる全裸のカタリーがいた。

ミザは、カタリーを抱き起こすと強く強く抱き締めた。

「すまんねえ、、、すまんねえ、、、」

ミザは、カタリーの耳元で何度も何度もそう呟いていた。


外では、ヨウヘイがドベルクに皆を集めるよう指示をしていた。ドベルクは従い、サキチと共に手分けしてこの場にいない者達を集めていく。


「ヨ、ヨウヘイさん、、、あとは中にいるミザ達だけです。」


「そうか、まああの二人には後で説明すりゃええやろ、、ほな始めよか。」


村人達を村長の家の前に集めたヨウヘイは、じっくりと見回していた。


「結構おんねんな。よし、ほなこれから大切な話しをするから、しっかり聞けよ。ええか。」


ヨウヘイは、ドワーフ達にこれからの事を話し始める。

淡々と語られる言葉にドワーフ達はただ頷き聞いていた。


「まず、ここの村長夫婦のドベルクとミザは俺の父と母とするから。ほんで、サキチとサヨは俺の子供やな。あとカタリーは、俺の嫁な。ここまではええか?分かるか?、、、、分かったなら、返事せえよ。」


そう言われ、ドワーフ達は口々に「はい」「うん」などと答える。


「よし、次からは言われる前にちゃんと返事せえ。ほな続けるで。」


ヨウヘイは、味方であるドワーフ達の中でも家族として扱う5人は特別であると伝えた。そして、まだ特別な存在を作るという。

「サキチ、この中で一番強い奴は誰や?」

サキチは、そう言われ辺りを見回すが答えに困っていた。その様子を見ていた一人のドワーフの男が前へと歩いて出てくる。


「ん?何や、お前が一番なんか?」

そのドワーフは真っ直ぐヨウヘイを見つめ頷いた。

「そうかあ。名前は?」

「ブランド、、です。」

「ブランドな、、。よし、こっちこい。」


ヨウヘイはブランドを呼び寄せ、自分の前に立たせる。


「ほんまやな、小さけど筋肉隆々やな。確かに強そうや。」

「、、、」

「ブランド、手のひらを出して見せてくれるか。」

ブランドは言われるがままに、手のひらをヨウヘイへ差し出す。ヨウヘイは、その手のひらに人差し指を付けた。


「何かな、昨日祝福やった後にな、こんなん出来るんちゃうかなっ閃いたんやわ。」

ヨウヘイはそう言うと、人差し指から青白い光をブランドの手のひらに落とした。ポタっと光が落ちた瞬間に、ブランドの全身は青白い光に包まれる。

「ぐわあぁぁあーーー」

ブランドの叫ぶ声が静寂を切り裂くように響いた。


ゆっくりと光が弱まり収まっていくと、ブランドの姿が皆の前に現れる。その様子に周囲の者達は驚きどよめいた。

「ぐ、、、ぐ、、、ぐ、、、」


ブランドは、全身に漲る力を感じていた。

「どや?ブランド。」


ブランドの筋肉はより屈強となり、全身の血管が浮き上がっている。血走った眼球は先程までと様相が一変した。


「さ、さ、最高の気分です、、ヨウヘイ様。」

「ははははは!そやろ!最高やろ!ははははは。」


ドベルクは眼前の出来事に理解が出来なかった。それはドベルクだけではない。その場の全員が理解に苦しむ光景であった。


「うーん。ヨウヘイ様かあ、、何か嫌やなあ。違う呼び方にしよか、、、、何がええか、、、」

ヨウヘイは腕組みをし思案している。その最中だった。村人の一人が恐ろしい光景を前にし無意識に言葉を発していた。


「魔王、、、」


ヨウヘイは、その声を聞くとその声の方へと向きぽんと手を叩く。

「それやな。魔王や。うん。ええやん。俺は今日から魔王や。お前等、そう呼べ。ええか?」


「、、、、」

「おい、返事せんかいっ!」

「はっ!魔王様!!」

「ははははは!そうや、俺はハコニワの魔王や!お前等の王様や!ははははは!!」


ここにハコニワの魔王が誕生する。図らずも魔王の家族となった5人は困惑しつつも、受け入れるしか無かった。

気を失ったカタリーも、側で泣くミザもそれを受け入れるしか生きる術は無かったのだった。


「サキチ、サヨ、お前等もこっちこい。順番や。」

「は、はい。魔王様。」

「ちゃうちゃう。お前等は、俺を父と呼ばんかい。」

サキチとサヨにも実の父母がいる。その父母は、ここに集まりその光景を目の当たりにしていた。しかし、止める事は出来なかった。そうすれば、自分たちだけではなく大切な我が子達が殺されるかも知れないと考えていたからだ。


「は、はい。お父様。」

「そや、ええぞ。お前達、カタリーはお母様と呼ぶんやぞ。」


二人は、手のひらを魔王に差し出して儀式を受ける。

青白い光が二人を包み、消失した後に現れた姿はブランドと同様に凄まじい力を得た新たなドワーフであった。

「お父様、、、これは最高です!」

「本当だわ、、何かしらこの高揚感!」

二人は、先程までとは打って変わって恍惚の表情を浮かべ魔王である父に敬意を現していた。




メガミノオトシモノとしてハコニワにやってきた人間は、女神の祝福を受け無慈悲な力を手にすると魔王としてハコニワに君臨し生きていく。

魔王は、ただ我武者羅にハコニワで生きた。自身の欲望のまま家族だけは大切に生きていった。

魔王はカタリーの間に3人の子をもうけ、ドワーフの女達の間にも10人の子をもうけた。

ハコニワに於いて異種族間の勾配は珍しいもので、更に子をもつ事などは稀な事であった。


そして「魔王の祝福」は、魔王が特別扱いをする家族を中心に与えられていた。しかし、カタリーだけは女神の祝福を受けていた事により、変化を感じる事は無かった。原理などが解明されている訳では無かったが、他にも女神の祝福を受けたものは魔王から力を得る事は出来なかった。


魔王は、その強大な力と、家族や配下に分け与えた祝福により、瞬く間にハコニワ全土を震撼させた。

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