やることが…やることが多い…!
とわ子は実家住みである。実家には父と母と弟と猫の、4人と1匹で住んでいる。
父は九州出身で、兄弟姉妹がたくさんいるらしく、正確な人数をとわ子は知らない。知らなくても問題ないし、父方の叔父叔母とは、あまりあった事が無いので、まあいいかという認識だった。
土地的には母方の親せきが近所に多くいる場所で、とわ子の母は社交的で、なんだかんだ近所付き合いが上手い。母は4姉妹の上から3番目なので、叔母しかいない。母の一つ上の姉は生まれた時に二人目で女だし、親戚に子供をやろうとおじいちゃんとおばあちゃんが決め、割と裕福な家に貰われていったが、親戚付き合いがあり、お金持ちの家が羨ましい、親戚の子だと思ってたら姉妹だった。それを知った今でも4姉妹はとても仲が良い。
さて、父の姉である「雪ちゃん」は昔結婚していたが、いろいろあって離婚して、もう一人の姉「セツ子」と姉セツ子の子供「あっちゃん」と同居していたが、セツ子が病気になり、暫く入院する事になったのだが、雪ちゃんとあっちゃんは仲が悪いらしく、セツ子がその間の緩衝材になっていたので、そのセツ子が居なくなれば、家庭環境が悪化し、叔母の雪ちゃんは少しおボケになられていて、居心地が悪く、わが家を頼って、入院の期間、10日ほど泊まらせてほしいとやってきた。父は見栄っ張りな人なので、二つ返事でOKしたが、父は捨てるべき荷物が、なかなか捨てられない人で、大慌てで色々片付け、どうにか一人泊まれるように部屋を開けた。
そんな訳で、期間限定で5人と1匹家族になった。
そんな、ある日、母が風邪を引いた。この間、とわ子が風邪をひいたので、どうせそれがうつったのだろうくらいに高を括っていたが、一応面倒でも病院に行って検査しなければならない。ゴロナだと、えらいこっちゃなのである。
母は町内会の副会長だったりで、あっちゃこっちゃ色々している忙しい人だが、マスクはしているし、まあ大丈夫だろう、大丈夫だよね?大丈夫であってくれ…。そんな願いもむなしく。
果たして、検査の結果、なんと…ゴロナ!!!何やってんだよ母ぁーーー!!
おかげで、とわ子は濃厚接触者という事で、5日間の仕事を自宅待機でお休みです。基本給が決まってる会社なら、やったー!って所ですが、現在のとわ子のお仕事は時間給なので、休むと痛い。すごく給料が減るので困る。しかし休まない訳にはいかない。泣く泣く、とわ子は、お休みです。
叔母の雪ちゃんと父は、大分濃厚に接触してたんで、もういろいろ手遅れ感が否めない。とわ子は割と離れていたので、今のところ大丈夫そうだ…。
そして、そんなゴロナ騒動と共に、キッチンの天井に取り付けているライトが付かなくなってしまった。リモコンでスイッチをオンにしても、うんともすんとも言わない。別の部屋のライトを同じリモコンで動かすことが出来たので、どうやらキッチンの天井のライト本体がイカれたようだ。母はそれを見て、きっと雪ちゃんが何かしたんだとこっそり私に言ってきた。が、いくら何でも、何でもかんでも雪ちゃんのせいにするのは宜しくない、きっと本体が壊れるタイミングだったんだろう。
しかしキッチンのライトが付かないのは不便だし、万が一とわ子がゴロナ発症してしまったらオワリなので、慌ててライトと5日分の食材を買いだめに行くことになった。
出来るだけ人と距離を取り、当然ガチマスクで、死ぬほど消毒をして、ついでに、ソシャゲに新たに投入されたお散歩システムのビン立てが実装され、自分の家で1本ビンを立て、出来るだけ遠い場所に二本目のビンを立てればポイントが貰えるシステムで、キャラクターも可愛いし、今回遠くまでライトを買いに行かないとなので、丁度いいし、それもしたい。
まずは自転車で一番遠いホームセンターワトソンに行き、ライトを見る。まあまあ安いのがあるので、それを買いたかったが、「ワンワン」という現金チャージカードを持って居て、それを使いたいが微妙に中の金額が足りない。ホームセンターワトソンでカードは使えるがチャージは出来ない。
ううんと、とわ子は暫く悩み、ワンワンポイント欲しいし…、仕方ない…。チャージが出来るビオンまで行くかと、ホームセンターワトソンからビオンに移動した。もしかしたらビオンにも丁度いい安いライトがあるかもしれないし。自転車で走る事5分ほどでビオンに着いた。
あ!!!ビン立て!!!!!
そう、すっかり忘れていたがホームセンターワトソンでビンを立てれば、家から、まあまあの距離があったので、かなり散歩ポイントを稼げたのだ、なんで忘れてたんだ!とわ子の馬鹿馬鹿!
気を取り直して、ビオンでワンワンカードをチャージして、ライトを見たが丁度いいのは無かった。ワンワンカードをチャージできたし、もう一度ホームセンターワトソンに行って、そこでビン立てとライトを買おう!完璧な計画!
今度こそワンワンカードを使い、ライトを買って、ついでにうどんの材料を買い、自転車に乗せ、ヒイヒイ言いつつ、ようやく、家まで着いた。
おわかりいただけただろうか?
ビン立てを忘れていたのである…。
3回もビン立てをするチャンスがあったのに全部忘れていたのである。怖い。自分が怖い。
とわ子はちょっと涙目になりつつ、キッチンの点かなくなったライトを取り外し、新しいライトを取り付けた。ふう、大変だったけどこれでヨシ!新しく買ったライトはリモコンではなく引っ張るタイプで、少し小さくて前より暗いけど、全然点かないよりは良い。よし、これで明かりが付くだろうと紐を引っ張る。カチャカチャカチャ…。何度紐を引っ張っても、うんともすんともいわない。ええ、しょ、初期不良?!
そんな馬鹿な……。
その時、北斗の拳のキュピーン!という音と共に、とわ子の脳に電撃が走ったようになり、ひらめいたのだ。部屋のライトの電源をオンオフ出来るスイッチが、扉の裏にある事を、思い出したのです…。
普段は扉の影にあるし、家の人間はみんなリモコンを使ってライトを点けるので、すっかりその存在を忘れ居たのだが、そうだ…。雪ちゃんはちょっとだけボケてるので、リモコンが使えないのだ。多分一人で居る時にキッチンのライトを消そうとして、困った挙句、扉の裏のスイッチを見つけ、消してくれていたのだろう。それを言い当てていた母は、名探偵でした…。
誰も悪くない、悪くないんだ…。新しいライトはちょっと小さいので隣の部屋だと丁度いい規模だし、隣の部屋のライトが古いし…、それと交換しよう…。元の壊れてないライトは大きいので、元の場所に戻そう…。
弟に手伝ってもらい、取り付けた新しいライトを外し、隣の部屋に付け替え、もともとついてたキッチンのライトを、元に戻し、ライトが点く事を確認した。
ミッションコンプリート!!
ふう…ひと段落だ、そう思ったのも束の間、二階の自部屋で脱力しながら、くつろいでると、弟が切羽詰まった様子でやってきた。
「ねえちゃん…ちょっと」
その不穏な様子から、嫌な予感がしながら1階に降りると、猫がトイレでは無い所でワンサカやかしていたのである。山のような、うん…が…。
「も~どういう事よ~」と、とわ子はぶつくさ言いながらそれを片付けた。弟はそういうのが触れない質なので仕方ないのだ。やれる奴がやるしかないのだ。
腹が減ってきたところで、家族の晩御飯を作り、洗濯をして、洗い物は雪ちゃんがやってくれるというのでお任せして、とわ子の長い一日は終わった。
そして、気が付いた。
ビ ン 2 本 目 立 て て ね え !!!!