青い服の男
青い服の男が死んでいた。
6階の窓の開いている部屋から落ちたものと思われた。肥満気味の男だった。
その部屋にはしっかり鍵がかけられてあった。いやそればかりか、何年も使われていないかのごとく、鍵は錆びつき、ドアも開けるのがやっとであり、一度開ければ閉めることさえできなかった。これまでに開けられた形跡もなかった。
部屋の中には古びた机に、大きな板と汚れた風呂敷が転がっていた。窓には男の服の切れ端が引っかかっており、指紋こそ検出されなかったが、この部屋に男がいたことは確かであった。男はなぜか冬でもないのに指が出ない形の手袋をしており、ふだんも手袋をしていたものと思われた。
机は以前からこの部屋に置かれたものではあったが、板がどこから運ばれたのか不明であった。ドアを開けたのでなければ窓からということになるが、とても窓から入るような大きさではなかった。それよりも何よりも、男自体がどうやってこの部屋に侵入したのか、それ自体が謎であった。
部屋には鍵は落ちてはいなかった。男も鍵を持ってはいなかった。男のポケットの中には懐中電灯やらビスケットやら、それこそ何に使うのかまったく不明な品物がたくさんあったが、鍵はまったくなかった。どういうわけか、大量のどら焼きが見つかったが、この男の肥満の原因がこれにあるのではと思われた。
死体の検証から驚くべき事実が判明した。男は転落死ではなかった!
転落する以前に死亡していることが確認された。驚くべき力が急激に首にかけられた結果による死亡であった。あたかも首つり自殺の最中に誰かがぶら下がったごとくの力の加わりようだったが、首には紐の跡はまったくなかった。そして何を意味するのか不明だが、首がねじられたような痕跡も見られた。
「これは何ですかね?」
現場を見回った若い刑事が、男の死体のすぐそばに何かを発見した。
「これは竹とんぼの壊れた奴じゃないかな?変なコレクションを持っている奴なんだな。おまけに、チャラチャラしたネックレスをつけているし」
触るとチリンと鈴の音がした。
P.S.
全国の良い子のみなさん、ごめんなさい。
完
パソコン通信NIFTYの「推理小説フォーラム」内で企画された、「1000字以内のお題話」に投稿した作品です。
お題は「飛ぶ」






