烏天狗と贄の花

齢十六の少女、雪(ゆき)の生まれた村には“花送り”と称される伝統ある儀式があった。それは、村の向かいに位置する高山に住み着くあやかし・烏天狗へ花嫁を送る……所謂生贄の儀式である。
夫となる烏天狗一族の頭首である飛燕(ひえん)は、美丈夫で視野も広く、仲間からの信頼も熱い男であった。しかし、身勝手で人外な存在である“烏天狗”という存在に雪は警戒心を露わにし心を開けずにいる。そんな雪に対し、あろう事か飛燕は「妻になってくれ」と言ったのだった─────。