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4.1週目はイージー、2週目はハード

ブックマークありがとうございます!

とても嬉しいです。

それはもう、ゲームとして間違ってるんじゃないかと思うレベルのチートさだった。


メインヒロインのマリーアンジュは平民なのに精霊より溢れんばかりの加護を受けた少女、というどこかで聞いたような設定・・・


ではなくて。

フルネームはマリーアンジュ・ディア・フランズベルト。

名前に王国の名前がつく。すなわち、この国の王女である。

上に王太子である兄が1人いて、彼女は第2王位継承権をもつ。

王女なのだからあたりまえだけどこの国では最上位の、そしてすべての精霊の加護を受けているのだ。

ゲームでは見えたけど今は見えるわけではないステータスを表示してみるならば、普通の貴族のステータスは火50、水5、風30、土10とかなのに対して、彼女は火80、水80、風80、土80とかなのだ。


平民のステータスがおおよそ一桁であり、それでも生活に困ることはないようなレベルといえば、そのステータスがどんだけ凄まじいかは想像に難くない。

もちろん容姿も優れていて、甘いはちみつのように蕩けそうな金の髪に、最上級のトパーズのようなキラキラ輝く金の瞳、愛らしいぷるぷるした唇という絶世の美少女。背は高くもなく低くもなく、女性らしい豊かな胸とくびれた腰。すべての女性が理想とするような均整の取れた体つきを持ち主で、そのお姿を身近で見ることがある貴族界隈では女神の化身だと言われている。

家柄、財力、容姿と申し分なく、前世では勉強にあたる学術や魔術も溢れる加護のおかげで何の苦労もない。剣だって扱えるのだ。マジでチート王女。


攻略対象の男性陣からも、当然最初から崇拝され、憧れられている存在。

貴族間の知り合いなので、攻略対象の4人とは元々面識があり、その内2人はいわゆる幼馴染と言ってもいい間柄だ。

最初から好感度も高く、学院に入学して全員と知り合った後はただただストーリーを進めていくだけでどんどんイベントが起き、どんどん好感度が上がり、そしてあっという間にエレメンタル・プリンセスになったのだ。だってもともとプリンセスだし。


正直、今までやってきた乙女ゲーの中では断トツでぬるかった。

一応パラメーター上げはあるけど、もともとのパラメーターが全部MAXに近いので、それこそ3年間何にもしなくても問題ないレベル。

イベントの選択肢もほとんどなく、ボタンをクリックするだけでゲームが終わったといっても過言ではなかった。


それもそのはず、言ってしまえばマリーアンジュ編はあくまでも前哨戦であった。


つむっていた目を開いてゆっくり起き上がり、ベッドに腰掛ける。

白くて細い手足、子供のものだ。浮かぶ記憶も、この世界のは子供のころのものだけだ。

シャルリア・フロンターレ伯爵令嬢。それが今の私だ。


シャルリアという名を忘れるはずがない。自分で付けたのだ。

ゲームプレイを始めてすぐに名前を付けたのに、なぜヒロインの名前がデフォルトのマリーアンジュのままなんだろう?と不思議に思っていたのだが・・・。

理亜という本名を、なんとなく世界観に合うようにと細工したシャルリアという名前。

・・・て、適当につけたからなあ。もうちょっと、こう、なんかお嬢様っぽい名前にすればよかった。


いや、それよりも重要なことがある。

シャルリアはメインヒロインではない。そして、悪役令嬢でもない。

メインヒロインの数多い友人、いや、取り巻き?の内の1人で、その中でも断トツで関係としては遠い。王女様のご学友として学院内だからこそ辛うじて認められているレベル。

マリーアンジュ編のチュートリアルとして、学院の知識をまるで持たない伯爵令嬢に履修の仕方、つまりはパラメーターの上げ方を教えてあげるシーンがあるのだが、そこで教わるのが私だった。


それ以外に私・・・シャルリアがメインルートで出てきたのは確か・・・と頭をひねって考える。

シャルリアが初めて経験する剣術に戸惑った挙句、すっぽ抜けた剣がマリーアンジュに飛んでいき、それを弾き飛ばして彼女をかばう火の攻略対象。

あるいは、うまく発動しない魔術に苦心した挙句、間違えてマリーアンジュの腕に火傷を作ってしまい、癒しの魔法を彼女にかける水の攻略対象。

風の攻略対象がマリーアンジュのために作成した美しい髪飾りを、うっかり預かった挙句失くしてしまい、非難されるシャルリアをかばう優しい彼女。

なぜか土の攻略対象と共に難しい課題に取り組んでいたシャルリアのところに颯爽と現れて助言をし、その聡明さで喝采を浴びるマリーアンジュ。


・・・プレイしてた時にもちょっと思ったけど、シャルリアの扱いひどすぎない?

美しく優しく女神のようなマリーアンジュ様の、完全な引き立て役なんだけど。


だけど同時に、なぜか第2の主人公でもあるのだ。

メインルートでベストエンディングを迎えた後は、この引き立て役であったはずの友人を主人公として選び、再び2週目としてプレイを開始できる。


2週目から違うキャラでプレイできるというのは、ゲーム的にさほど珍しい設定ではないと思う。

ただ、メインルートがめちゃくちゃ簡単だったのに対して、この2週目からはめちゃくちゃ難しくなっているのだ。

当たり前だ、立場は1週目と何も変わってない。特に秀でた部分は何もない、ごく普通の伯爵令嬢だ。万能な王女でもなく、攻略対象は知り合いでもない。

パラメーターは上がりにくいし下がりやすいし、分岐も選択肢も多くてどこで間違うかわからない。

そして超絶チートなライバルである、完全無欠のマリーアンジュ王女様。

つまり、いわゆるハードモード。


これが転生なのだとしたら、私の2度目の人生はハードモードが確定してしまっているのだった。

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