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妖と歩いた道  作者: かぶきれじぇんど
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第四話

――――7限目が終わり、帰りのホームルームが終わった後、帰宅の準備をする。周りの生徒は、放課後から部活動があるため、慌ただしく荷物をまとめて教室から出て行く。

 俺は部活をやっていないため、のんびりと教科書類を鞄に詰めながら何気なく隣を見る。そこには、机の上に置いたままの白石の教材があった。

 結局、あの後白石は保健室から帰ってこなかった。あれだけ具合が悪そうだったため、保健室のベッドで寝てることしか出来なかったのだろう。

 帰りはどうするのだろうか等、他愛もないことに思考を割いていたら、いつのまにか教室に一人取り残されていた。下校ラッシュの時間帯に帰るのは苦手なため、いつも帰る際は、わざとらしくのんびりして帰るのが日課になってしまった。

 カバンを持ち、帰路に着こうと椅子から立ち上がった瞬間、教室のドアが開き、青白い顔の白石が教室に入ってきた。保健室に行った時と違い、幾分か体調がよくなったように見える。


「まだ帰ってなかったんだ」


「白石さんもずっと保健室に居たんですか?」


「悟でいいよ。神乃君。タメだし。敬語もなんか気持ち悪いからタメ口で話そうよ」


 朝の時とは違い、活気が戻ったためか白石改め悟が流暢に話す。具合が悪い時の反応とは違いすぎて若干面食らってしまう。


「じゃあ、俺も葵でいいよ。神乃は二人いるし」


「そうだった。妹さんも居るから、下の名前で呼ばないと区別がつかないね。それじゃあ、僕は葵君って呼ばせてもらうね」


 そう言って悟は薄く微笑む。身長は俺より5㎝程高く、180㎝丁度くらいだろうか。恵まれた身長だが、線の細さと顔色の悪さからどうしても病弱そうな印象を受ける。


(妹が居るって言ったっけ?)


 俺の後ろの席には妹である神乃緋色の机がある。ただ、緋色は入学式から高校に来ておらず、俺の後ろの席はずっと空席のままだった。もちろん、俺自身も人と話すのが苦手なため、緋色が妹だと言うことは誰にも言っていない。知っているのは、担任の先生ぐらいのものだろうか。


「朝はごめん。どうしても人が多いところに居るとどうにも具合が悪くなってね。でも、今は葵君のおかげでだいぶ調子がいいよ。それに、放課後で人も居ないから余計な声も聞こえないしね」


「俺のおかげって?なにもしてないけど……」


 俺のおかげで具合が良くなったとは言うが、俺は悟が転倒しないように見守りながら保健室まで案内したことくらいしかしていない。


「うん。いや、まあ、それはそうなんだけど……。言葉にするのは難しいね」


 悟は困ったように笑いながら机の上に出しっぱなしにしていた教材を綺麗に整頓しながら鞄に詰めていく。


「そういえば、葵君は普段生活してて、余計な者まで見えてしまう人なんでしょ?」


「っ!!」


 瞬間、悟が何気なく放った一言により息をのむ。


「……どういう意味?」


「そんな怖い顔しなくていいよ。事情はだいたい想像できるし。まあ、僕も葵君と似たような人種だから仲良くしたいっていうだけ」


 鞄に教材を詰めていきながら、まるで世間話でも話すような気軽さで悟が言う。


「悟もあいつらが見えるのか?」


 今まで幽霊や妖怪といったこの世ならざる者が見える人間には、家族以外で出くわしたことがない。俺は、半信半疑になりながらも悟に問う。


「うーん。まあ、ぼくの場合はちょっと違うけどね。ぼくは余計なものや声が人より見えすぎるってだけ。葵くんや緋色さんとはちょっと違うかな?」


 悟の話は抽象的な言い回しが多く、いまいち的を得ない。


「まあ、とにかくぼくが言いたい事は葵くんと友達になりたいっていうことだけだよ」


 正直、今まで友達なんて出来た事がなかったため、悟の申し出に動揺する。


「ダメかな?」


 悟は悟で俺の気持ちなんてお構いなしのように屈託なく笑って自然に手を差し伸べてくる。


「い、いや。全然大丈夫だけど……」


「そっか。それじゃあよかった。じゃあ、これからよろしく」


 俺がしどろもどろになりながら差し出した手を、なんの躊躇もなく悟が掴み握手が成立する。


(友達ってこんな簡単に出来るものだっけ)


「友達なんて作ろうと思えばすぐ出来るものだよ。じゃあ、兄さんが迎えに来てるからぼくは帰るね。明日もよろしく」


「あ、ああ」


 そう言って悟は教室から出て行き、またもや教室に俺1人だけとなる。


(友達……か)


 今まで友達なんて出来た事もなかったため、友達が出来たという実感があまり湧かない。もやもやする気持ちを押し殺し、悟の後を追うようにして学校を出る。

 
















 


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