実験的短編1ー杉山立也ー
「いぇぇぇぇェェェェェェえええええエエエエHHHHHいッッ!!」
やあこんにちは、突然だけど俺は杉山立也。転職活動中のニートさ。
いま俺は某絶叫系芸人を見ながら何とも言えない興奮の坩堝にいる。何故、俺は興奮しているのか、そんなのわからん、でも何故か、興奮するんだ。そんな自分にきたねえ笑顔が滲み出る。
…そして、俺は…魔が差したんだろうね、気付いたら絶叫していた。
「いいいいいぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええいっ!!」
それは、ニートな自分への不安を打ち消すためか、はたまた感極まっての絶叫なのかは分からない、しかし俺は叫んでいた。そして訪れる静寂、そんな俺に訪れる賢者タイム、からの自室の中で赤面している俺がいた。
外では時間が目まぐるしく流れ、俺の部屋では時は止まっている、なんて哲学っぽいことを思うけどそんなことなかったことを考えていた。そして、都合よく思う、
(なにか面白いこと起こらないかなー。)
起こるわけもない、わかってるさ、わかってるんだけどなー。
「!!!!!」
ふと部屋の隅を見る、キノコが生えてる。感動している俺がいた。
「やあ、こんにちは。」
と、慈愛に満ちた目でキノコに話しかける。そして、何を思ったのかキノコを食べていた。
「………何してはりますのん?」
あまりに危機感のない自分につっこむ。
「?、意外とうまい。」
本当なにしてんだろうか、キノコを口に含む俺がいた。こうしてニート生活の中で少しずつ頭のネジが緩んでいく自分に戦慄を覚えながらも、キノコを探す俺がいた。
「あ、いた。」
見つけてしまった、禁断の果実、
(って、バカかよ。)
禁断の果実とか考えちゃう自分につっこみつつ、キノコを口に含む。
「あ、なんかこれちょっと味違うなー」
まろみがあった。と、ソムリエくさい感想を抱きつつさらにキノコを探す。
(まさか俺の部屋にこんなキノコが生えまくってるとは…)
まさか部屋の中でキノコ狩りができるとは、
「キノコ狩りかー、小学生以来だなー」
小学生時代、キノコ狩りをしていたところ熊に出くわしたことを思い出した。
「あんときは、死を覚悟したっけ」
死を覚悟した次の瞬間、じいちゃんが猟銃で熊ぶっ飛ばしてたっけ。
「あー、なつかしい。」
後日、学校で作文テーマが将来の夢だったとき、俺は躊躇することなくクマハンターにしたったんだっけか。
「残念だったな小学生の俺、なったのはニートだよ、はあ」
クマハンターに成れなかった自分を悔やみつつ、キノコを探す。
「あ、?、なんだこれ?」
なんだこれ?、?、?、キノコ?、みたいだけどキノコではない、それは叩けば治るタイプのテレビの裏に生えていた。
「食べて…、見ない方がいいのかな?、でもなー、うーん」
明らかにやばい形のキノコのようななにかを見ながら、何故か葛藤している自分がいた。
「葛藤、か。あんときも葛藤の連続だったっけ…」
大学時代。就活、論文、部屋に溜まったごみの山から覗く先週食べたえのきから切り離した株、そこから新たなえのきが元気よく復活している様を見ながら食べようか葛藤している自分、のいかれた自分に葛藤する自分、あ、そういえば昨日ゼミだった、大事なことなのに不思議と全然葛藤していない自分に葛藤する自分。
「懐かしいなー、なんだかんだ葛藤があったなー」
と、懐かしみながら、キノコのようななにかを口に含む俺がいた。
「!!!!!!、美味ッ」
おもいのほか旨かった、やっぱ見た目で判断しちゃダメだよね。
「ごめんよ、君を誤解していたよ。」
と、口に含んだキノコのようななにかに謝る。誤解といえば、高校時代、とてもガタイのよい厳ついヤンキーな同級生がとんでもなくうまい萌絵を描いていたことを思い出す。今ではかなり名うてのイラストレーターに成ったと友人から聞いたとき、見た目で判断しちゃいけないということを痛感した。痛感しつつ、俺は全裸になっていた。
「あれ?」
服は?服が消えていた。そんなことよりキノコを探す自分がいた。最早違和感も薄れていた。この時気付くべきだった、部屋に生えたキノコは、食べるべきではないと、病院に行くべきだと。しかし、時すでに遅く、気付けば俺は霞む天井を見ていた。
「………?」
声がでない、何故だ?
「………ァ………ゥ?」
声が、でない。!、声がでないといえば中学時代。ハーレムを期待した俺は吹奏楽部に入部した。そして、女子の恐ろしさをまのわたりにし言葉を失ったっけなー、あんときは、辛かったなー、女の子はフローラルの香りがするとか嘘っぱちだった。そして村八分的な目に遭い、当時の友人ダイナマイト君と一緒に近所の公園でゲームに勤しんだっけ。全く中学時代は踏んだり蹴ったりだった。そんなことを思いつつ、異変に気づく、体が、動かない。
「…………。!!!!!!!」
今さら死の恐怖が己に襲いかかる。
(まじかよまじかよまじかよまじかよ!!!!死にたくねえよ死にたくねえよ死にたくねえよ死にたくねえよ!!!!!!)
体を動かそうとするが全く動かない。
(まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい)
やべえ、やべえよ、どうしよう。エロ本まだ捨ててねえよ、スマホとPCのエロ画像消してねえよ、ああああああお母さんにロリコンだと発覚してしまう!!俺の棺桶にロリコングッズの山が出来てしまう!!!てかやべえよ、全裸で仰向けで死ぬとかどんな末路だよ、死因が部屋に生えたキノコを食べた、だと?嘘だろ、まじかよ、絶対やだよ、せめて病院のベッドとか、せめてなんじゃこりゃあああああとか言ってみたり、せめて美少女を守って死ぬとかあるだろうよおおおお、
(ちっくしょおおおおおおおおおおおおお、動けェェェェェええええええええええッッ!!)
ああ、某ロボットアニメで主人公が叫ぶ感じってこんな感じなんだろうなー。
(ああああああああああああ、いやだああああああああああああ)
やべえ、頭が、まずい、やばい、くそ、くそなんでこんなことになったんだよ。ちくしょう、
(ああああああああああああキノコちくしょおおおおおおおおおおおおおおお)
あああああああああああああああああああああああ、あああああああああああああああああああ
「あ、」
あれ?
「あれ?夢?」
まじかよ、びっくりした。
「はー。まじかよ、びっくりしたー。」
良かった、良かった。
「本当、良かったわ。」
あー、
「とんでもない悪夢だったなー。」
あー、
あー、
あー、
あ?
あ?れ?これも夢か?
見知った天井が見えた、起き上がる、どうやら夢の中と一緒で全裸で寝ていたらしい、
「あーもう、なにしてんだよ俺は、ははははっ」
あーもうなんて悪夢だよ、まさかまた夢じゃなかろうな?なんてな。
「あー、もうこんな時間か、服着て夕飯作らないと」
さて、夕飯はなににすっかなー、一人焼き肉にするかな?それともカレーでも作って見るかな?
「さてと、今日もなんもなかったなー、あーあハロワいかなきゃなー。」
いかなきゃなー、いかなきゃなー、?、あれ?天井?
俺はまた天井を見ていた。
「あれ?おかしいな、まあ、いっか」
起き上がる、献立を考える、歩きだす、?、天井?
(…………?)
?、あれ?、………?、
(!!!!!!!!!!)
頭が痛いッッ!!
「ゥッ………ゥ……アゥ…」
嘘だろ?これも夢だよな、ほらまた天井が見えてさ……、あ、れ?嘘だよな?くっそ頭が痛いッッ!!
「……ゥッ…」
?、??、!!!!!、!!!!!!!!!
「!!!!、!!!!!!!!!、」
!!!、!!!!!!!!!、キ、!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!、!!!!!!!!!!!、!!???、!!!!!!!!!、!!!!!!!!!!!!!!!!、。!!!!!!!!!!!
この時俺はもう考えることも出来なかった。
あーこんなんだったら今さらだけど、あーもう、もうちょい本気だしときゃよかったなー、
「!!!!!!!!!!、!!!!!!!!!!!!!!、!!!!!!!!!!!!!泣、!!!!!!!!!!!!!!!。!!!!!!!!!泣泣、!!!!!!!、!!!!!!!!!!!、!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!。。。。!、!!!、!!!!!、!!!!!!!!!!!、!!!!!!!!!!!!泣」
……はあ、ちくしょう。ちくしょう。
………そんなことを思いつつ俺の視界はブラックアウトした。
A「なんてことがあったんだと。」
B「まじかよ、気を付けよー。」
C「でさ、その人生きてんの?」
A「ああ、あのあと変な叫び声聞いた近所のババアが通報しててさ。警察官が様子見に行ったらしいんだよ。したら、全裸で人が倒れてるとかでもう大騒ぎだったらしいぜ。で、結局助かったらしいよ。」
B「うわあ、むしろ死んでた方がむしろ幸せじゃんか。」
A「それがさ、あのあと例の全裸のやつ?脳がなんかすげー変わったとかで確か何か生物?数学か?だったかのなんかしてる施設にぶちこまれたんだってよ。」
C「うわあ、まさかのキノコ食べて天才になったん?」
A「そんなわけあるかよ、頭がまんま猿並みになっちまって、類人猿の謎解き明かせるんじゃね的な感じで今全裸の生活を見守ってるんだとさ。」
C「…………。」
B「最早やつには幸せなのかどうか分からないな、しかしよかったじゃん結果的にニートになれたわけだし。」
C「うーん、難しいなこれ、羨ましいような羨ましくないような」
A「まあ、そんな感じ何だってさ、世の中広いよなー」
B,C「だなー。」
完