転生の儀式と判明した精神チート
遅くなりました。
どーも、ユズキです。今、異世界の黄泉の(精神)世界に来ています。今から転生するので儀式をすると神様が言いました。ちょっと楽しみですまる。
「で、何で俺達は中央にある大陸? にいるんだ」
「ここに儀式に必要なものがあるから」
「必要なもの……ねぇ。それって、あの噴水と関係あるの?」
俺は視線の先にある噴水に目を向け、言った。すると、目の前の幼女神は目を見開き……
「なんでわかったのっ!!」
と言ってきたので……
「他に何も無いだろ」
と言うと……
「……それもそうね」
とか抜かしやがった。少しイラッときたので頭をグリグリしてやる。
「ちょっと痛い痛いっ!」
「………」
スッキリしたので離す。ずっと、アスタルトが呆れる視線を向けるも無視。幼女神もこっちを恨みがましそうな視線を向けるも無視。
「さっさと、いくぞ」
俺がずんずんと噴水に向かって歩くとそれを慌てて駆け寄って来る幼女神とアスタルト。
そして、そんな茶番をしつつも辿り着いた大きく浅い噴水……
「……で、何すりゃいいんだ」
「噴水の水を飲むの。体の一部をつけてもいいけど」
「へぇ、そんだけ」
「そ、そんだけ」
幼女神が意味ありげな笑みを浮かべるが、俺には検討がついてるので言う。その前にアスタルトから
「そんだけ、じゃないぞ。これは────」
「…これは魔力の塊みたいなもんなんだろ。そんなものすぐに分かる。それにただの魔力じゃないことも……」
俺が言い終わると二人してポカーンとしてるが、いや、普通分かるだろと俺は言いたい。魔力に混ざってキラキラ光ってるのがあるが、多分、神気? とか言うやつだろ。
送るのに必要無いわけ無いし、俺の職業の能力『本』でも見たしな。
曰く、その魂に神気が多少なりとも帯びてないとそれはただの輪廻転生……つまり魂をまっさらにした状態と変わらないと………。
「……あんた最初から知ってたわね」
何か知らんが、幼女神がご乱心だ。沈めなければ……
「俺の能力見れば分かるだろ……とりあえずはじめてくれ」
「………そうね。じゃあ、はじめましょう」
アスタルトは固まったままだが、まあいいか。
「一部……でいいって事は腕を突っ込んでもいいわけだ」
「ええ、そうね。……でも、あまり無茶をす……る……と…?……」
「おお、減ってる、減ってる」
幼女神の忠告を無視し、腕を突っ込むと腕に水が吸収される。まあ、この体は魂で出来ているので吸収は飲んでると同じなのだろう。
「……え、ちょっ、あなたどれだけ飲めるのっ!」
「ん、少なくともこの器分は全部飲み切れると思うぞ」
「「ウソでしょっ(だろっ)!」」
幼女神と正気に戻ったアスタルトが叫ぶ。本によれば、一般的に精神力が強いとされる亜人族も両手ですくった量が限界で神様でも器の半分も飲めないらしい。
それから、約一分が経過した頃には全て飲み干していた。余談だが、儀式中は水を止めているらしい。それから、この儀式はその人の魔力補充も含めての行為らしい。
なんだか、今まで絡まっていた鎖が急に解けたような……そんな開放感だ。
「……全部、飲んだわ」
「そう…だな………」
後ろでは唖然としてる二人がいる。まったく、こっちはいい気分なんだから、今のうちに転生させて欲しい。
「まだ、転生はしないのか?」
「え……ああ、うん。じゃあ、やるわ。じゃなくてぇ!なんなの、今の!神気入りの魔水を全部飲むなんて聞いたこともないわっ!どんな精神力してるの!チートなの!!」
何かまくしたてられた。というか俺ってやっぱり……
「精神チートだったんだなぁ……」
「こほん、とにかく、今からユズキの転生を行うけど……」
「何か問題があるのか?」
俺がそう不安げに聞くと首を振りながら、違うと答える。アスタルトとはすでにお別れを済ましてる。今は彼女の領域にいると思う。
「むしろ、逆よ。特典が多くなるわ。何か要望は?因みに元の姿は無理よ」
「分かってる」
そう、これがあった。あの魔水を多く飲める者はその分多く望める。ただし、元の姿はタブーである。そんなことをすれば、ただ、その人を生き返らせるだけだ。世界の法則に反する。
俺は考え、何点か答えた。
「名前は元のままで、後、同じ世界によろしく頼む。それと、俺の魔法で魔道具が収納されてる、それの所持の許可も……それから、記憶の保持、そして、最後に……俺の体を使って新しい体を造ってくれ」
「……あるの?」
幼女神はメモをしていたが、最後の願いに眉をしかめた。それに頷く俺。
「……分かったわ。そのかわり、12歳の体にしてもらうわ。どんな容姿になるかは、自分次第だから」
「…………分かった」
あまり、期待しないようにしよう。
「後、あなたは神気入り魔水を全部飲んだの。普通の子にはならないわ」
「……だろうな」
自覚はしてる。元々、周りから普通じゃないと言われ続けてきた。問題はない。俺は自分の魔法を使い俺の死体を出し、渡した。
「じゃあ、そろそろ、お別れね」
「そうか?俺にウソや冗談は通じないぞ」
「……そうね、言い直すわ。一旦、お別れね」
「そうだな」
俺は幼女神が出した光に包まれる。次第に大きくなる光……それは、生命の温かさであり、同時に生命の冷たさでもあった。そして、
「いってらっしゃい、あなたの第2の人生に幸と加護あれ」
俺は意識が薄れる中、幼女神がそう言ったのを聞いて、完全に意識を失うのであった。
この後、俺は私になった。
次回はついに!!乞うご期待