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王の誕生

 教室の窓際、左後ろ隅の席にて。俺、佐藤臨はノートにメモを取っていた。


「那須さんは白地に赤いリボン、和田さんは黒字に白い水玉模様っと。これで終わりだな」


 先週行われた衣替えによりクラスの女子全員の下着が透けるようになった。一見、男を誘っているように見えるが、彼女らが誘っているのは俺みたいな根暗ボッチではなくクラスのイケメン達だ。なので俺は大人しく女子の下着を記載し、おかずに使う準備を整えているのだ。

 

(今晩のメインディッシュはクラス1の巨乳を持つ佐山さんの下着着用で挟んでもらおうだな。左右に美乳持ちの委員長とロリ要因の浅木さんを配置して乳首を舐めてもらおう)


 そんな風に今晩の献立を考えていると突然放送が流れた。昼休みとはいえ、この学校で放送が流れるのは珍しい。騒がしかったクラスメイト達も口を閉じ放送に耳を傾けた。


『唐突ですが、君たちは異世界に転移してもらいます。そこで侵略ゲームをしてください。一年が経過した時点で支配地の面積が1番広い方に次の神を務めていただきます」


 異世界?侵略ゲーム?聞きなれない言葉に首を傾けるのは俺だけではないようで、クラスのほぼ全員が疑問を口にしていた。


「なにこの放送?」

「イタズラじゃね?」

「異世界とか非現実過ぎっしょ」

「先生がそのうち止めに入るべ」


 ガヤガヤと騒がしくなった教室内。彼らの言う通り誰かのイタズラだろう。直ぐに駆けつけた先生が放送を中断するはず、そう思っていると教室内が白い光に覆われ始めた。壁や机などは白い光に包まれ見えなくなった。見えるのは空中に浮くクラスメイト達だけだ。咄嗟に驚愕の声を漏らしそうになったが口は音を発しなかった。クラスの連中も同様に口をパクつかせながらも声を出せずにいた。


『煩いので少し黙っていて貰います。先ほど言ったゲームの詳細ですが、君たち30人には個別に《王》としての地位、領土、兵を与えます。それを元に他国を侵略し領地を拡大してください。先ほども言いましたが1年後に1番領地の広い者には次の神を務めていただきます。私が17代目なので、君たちのうち誰かが18代目の神となります』


 どこかから聞こえる声は自らを神と言う。白い空間に声の出ない口、これらが神の仕業と言うならまぁ納得できよう。説明を聞くに異世界で戦争をしろと言われているようなものだ。俺喧嘩すらしたことないぞ。文句や質問をしようにも声が出ないので大人しく神の言葉を聞くことにした。


『君たちが選ばれた理由ですが、あまり意味はありません。強いて言うならば昼休みに全員が教室内に残っていて説明と転移が楽だったからです。ちなみに神になった者には全知全能、未来操作や今回わたしが行った空間転移、発声消音など多彩なことが可能となります。勿論、覗きをしたり時を止めてエロいことをするのも可能です』


 こちらが気になりそうなことを説明しているのだろう。神の言葉は途切れることなく紡がれる。


『当然、あちらの世界で死んでしまったら命を失い、再生することは神の力をもってしても不可能です。一年が経ち、生き残っていたものは地球に帰還でき、その中から最優秀者は神として天界に住んでもらいます。それでは転移しますがあちらの世界については各々自由に調べてください』


 言いたいことを言い終えたのか、神の声は途切れ視界が真っ白に染まった。クラスの連中も見えなくなり、気づくと森の中にいた。

 突然景色が変わり、慌てて辺りを見渡す。おそらくここが異世界なのだろうが、日本で見た森と相違点は少ないように見える。唯一違っている点は、目の前に大量のゴブリンがいることだろう。


 呆気にとられ、現状を把握すべく情報を整理していると目の前に文字が現れた。

 

 ――《王》としての力を与えられ、それを用いて領土を拡大する――


 なんだこの文字は?《王》とは目の前にいるゴブリンから何となく察しはつくが、突然現れた文字が消える気配はない。試しに「消えろ」と念じるとあっさり文字は見えなくなった。どうやら脳内で念じれば特定の文章が現れるようだ。さっきの文字は俺の行うべき目標であろう。他にも何か表示できないかと色々試していると「ステータス」のようなものを発見した。


 サトウ リン  ゴブリンの王

 領土1 クラス内順位29位


 領土とは所有する土地の数か大きさだろう。しかし、クラス内順位29位とはなんだ。30人クラスで29位、領土を争うゲームと言っていたから領土の広さで順列を付けているのだろうが、それならば皆1位タイにするべきだ。どうせ、スタート地点が違うとかだろう。俺は森で集落を築いている程度だが、クラスメイトは1国の王とか大きな領地を持ってスタートしたと考えればこの順位も頷ける。スタートから理不尽、前にいた世界でもそうだったんだよねー。


 時間経過により冷静さを取り戻すと視野が広まってきた。目の前にゴブリンの集団は膝をつき右手を胸に当てている。まるで、主君に忠誠を尽くす剣士のようだ。

 100㎝程度の小柄なゴブリンが100体程度、その視線の先に俺は立っている。200の黄色い眼球に見つめられ背筋が寒くなった。異形の生物がこちらを見つめてる、怖いが、俺はこいつらの王となったのだ。


 正直、異世界と言ってもゲーム感覚で現実味がなかった。寝て起きたら元の世界、なんて心のどこかで考えていた。が、ゴブリンの黄色い目玉に見つめられ、非日常に巻き込まれたのだとやっと自覚できた。


 目の前で跪く多数のゴブリンを見渡す。俺は今、ゴブリンの王になったんだ――。

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