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悪魔、お出かけ準備をする

 魔国にやって来て早数日。

 魔王からのお呼びだしもなく結婚相手に会うことなく穏やかに過ごしている。というか楽しく過ごしている。

 というのも、レニーがとっても優秀なのだ。魔王も言っていたが、侍女としての能力は一流で何も不自由しない。それに、年も近いので話しやすい。

 今は退屈しのぎにレニーから紹介してもらった本を読んでいるのだけど、これがまた面白いのだ。『彼方の世界』という世界を救って英雄になるオズヴェルトという男の話なのだが、ストーリーも登場人物も素敵でどんどん読んでしまう。10巻で完結なのだがもう半分も読んでしまった。


「メルリア様、紅茶をお持ちしましたよ。この紅茶、いつもと少し違う茶葉で淹れてみたんです。きっと美味しいですよ」


「うーん。後で飲むから置いといて」


 うわー。結構しぶといなこの敵。でもこのあと華麗にオズヴェルトが倒してくれるんだろうな。楽しみ。


「クッキーも焼いてみたんです。とっても上手くできて侍女長様のお墨付きまで頂いたんですよ?」


「うーん。後で食べるから置いといてー」


 おーこの展開は予想してなかったな。で、この後はどうなるの。


「メルリア様! さっきから何なんですか!」


「ん?」


 突然大声を出さないで欲しい。生死を分ける戦いに身を投じているのだから。…………オズヴェルトが。


「ん、じゃありません! さっきから私の話聞いていますか?」


「き、聞いてるわよ! うるさいわね」


 いつの間にか机の上がお菓子だらけになってる……。全然レニーの話聞いてなかった。思わずお菓子の山を凝視してしまう。


「はぁ、やっぱり聞いてなかったんですね」


「悪かったわね!」


 本を読んでる途中に話しかける方が悪いと思う。


「本が面白いのは分かりますが、少し外に出てみてはどうでしょうか?」


「そうは言っても行きたいところがないんだけど」


 禁止されてはいないが初日以来部屋の外にほとんど出ていなかったので、どこに何があるのかもあまり把握出来ていない。


「では、この部屋のすぐ近くにある中庭に行ってみるのはどうですか?」


 中庭?


「この間偶然通りかかったのですが、色とりどりの花が咲いていてきれいでしたよ。まだたくさん咲いているはずですよ。それに、あの中庭は限られた人しか入れないのでゆっくりできると思います。私も侍女長様に怒られた時とかにこっそり見に行って癒されたものです。そういえばあの時も――」


「あーもう分かったから! 行けば文句はないのね?」


 確かにずっと部屋にいるのも健康に悪い気がするし、散歩がてら行ってこようかな。


「はい! あ、メルリア様! 中庭なら警備もしっかりしてるので一人で行く許可もおりているのですが、一人で行きますか?」


 令嬢を一人でフラつかせても大丈夫な警備って何だ。普通はそんなことさせないでしょ。

 でも城の中……というか中庭までだけど一人で行けるっていうのは楽しいかも。


「一人で行ってこようかしら」


「ではお出かけ用の服をご用意しますね」


 ちょっとわくわくしてきたかも。レニーにお菓子を用意してもらって、花に囲まれて読書っていう予定にしようかしら。


「あ、そういえば外出時はメルリア様だとばれないようにしなさいって侍女長様に言われてました。まだメルリア様のことは公表されてないのですが、貴族の大部分の者は知っています。中にはメルリア様に害をなそうとする者もいる可能性があるらしいんです」


 まあ、これについては想定済みだったので驚かない。どっちかと言えば今までに会ってきた人の方が特殊なのだ。


「じゃあ、私はどうすればいいの?」


「実は魔国では金髪が珍しいんです。大体は黒や赤、茶色が一般的なのでメルリア様だってすぐにばれてしまうと思います」


 確かに今まで数人の魔国人を見かけているが金髪はいなかった。帽子を被ったら何とかなるだろうか。


「そこで私は思いつきました。髪の色を変えてしまえばいいんです! 私の魔法で!」


「魔法で髪の色を魔法で変える? こっちではそういう風にも使うのね……」


 オルベニアでは魔法はすごく貴重なものだったから、そういう風に使おうとする人はいなかった。さすが魔国。


「はい! メルリア様には茶色が似合いそうなので茶色に変えたいんですけど……変えてもいいですか?」


「私も興味あるし別にかまわないわよ」


「じゃあ、お出かけする直前に変えることにして先に着替えを済ませてしまいましょう!」


 えー後で? 早くどうするのか見てみたかったのにな。

 でも楽しみは後にとっといた方がやる気も出るかも。

ああ、楽しみ!



ちょっとキリが悪くなってしまった。

そろそろあの人が出てきちゃうかも?

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