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悪魔、なんだか疲れる

お久しぶりです。

 決意を新たに魔王に会うべく扉をノックした。


トントントン。


 中からの返事はない。聞こえていないのだろうか? 

 もう一度ノックしてみる。


トントントン。


 だが、返事はない。

 騎士はこの中に魔王がいると言っていた。ということは…………居留守か? 

 呼び出しておいて居留守とは許されるものではない。

 私は拳を固め直し、力一杯ノックする。


ドン! ドン! ドン!


「魔王様ー。いらっしゃらないんですかー」


 返事はない。少し耳をすましてみると何やら人の気配がする。これは本格的に居留守だ。ここまでナメられて黙っているわけにはいかない。

 何か使えそうなものはないかと周囲を見回すと壁にクロスに飾られた2本の剣があった。どこかの伝説の剣のような華美な装飾が施されている。

 今欲しかったのは破壊力抜群のハンマーの類いだったが致し方ない。

 剣に手を掛け、引っ張ると思ったより簡単に壁から外れた。

 私は二本の内一本を手に取り、扉に向かって振りかぶった。悪く思わないで欲しい。


「お、おい! ちょっと待て!」


 扉の向こうから急にした声に私はすんでのところで剣が扉にぶつかるのを抑えた。いきなり声を出さないで欲しい。


「私が悪かったからそんなもの振り回さないでくれ……」


 そんな声がした後、扉がスーっと開いた。中は薄暗く、奥の方に椅子に腰かけた人物がいるのがうっすら見える。他の人物は見当たらない。では、魔王が魔法で開けてくれたのだろうか。というか、私が扉を壊そうとしたのがバレたのも魔法によるものか……ご苦労なことだ。


「さあ、入って。話をしようじゃないか。メルリア嬢」


 無論だ。こちらもそのつもりでここまできているのだ。呼んどいて入れなかったのはそっちだ。

 少し苛ついたが、今のところ扉を破壊しようとしたことを罪に問われていないので黙っていよう。

 忘れかけていたが、未だに私の右手には壁から取った剣が握られている。

 さすがにこれは置いていった方がいいだろう。さりげなく近くの壁に立て掛けて魔王の前に進み出た。

 入ってみて改めてわかったが、ここはアルベル王国の玉座の間と同じくらいの大きさの部屋だ。暗くてよく分からないが、壁や天井にも今通ってきた廊下とは比にならないくらい手の凝った装飾がされているようだ。さすがだ。

 近くに来てみると、よく見えなかった魔王の姿が見えてきた。

 髪、瞳ともに夜の闇のような漆黒。若い時はモテたであろう精悍な顔立ち


「メルリア嬢、先程はすまない。気の強い令嬢だと聞いたらからかいたくなってしまってね」


 なんて迷惑な話だ。これでも真面目に嫁ぎにきているのだけど。


「でも、まさか剣で扉を壊そうとするとは……」


 そういうとクスクスと笑い出してしまった。早く本題に入ってくれないだろうか。

 しばらく笑っていたが、私が不機嫌なのに気づいたのか、一つ咳払いをすると何事もなかったかのように話し始めた。


「メルリア・フライローズ嬢。ようこそ魔国へ。私はセオドア・バミューズ。この国の王だ」


 やっと話が進む。少し安堵しつつ挨拶をする。


「ご存知の通り、メルリア・フライローズと申します。アルベル王国よりこちらの第一王子、エンジ・バミューズ様に嫁ぐ為に参りました」


「ああ。遠い所からよくきてくれた。疲れてはいないか?」


「大丈夫と言ったら嘘になる程度には疲れています」


 ここは長くなると困るのでハッキリ言っておく。


「では、要点だけ伝えておこう。まず、正式に結婚するのは少し先にする予定だ。勘違いしないで欲しいのだが、君に不満があるわけじゃない」


「ではどういった理由なのですか?」


 この結婚は政略結婚なのだからすぐ結婚するのが普通だ。私に不満がないのならどういった理由だろう。


「…………メルリア嬢に魔国のことを知ってもらおうと思ってね。アルベルと魔国には違うところがたくさんあるから面白いと思うぞ!」


 あからさまに間があったし言ってることも嘘くさい。絶対何か隠してる。

 しかし、扉を壊そうとした後だが、あまり問いただすのも私の立場上よろしくない。ここはそういうことにしておこう。


「そうですか。心遣い感謝します」


「ああ。また伝えなければならないことがあれば呼ぶから今日は部屋でゆっくり休んでくれ」


「はい。ありがとうございます」


 礼もそこそこに部屋を出てしまったが、よく考えるともしかして私は魔王……セオドア様に歓迎されていたのだろうか。少し調べれば私が素行の悪い令嬢だということは分かったはずだ。それなのにもかかわらず歓迎というのは何か奇妙だ。

 うーん、怪しい。


「あの、メルリア様。お部屋まで案内致します」


「えっ! ええ、お願いするわ」


 気づかないうちに案内人がきていた。

 考えるのはまた後でにしよう。



結婚相手の方全然出てきませんね(笑)

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