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捕らえる

作者: 童貞(39)

(とらえる)



走れ、走れ。




無我夢中に




わかれた二つのトンネル





急がなきゃ

どちらへ向かおう?



「右だ」「左だ」

「幸せになりたい」

「いっそ楽になりたい」



音は共鳴

耳へと届く




急がなきゃ

急がなきゃ

急がなきゃ




道はまだ暗い

そうだ




明るい方へ






走れ、走れ、走れ




奴等が追ってくる







捕まったらどうなるのか




私は知らない

だけど



逃げなくちゃ

急がなきゃ





ゆっくりと

ねっとりと

奴等のかげは近付いてくる




トンネルはまだまだ続く





急がなきゃ

急がなきゃ

急がなきゃ

急がなきゃ




足が重い

体が鉛のようだ





トンネルはまだまだ続く



気が付くと

トンネルは


外の道より暗くなった。




逃げなくちゃ

急がなくちゃ



気が付くと

トンネルは


隣のトンネルより暗くなった




トンネルは

いつのまにか 少しずつ

小さくなった。





どうしよう

どうしよう



後ろに向けば奴等が。




前へ

前へ

前へ



進め、進め、





トンネルはなにも見えない闇に包まれた


走るのがやっとな大きさになった






怖い恐い怖い恐い怖い恐い

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ




足音と奴等の気配だけが空間に混ざりあう。





やがてトンネルは塞がれた。


真っ暗なトンネルのなか

奴等に私は終わらせられた。




隣のトンネルに行っていれば。


私は終わっていなかったのかと

何度も解放された意識のなかで考えた。







でもそれは間違いだった。

奴等はきっとどこまでも追いかけてきたし



それはまとわりついて離れなかった。





私があのとき

絶望を抱いていたら


最初から暗い方へと向かった

そしてあっという間に奴等に捕まった。





私はあのとき

希望を抱いていたから


明るい方へと向かったんだ。

少しでも幸せになりたくて


それは間違いだった。





幸せになるための道は

私を絶望へと追いやる

そしてなめまわすように

私を捕らえる




その為の道だったのだから。








「もう何も要らないよ。何も必要ない」





“捕らえる側”になった私は

ハッキリとした意識のなかで呟いた。






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