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刀は赤、真名は服従

久々の投稿!何だか戦闘描写悪い気が…



とりあえずどうぞ!

「んだ…これ?刀が浮いてる?」



今、俺の眼前には奇妙な刀が浮いている。そして同時に思考がブラックアウトしそうなほど訳が分からない。だって怪し過ぎだろ!元は父さんが土産とか言って渡してきた何の変哲もない御守りだぞ!?それがいきなり手の中に潜り込んで来て鎖が伸びて腕に痣みたいになったと思ったら、今度は出て来て刀になった?疑わねえ奴はどうかしてる!



『キャアアアア!!』



「っ!この害虫はぁ…黙って考えてんだよ邪魔してんじゃねえ!!」



けどこんな状況じゃ文句も言えねえ!不本意だが刀使うか…鬼だろうが蛇だろうが、死ぬよかマシだ!




そして光矢は宙に浮く刀を左手で握り、白と金の糸で彩られた柄を右手で握った




「女の涙は真珠…無駄にしたてめえにゃ血で払ってもらおうか…」




光矢が刀を構えたと同時に、土蜘蛛は鎌を振りかぶり、光矢を切りつける











「え?」



「消え…た?」



だが土蜘蛛が鎌を振ったと思った時、二人の少女は驚愕する。何故なら先程までいた少年を見失ったのだから。分かったのは金属音が二回、そして何かが空を切る音だけだった



「先ずはその鎌から斬る。その汚ねえ手で女に触れるな」



『ぐ、ぎゃあああああ!!』




そして光矢の声が聞こえ、場所を辿るどみか。だが羽の少女はそんなことなど気にも留めず、土蜘蛛の右手を見ていた。そこには鎌のみが綺麗に斬り落とされ土蜘蛛の緑の鮮血と共に宙を舞い、土蜘蛛は悲鳴をあげて地面に倒れた



どみかはそれによって光矢を見つけた。丁度土蜘蛛の真下だった場所で



「な、一体何をした…土蜘蛛の体は大きさに比例して強度が違う!この大きさなら相当のはず!一体どうやって」



「簡単な話、生き物が複雑な動きを出来るのは『関節』のおかげよ?なかったら君その辺の木の枝と同じだよ?関節は柔らかくないと体は動かない…てことはどんなに堅くてもそこは柔らかいっしょ」



「で、でもどうやって消えたの!?」



「ああ、そう見えた?それ間違い。単にそれはタイミングだよ?一回のまばたき、一瞬の体の緊張、避けられないと考える固定概念、色んな条件はあるけど、俺はそれが生んでくれる隙を見て大きい一歩を踏んだだけ…消えたと思ったのは、多分止まった所がデカ蜘蛛の陰だっただけ…ん?何か体が軽い?てか背中痛くない、何で?」



二人はもう唖然としていた。さっきの動作がとてつもない驚異であるにも関わらず、目の前の少年はさも普通に話しているのだから



考えてほしい、体長約3m程の蜘蛛を前に鎌の関節を正確に見つけ、切り落とせるのか?第一刀を振りながら約1mの一歩など踏み出せるか?これを人間が成せることなどあるのか?



「ま、話すのも考えるのも後!後でじっくり口説きに行くから覚悟しろよ?どみかちゃんと小鳥ちゃん!」



「私は小鳥ではない!」



「カッカすんな!可愛い顔にシワは増やしてほしくない」




そして光矢は羽の少女へ軽口を言った後、左手の鞘に入った刀を肩に担ぎ、土蜘蛛の正面へ歩み寄った



「え?待って、傷が…」



そしてどみかは気付く。真っ白だったシャツを赤く染めていた大きな傷口から血が流れていないことに



「起きろ害虫、てめえの罪状はまだ完済されてねえぞ?」



『うごおおお!そのかたななに!?おれのげんきどんどんきえてる!それにやられてからきえてる!』



「知るかそんなもん。俺だって初めて握る得物で使いづれえんだよ……ま、分かったことはてめえにとってこの刀は相当堪えるらしいなぁ、え?」



すると光矢は土蜘蛛の発言の後、悪戯を思いついたガキのような顔を浮かばせた




光矢は静かに刀の鯉口を眼前に運び




ゆっくりと刀を抜き、刀身を表へ晒し




赤い一閃と共に刀を振り抜き、鞘を地面に落とした




ここで言っておくと、赤い一閃とは血ではない。『刀身自体が赤い』のだ。鍔は銀に輝き、鞘は白と金の華やかな模様であるはずの刀は、刀身が赤いだけでそれらの全ての美の概念を叩き割り、見る者全てに畏怖を感じさせる圧倒的存在感を帯びていた




そして光矢が刀を握ると、己の心臓の鼓動が響き、気持ちを高ぶらせた




「ああ…やべえ、この刀抜いたら疼いちまう。『ガキの頃から感じてきた戦いの高揚感!』俺を全て肯定するような刀…すげえよ、たまんねえ!」



『キオオオオ!きえろにんげんーー!!』



そして抜き身の刀を見て光矢は目を輝かせ、回りに集中せず興奮していると、土蜘蛛が今度は左手の鎌で彼を襲う



「何だその薄鈍攻撃?」




だが光矢は鎌を前方に駆け抜けることで回避すると、鎌が地面を割った衝撃を利用して更に加速し、懐に入る





すると光矢は右手の刀の刃を走りながら外側に返し、攻撃する備えを作る



「今日の的はでけぇんだ、大振りで行くぜ!」



『キャアオオオ!!』




「っ!」



その時、土蜘蛛の体が突然光矢のいる真下へ落ちる




「あ…あああ!」



「まずい!人間があんな一撃を受けたら」




「うっ!」



「だ、ダメだよ動いちゃ!あの子の鎌にかなりやられてるでしょ!?」



羽の少女は状況を判断して動こうとしたが、土蜘蛛の傷が酷く、動けなかった



『ぎ!おおおぉぉ』



「「っ!?」」



その時、光矢へプレスをかけた土蜘蛛が、突然苦しみ出した




『や、やめろ!がおああああ!い、いたい!』



そして土蜘蛛の下から聞こえる肉を裂く音、更に地面に流れる緑の血がその凄惨さを物語っている



「おらあああああ!!」




その瞬間、土蜘蛛の背中の肉が裂け、血が舞い散る中から、赤い刀身を持つ刀を握る光矢が飛び出してきた



「臭っせ!これ血って言うよりドブの臭いだぞこれ…あぁ最悪」



「む…無茶苦茶だ…」



「あの子、ホントに人間?」



一方、着地した光矢は体中緑になって文句を垂れ、元々非常識であるはずの二人の少女は彼の余りの非常識さに唖然となった



『も、もうくうのやめる…かえる、うちにかえる!』



「あ?こいつ腹貫通されてんのにまだ息してんのかよ」



だが土蜘蛛は血を流しながら満身創痍の中起き上がる



『キャオアアアア!!』




すると土蜘蛛は口から白い塊を二つ光矢に向け吐きだす



「嫌な予感!」




光矢はこれに対し、バックステップで一つをかわし、もう一つは横に回転して紙一重に避ける




そして塊は地面に落ちると、粘着質のある音が耳に不快感を与える



「あ?これって蜘蛛の糸か?」



「触っちゃだめだよ!その糸はこの世界の生き物を絡め取るための糸だから、今度こそ絶対に取れないよ!」



「はいぃぃ!?あの害虫鬱陶しいもん使いやがって…てあら?」



『お、おぼえてろにんげん!つぎはぜったいほねまでくいつくしてやる!』




だが光矢が土蜘蛛に再び視線を向けると、悪役の捨て台詞のような言葉を残して逃げていった



「ああ!逃げやがった!って待てよ、このまま追わねえとあれか?倍返しのパターンじゃねえの?早く行かねえと!」



「ま、待って君!あの子を追うのは無理!これ以上はかえって危ないから!」



すると光矢は土蜘蛛を追おうとしたがどみかに止められる



「う!ん~~…畜生め」



そして光矢は肩の力を抜き、刀を仕舞うために落とした柄を拾いに行き、無事に手元に納めた



「ふぅ…良かっ…た…ってあれ?」




「って君!」




だが光矢は刀を納めた瞬間、足元がふらつき倒れそうになったが、どみかは間一髪で支える



「あっ…と、ゴメンよぉどみかちゃん。力抜けちゃった…」



ここでどみかは知った、土蜘蛛の鮮血を全身に浴び、更には先程までの鬼のような戦いを見せた光矢の額から大量の汗が流れていたことに。彼の表情が、本当に安堵した疲れ果てた顔だったことに



「…君って馬鹿だね。私は君の名前すら知らない、ましてや会ったのはついさっき。そんな得体の知れない奴に…普通の人間なのに、切られたら血を流して、ほんの一撃で死んじゃう存在のはずなのにこんな…命かけるなんて…」



どみかは光矢へ、まるで責めるように、はたまた懺悔するかのように呟く。その声は震え、支える体を震わせながら



彼女は光矢が無理をしていたことに気付く。確かに化け物(人間視点)相手に一方的に戦ったかもしれない、それに見合った度胸もあったかもしれない、だが決して怖くない訳がない。それを光矢は何ともないように笑う。初めの、捕まっても元気に喚く姿など陰も残らない疲れた体で、だ



「……はあ、自己紹介!俺の名前は仁道光矢、15歳の高校生、夢道高校に通う正真正銘の人間でっす!」



「え、え?」



だが彼女の心情などお構いなしに、光矢はいきなり自己紹介を始めた



「名前を知らないなら教えればいい、会ったばかりの奴を助けるのが馬鹿ならほっときゃいい。自己満足!ただこれを満たしたかったから助けたんだ、こんな可愛い女の子ほっとく位なら死んだ方がマシだって思った俺の問題だ、お前がそんな涙する必要、ある?」



「え?」





光矢に言われて、どみかは初めて自分が涙を流していたことを知る。そして光矢はどみかの涙をそっと拭う



「すんっ…あ、ありがとう///」



「いいさ、女に泣かれるのは苦手でな。良かった良かった!」



「…ねえ、君のことは、光矢でいいの?//」



するとどみかは急に顔を赤らめ、光矢を潤んだ目で見た



「お、おういいぜ!何とでも呼べな!(な…何だこの小動物のような庇護欲を煽る目は!ダメ、このままだと普通に抱きついちまいそう!)」



そして光矢はそんなどみかを見て必死に平常を装い、心の中の邪と格闘していた



「おい人間!貴様は何者だ!」



だがその時、光矢に向けて怒声を放つ者、例の羽の少女がズンズンと歩み寄ってきた



「誰って仁道光矢だけど?つか君は名乗りなさい!礼儀でしょうが」



それに対して光矢は全く緊張をせずに答えた



「知ったものか、第一貴様この場において真名の重要性をまるで分かっていないようだな!」

  


「真名?んだそら、確か魔法の世界でよくある『真名を知られたら操られるー』みたいなもんなのか?」



「……」



「……え?マジ?」



まさかの的中、これには羽の少女、並びに本人も驚いた



「あ、あのね光矢。真名はこの狭現において『密接な信頼関係』を互いに示すものなの。つまり…その、名前を呼び合う二人は将来を永遠に誓ったってことになるの///」



そこへどみかは光矢へ真名の意味を教えた。その顔はひどく赤かったが



「……ええええ!?」



「無闇に名を表に出すな、使うなら二つ名を、偽名を使え」



「つっても教えんの遅せえよ君!んじゃ俺はどみかちゃんと一生を共に生きるってことなのか!?別に俺は嬉し過ぎるけど、どみかちゃん自身望んでないことなら俺はそんなルール無視するぞ!」



「はあ!?人間!お前分かっているのか?我々のような妖、幻獣などの類と契りを交わすということは、必然としてその者の能力を自由に使用して権力を得るということなのだぞ!」





「知ったこっちゃねえ!真名とやらが女を泣かせるようなもんなら端っからあった所で絶対使わねえ!大事なのは女が喜んで、俺が満足するかどうかだ!」



「なっ!?」



だが光矢は真名の意味を知ったとしても、それを使うことを断固として拒んだ



「…もし、俺が真名を自ら使うってことなら、俺はお前の名前を教えてもらう。それなら俺はお前とどみかちゃんの名前を知ってることになるから…また二人が友達でいられるようになるはずだ。そこに二人は俺の名前を知ってる、ならば俺から束縛を受けることはまずないはずだろ?」



「え!?こ、光矢…それって」



光矢の宣言したことに、さすがにどみかも動揺したようで、思わず光矢を見たどみか



「……名は絶対に明かさない、姉さんを陥れた女と…あの土蜘蛛などに真名を授けた女などとは二度と友達だなんて思わない!!」




「う!」



「っておい!」



だが羽の少女はどみかと再び友になることを拒む。裏切られた憎悪と悲しみを糧にして。それでも彼女は体の痛みに耐えかね、膝をつく



「来るな!貴様が何者かは知らない、だが次私の勘に障ることをしてみろ……殺してやる!」



「っ!お前…」



「私は絶対に友に戻ることはないぞ、どみか!」




そして羽の少女は吐き捨てるような台詞を残し、翼を開き、空を舞う



「……上等!てめえがその気なら、俺が嫌でもやらせてやる!覚悟しとけよ、小鳥ちゃん!」



その背中を見つめ、空を見上げた光矢は拳を空に掲げた。今は届かない大空にでも、必ず伸ばしてみせるという意志を胸に宿して



「……光矢」



だが光矢は気づかなかった。その後ろでどみかが複雑な顔をしながら、彼の拳を見つめていたことに







それと同時に、再び彼の耳に音叉の音が響く





今まで進行の遅れを防ぐためにプロフィールを書きませんでしたが、もし希望があれば書きますので、またご意見下さい



では次回、あの鎖と刀は何?てか初めてクラスと対面…何が起こる!?

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