短絡的
校長が唐突に吐き出した空虚な言葉が実感を持たせないのか俺は呆然とした気分になる。朝からの疲労はあまりにも無駄骨で微妙な衝撃が心を微震させた。
「はぁ……出来すぎた話だ」
初めの位置から微動だにしていなかった木崎がここに来て気だるさを露にする。それはもう嘲笑いに近い表情をして腕組みを解いた。
『全くもって酷いですよ、木崎君』
(なっ)
「ん?」
何も呟いていない俺が驚愕し、木崎はさも当たり前かの様に堂々とした様子でスピーカーを見上げた。
「聞こえてんのかよ、凄いな。なぁ幸多っ!?」
そう尋ねてきた島津は餌を貰うツバメの雛の様な反応で俺の返事を求めてくる。
ありもしない良心を傷付ける覚悟をして俺はスピーカーからの言葉に耳を傾け続けた。
『疑心に満ちる心から溢れる期待……それは一番貴方が理解しているでしょう? それはもう“本能”なのですっ!?』
スピーカー内の許容を超える声量だったのか不快な鉄琴の音色が響き渡り、やけに騒がしく俺の鼓膜を刺激した。
(つか、返事になって無いぞ……)
首筋を何かが伝っていくような不快感が俺の中で駆け巡る。
「ぐっだらねぇ。おい、ドッキリなのは分かったからさっさと帰させろ。テストが無いんなら尚更、好都合だ」
木崎は微妙ながらに怒っている様子だった。
この時の為にどれだけの勉強を積んできたのか、積まされてきたのか。微妙と扱えば怒られるので俺は全く知らないと言い切っておく。
『……ょか。ええいいでしょう、はぐらかせば何とかなる年頃でも無くなったようですし、木崎君?』
そう尋ねた校長は朧気に掴ませない平淡な声調で続ける。木崎はというと皆から注目を浴びながらも悠然とスピーカーを凝視していた。
『先程も言いました様に今から行うゲームは“殺し合い”です。何処かへ“移動”するわけでもこの“場所”で行う訳でもない最新鋭の技術を搭載したゲーム機で行う“殺し合い”』
(何が言いたいんだ?)
そんな疑問符が過った瞬間、木崎が「まさか」と唸った。
『そう、君は君達は断れない。我々は君達にとって大切な者……近しい者の“命”を握っている。だから、皆さん? 大人の話は黙って聞きましょうね?』




