放送
『おはようございます、生徒諸君……といっても一クラスの三十六人しかいない校内とは些か虚しいモノを感じます』
如何にも残念そうに吐露された校長の言葉に辺りが口々に言葉を漏らし始める。それら全てに耳を傾けると疑心を喧騒へと変えようとしていた。
そんな中、校長は上擦る声調に歯止めを利かせた様に中途半端に抑揚のある声で続ける。
『校長の田中です。先ずは、君達も気になっているその黒い物体を説明しましょう。単純なゲーム機とでも考えて頂ければ幸いです』
箇条書きされた文面を読んでいるかの様に話をするのがここの校長の特徴だった。意味がある話は大半はそのやり方のせいで無駄に終わっている。
(ゲーム機か……)
何かが始まるのか。そんな期待からの興奮で妙に俺は浮わついていた。
『ただ少しハイテクで企業秘密な部分も多いため私に教えられているのはごく僅かな詳細のみなのです。何故、このような事態になってしまったのか。何故、生徒達がこのゲームに参加することになったのか……』
ボソボソとマイクに吐息でもぶつけているのか言葉は聴取出来ても生理的に胃に来るものがあった。
(嘘つきが)
『……そのゲーム機は展開するわけでも人数に限りがあるわけでもありません。ただ一斉に“あの世界”に送れるのが今のところ四人までと制限されているのです』
(“あの世界”……)
憧れが期待と反したのかそのワードに何かが喪失した様な感じがしてならなかった。期待と憧れが俺を偽らせているような、て微妙に当たってるではないか。
(つか、俺がそうだからな)
自嘲する。
『そんなゲーム機を用意してまで君達にやって貰いたいことそれは“殺し合い”です』




