人間性からの影響
寂れた町に唯一佇む看板の様な雰囲気に黒色の一つで彩られた長方形の“黒い固まり”が四つ佇んでいる。
クラスの群衆に囲まれているそれらは人目を惹き付けるにはあまりにも質素であった。
脳裏を掠めたのは不安を掻き消す為の趣向。
(取り敢えず、言えるのはこの先起こり得る事態から微妙ながらでも恋愛が待ち受けているのでは?!)
そんな心中の最中に幼なじみである島津は俺の隣人の距離を保ち着いてきていた。微妙に気恥ずかしさが鳥肌を産み出したので言い換えてみる。
前髪さえも省みない坊主頭で柔道一筋を想像させた島津が部活動の誼で俺に追随してくる。
追随というのも俺が大衆の中の一人となる訳でなく端の席を目指していたからだ。教室に入室した時点で俺は人間性を改める。
何もかもを慎んだ小さな陰険なキャラへと成り下がるのだ。それが癖づいた理由は俺は覚えてはいない。
ただ一つ言えるのはそれは人を傷付けない為と俺は微妙な心境ながらも自負しているつもりだ。
脳内に空想したスイッチを一つ押し込む。
「ったく、いつ見ても顔付き変わるなぁ」
そんな解りきった事に対しての苛立ちや微妙な腹立たしさは皆無に近い。近いというだけで微妙な距離でゴール出来ていない事も俺は理解している。
そんな手慣れた自分自身の偽装を済ませた俺は自らの机に辿り着き鞄を机上にへと放置した。
「堂々な遅刻だな、幸多朗?」
傍らに島津が陽気な光明のテンションで「ギザギザ?!」と声を掛けたからか知らないが。
「無意味な殺生をしないのが坊主の役目だよな、島津。ギザギザ、も微妙に苛々してんぞ」
綻んだ口元に抑えを利かせず俺は含み笑いで迫り来た嫌味を意表を付くことで返した。
窓ガラスを背に凭れていた木崎がその返事に微笑で応答してくる。
「今日は明暗を別けたテストだったよな。お前がそういった。そんな瀬戸際に毎度毎度立たされている馬鹿がこの日に遅刻とは随分な過信じゃねぇか」
蔑む様子で黙認している木崎を尻目に俺は二の次の言葉を探した。
「あのな、お前等って何で毎回そうなんだよ。取り敢えず、考えようぜ?! あの不可思議な物体をよ」
横槍を入れた島津が変わらない調子で親指を後ろに立てアレを指した。
が、同時に時計が九時を指し示し聞き慣れたチャイムが鳴り響いた。
瞬間、放送のスピーカーが雑音を上げる。




