テスト前夜
という喧騒を辺りに撒き散らしつつ終えた授業の後、気乗りしないままゲームセンターへ歩を進めた。
その後の事を事後報告という形で自身に復唱し続けようと目論んでいたのだが、安易だった。
自尊心の崩壊、淀んだ水溜まりに頭を浸したような不快感を自身に受けたが全事実。
何が合ったかと先ず思い出すはあの自慢気な表情“ドヤ顔”を省みる。
そう詳しく述べるなら俺は授業を終えて帰宅、着替えを済ませて、ゲームセンターへ。
ここまでは順調だったのだ、限りなく。
当然そこで待ち合わせていた木崎と共に行き付けのゲームセンターへ馳せ参じましたよ。揚々と微妙な面持ちを保ちつつね。
そしたらどうですか。格闘ゲームにおいて負け無しと自称に思い込んでいた俺をあの野郎はボロッカスに打ちのめましたよ。
リベンジにリベンジを重ねて三十九戦三十九敗。ああもう一回と嘆き切望したら木崎は『明日テストだから帰るわ』ですよ。
ふざけんなっ!
「矛盾してんだよっ、微妙に泣きそうになったわっ! つかいま何時だよっ! 何で閉店て教えなかった、アイツはっ!」
事を足し続けるのなら俺は既に二度目の帰宅を終えて勉強机と向かい合い、椅子に体重を任せている。
夜。デジタル時計のPMが何の略称なのか解らなかったので家にはデジタル時計は無い。微妙に嘘つきなのも俺の性分さ。
と誰も居ない一人部屋で振り返り決めてのポーズを取ってみた。当然それは現実逃避な訳で。
浸した頭から水が垂れたかのように背筋に寒気と気恥ずかしさを生み出すばかりだった。
「何やってんの……あんた?」
声を発した人物は直ぐそこで硬直していた。外出時以外には整えない髪に見慣れた老け顔。
後悔先に立たず。うん、カッコいい。中学生男子の得意芸“反抗期”を発動しよう。
「ば、バッキャロー! へ部屋入る時はノックぐらいしやがれぇ……!?」
部屋とリビングへの道を繋げる扉に佇んだ母は唖然としていた。いや親子のスキンシップに新たなモノが改築された事に感心しているのか。
何とも言えない沈黙が親子の間で漂い、ついつい「おおい」などと声を掛けてしまう。
「何で見栄はってんの、気持ち悪い。てかあんた明日はテストなんでしょう? もう夜遅いけど夜食、着いてこない?」
母は気だるそうにいつも通りにそう告げた。でも不可解なのは“そんなこと今まで一度も言って来なかった”のに。第一さっきテストって……。
「誰が行くかっ!? 言ったよねっ、いまっ、現在進行形でっ、限りなくっ!? 何でこうも思考が微妙にずれてるやつばかりなんですか、俺の身内はっ!?」
「それは知らんがな……そうか、行かないか久しぶりの夜食だったんだけど。まぁ明日のテスト頑張れな」
そう言葉に余韻を残す形で母はそこから立ち退いて行った。
一瞬だった会話。刹那的に見せた母の切ない表情――ッ。
瞬間、凄まじい頭痛が俺を襲った。
「ぎっ、あ゛っ……なんだ、なんだっ、ぐっ――!」
“幸多ッ?!”
「……だれだ、」




