決定した予定調和
《皆様、これは虚言ではなく真実です。皆様が奮闘なされるために我々が用意した景品は全て御校の残った生徒に贈呈致します》
殺伐とした心境に内心が真実味を帯びていない。自覚していないのか、何かにすがろうとして物事を直視しようとしていないだけなのか。微妙だ。
《補足と致しまして、この全ての空間は我々運営委員会の手中にあります。不具合など、こちらの想定外の事象に対しまして即座に対応致しますので御安心を……それでは、只今より全ての生徒による“バトルロワイアル”を開始します》
ビーッ、言葉の終わりを告げる合図の様に錆びた音色がベルとなり鳴り響く。不快感全開で脊髄を締め付けられた。
「うるさっ」
九条さんがその最中に不躾なベルに対して同じ様な不快感を言葉としていた。反射的であった為か片耳に指を添え掛けた所で音が鳴り止んだ。
眼球を瞬きをして潤わせた後、木崎が二三歩の動きを見せる。それに付随するかたちで視線が木崎に流れ、目線をかち合わせた。
「……くだらない、誰が好き好んで犯罪者の汚名を受け入れるんだ」
木崎は呆れ混じりに嘲笑う。そして、そこにはこれからの意向を示す道標が含まれていた。
「アハハ、そうだよねぇ、もうテスト無いのは助かったけどこれだったら必死に勉強してきた方が良かったよっ!」
九条さんが賛同の口頭に陽気な笑声を上げて嘆息する。湿気の多い薄暗がりの室内ではその温暖な雰囲気が際立っている様に感じた。
(……ということは、九条さんも勉強してこなかった?微妙なラインだが)
不意な来訪者もとい仲間入りを果たしてくれた九条さんに賛成の意を示そうとした。
その時、耳元に吐息が吹き込まれ背筋を擽らせる。
「岩崎、おま、近すぎ……る……ぞ……?」
気が付けば木崎の隣人となっていた岩崎は茫然としたいつもの顔つきで俺を見ている。それだけでない、あの九条さんさへも俺から距離を開けようとしていた。
薄ら笑いと隠匿しつつその表情はひきつって見えた。焦燥にも似た感情が視野を狭める。
疑問符を露呈させていた為か木崎が何の脈絡もなく憮然として俺を指差した。
「後ろの、お前の彼女か?」
奇々怪々な物言いに「は?」と言葉が漏れる。狭まった視野に振り返る為の余分な動作を強いられつつも俺は摩擦する首筋に抗いその先を見据えた。
そこには奇々怪々な独特の雰囲気を醸し出す女性の姿があった。




