花崎幸多
「おい、幸多。何してんだ?」
「その両の眼で見てるでしょうが。説明が必要?」
「必須だ、何故ならそれを俺は質問してるんだからな」
「ただ昼休みという時間に身を任せて静寂に綽綽と同調してるだけ。答えの採点を願おうかな?」
「はぁ……あのな、普通にぼーっとしてるって言えないか不幸多」
中学生活二年目。そんなあだ名で呼ばれる様になったのは一年生半ばの秋だったろうか。
強弱明快に認識出来ない根性をひん曲げた性格の影響か、腑抜けた容姿に普通過ぎる黒髪。あ、最後のは部活の影響だったかな。微妙だ。
柔道部所属二年木崎健兎。机の木に流れる川の想像の産物を実現した様な木目の数を黙認している最中に声を掛けてきた人物。
同じ黒髪を所々固めた微妙に男女の人気を得る、表裏の達人。というのも、木崎とは幼少からの仲だから嫌でもコイツの事は認識しているつもりだ。
俺の力むという行為を忘れた容貌に相対し、木崎は常に温厚な微笑を浮かべ話す。それは誰彼構わず同一のモノで崩れる事を知らない。
あ、でも岩崎助ける時は揉めた……けな?
「おい、明日テストが在んだろ? 今まで勉強勉強で懲り懲りだったからさ、今日格ゲー行かないか?」
余裕綽々で、辺りを気にせずその口調を変えてくる木崎に感心の一瞥を差し上げた後、木目と遊戯。
先程から微妙に眠気が加算し、木崎からの期待度高めの御誘いの言葉が堪忍袋をつついている。
「お掛けになりました会話は現在、弾みそうに在りません。ピー、と発信音が聞き取れましたら踵を返して微妙にショックを受けてください……ピー」
木目の数が丁度、二十を超えた時。
ドコッ!!
「ひゃ、ぎゃ!」
机へ伏せる為に両腕を頭部前の保護具として置いていたため必然的に手薄となる脇腹を木崎が殴ってきやがった。
面を上げて、木崎を目視する。
「な、何だぁ!?いきなり?!」
「行くか行かないか、聞いてんだ不幸野郎!?」
「行くか!?テストですよ、この先に行き着く道に後悔しないよう蓄積するためのテスト!?んな日にゲーセンなんて行けるか、小動物が!?」
「小動物? はぁ?!お前馬鹿か、人間誰でも心は小動物と同等だ!お前みたいに自分を過大評価なんてしてねぇんだよ!?不幸多郎が」
「ああ、上等だ!?今日は負けね!?ボロクソだ、小動物!」




