サカモト小隊室にて・下
やっぱり間に合わなかった。
ギリギリどころではないくらい遅かった。
見切り投稿したので誤字があったらごめんなさい。
女性陣が茶を啜りながら井戸端会議…じゃ殺されそうなので、ガールズトークということにしておいて。
俺は当然弾き出され、聞き耳を立てて半殺しにされる可能性が無いとは言えないので、チンタラ湯呑みを洗いつつ時間を潰している、といったところである。
このまま所在無さげにしてるのもアレなので、「勇者」とは何か、と説明をしておくことにしよう。
俺自身が勇者じゃない以上、勇者について説明せねばなるまい。面倒だが。
まず、勇者は男性が多い。
なぜわざわざ言及するかと言えば、単に女性勇者が存在するからだ。
何故か召喚元が極東の島国、日本。何が理由かはもう俺自身が地球にいない以上、調べようがない。日本列島は大陸プレートが4枚連なって出来てるせいか?
なんだか行方不明者リストに何十人か入ってそうだ。まあ、行方不明というより拉致に近いが。
何故か召喚される者の対象年齢が10代後半。伸びしろや適応力やらがバランス取れた時期だからだろう。還暦過ぎた人が召喚されてもなあ、とは思うし。
ひょっとすると、ご都合主義補正で若返るのかも知れないな。
そして、「多い」という表現からもわかるように、勇者は複数…というか一国に最低一人は存在する。
勇者は魔王にせよ魔神にせよ、魔の者に刃を突き立てられる最たる存在である。
情けない話だが、勇者という「対魔の最高の剣」のレンタル料に大枚を吹っ掛ける国も歴史上多数…否、勇者が一人だった時代は当たり前のように存在したようだ。
確かに勇者に金かけてればわからないことも無いが、流石に法外…いや、無法なレンタル料を盾に小国を併呑しまくった国が出来たら流石に各国も危機感を抱いたのだろう。
そんな歴史の上で自然に出来上がったのが、一国一勇者、日本未成年の消失、自前勇者召喚&育成計画の完成である。
そんな日本列島の都道府県の平均面積に届くか届かないかの国同士の下らないいがみ合いのお陰で、日本列島で相次いで神隠しが起こっているかと考えると溜め息が出る。
そして、この勇者召喚の一番マズいところは「リスクなし」「年一回可能」なところだ。
何がマズイかって…ん、お茶おかわり? あ、そう。
で、ちゃんとした話があるからテーブルまで来い、と?
…どうして正式な命令より個人的な悩みを優先するかね。
…そういえば、どっちの出所もあの女夏候惇だったな。
あちら側にしてみれば比べたところで大して差は無いのか。
…無いのか?
「ということで勇者がフスティリオの観光…もとい視察を希望しているわけ」
マジめんどくせ…なオーラを口から吐き出しつつ、説明をしてくれているティー将軍。
部下には聞かせちゃマズイ的な話のはずなので、ケビン嬢には席を辞して(皿洗いの続きをして)もらっている。
とはいえ、一言、愚痴、一言、愚痴と、脇道にそれては戻りを繰り返しながらの説明なので、無駄に長い。なので要点だけ。
この国の文化、経済状況や世相を肌で感じたい。
ジャンクフード食いたい。
どっかの誰かが勇者のパーティ入りの打診を保留したので1日をフスティリオで潰すため。
要するに、目の前の女の自業自得じゃね? とか思いつつ。
んで、護衛というか随伴員としてティー嬢が指名されたらしいのだが。
「ヤな予感がビンッビンにするのよ」
…俺も同感だ。
「それにスラムやらを見せる…というか入らせる訳にはいかないでしょ」
「身ぐるみどころか尻の毛までむしられるな。
勇者ご一行が葉っぱ一枚でスタートとか…」
「何よそれ」
…通じなかったか。
「いや何でもない。
でも、確かにトイレや風呂にまでついてくのは女一人じゃな。
歓楽街に行かれてもマズいし。
勇者が色街でスカンピンとかなあ」
「私としてはさらわれて男娼にされないかが心配だね」
勇者の外見(想像図)がわかんなくなってきたな。
「つまり随伴員を3、4人ほど連れてかなきゃいけないわけか。
ま、大変だな。頑張ってくれ」
なんだか俺的にもヤな予感がビンッビンにするので、「ただの将軍の愚痴」で済ませてさっさと追い返したいところなのだが。
「…アンタ、私を厄介払いしようとしてるでしょ。
少しカチンと来たから先に言うわね。
カイチ・サカモト。
ケウィネル・チェストナ。
シェード。
以上の三名は勇者の随伴員、テュテュ・モンデシーの指揮下に入り、一時的にサカモト小隊をモンデシー将軍直下の部隊として扱うこととする。
色々細々したことがあるけど、こっちから持ち込んだことだしこっちでやるからその点は安心してほしい」
…やっぱりか。
猪の命令では必須の細かい事務作業がハンコ一発になったのは不幸中の幸いか。
「実践部隊はプライド高かったり、私より年上だったりで戦闘以外で私の言うことに耳も貸さない。
かといって士官候補生だと、勇者にコネを作ろうと躍起になって視察どころじゃ無くなる。
何より、フスティリオの中流階級以下の出身の軍属の人間を隊長以外に知らなかった」
つまり、『土地勘』を持つ部下…というか使える奴が俺しかいないって訳か。
「んで、バックもコネも強くない『最強の補給部隊』にお鉢が回ってきた、と」
「ご明察。
それに隊長、予備役だから街に顔が利くでしょ。
そういう人を一人連れていきたかったってのもあるわね」
………。
…お前、最初から俺達を巻き込む心算だったろうが!!
なんて罵倒は流石に上司には出来ず。
「…あいよ、只今受領いたしました。
明日、門の前だな」
「勇者が十の刻を指定してきてるから半刻前には頼む」
…何か臭いな。野郎が準備にそんなにかかるとは思えんが。
でも、こいつのせいではないだろうし、その疑問は明日の門の前に投げることにする。
「じゃ、また明日。
あのベテランエルフに酒は程々にって伝えといて」
「自分で少なめの酒瓶渡すしか、あの酔いどれ姉さんの減酒は望めんぞ」
「…後で差し入れをさせよう」
…良くても効果は僅かだと思うがね。
あ、ケビン嬢にも明日のこと言っとかないとな。
部屋、シェードの隣だし。
「ケビン嬢、話は終わったぞー。
あ、皿洗いありがとね」
「いえいえ、センチャも飲めたのでウィンウィンです。
で、ティーさんから仕事をもらえるってのは聞いたんですけど何だったんですか?」
あいつ、あの井戸端会議でそれしか話して無いのか?
えええーっ、とか言わせる為に敢えて言ってないとかそんなことは…無いとは言い切れないな…。
…とりあえず、言うしか無いか。
「勇者のお守り」
「えええええーーーーーーっ!!」
うん、予想通りの反応を返してくれると気持ちが良いもんだな。
あの元ツッコミも扉の向こうでガッツポーズをしているに違いない。
やっぱり投稿ペースは半月に一回くらいになるのかな。
気長に構えていきます。