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小隊棟の2階廊下にて

ずいぶん遅くなりました。

きっとこれからもマイペースです。

 「一般的な軍隊」を知らないので所属する軍隊が一風どころか結構変わっていることを、新兵研修を終えてしばらくしてから知った。



 この国の軍隊も、昔は普通に階級やらであーこーどーこーやってたらしい。


 しかし、何がきっかけかは調べていないので知らない。調べてもまともな理由なんて出てきそうにないが。



 小隊をダンゴにして中隊。


 中隊をダンゴにして大隊。


 大隊をダンゴにして頭に将をつけたのが師団。



 という責任転嫁が乱発しそうな軍隊がまかり通っている。


 私が入った時から既にそうでした、とはケビン嬢の談。



 で、我らが補給部隊は扱いの上では「中隊」となり、冶金部隊や輸送部隊などをあわせて「大隊」。


 あ、サカモト小隊は輸送部隊の中の実務だったり護衛だったり…要するに何でもやってる。戦時じゃない時は合同訓練も週一くらいであとは雑務ばっかりだし。


 閑話休題。


 最後に実戦部隊の大隊を2、3合わせて頭に将を載せたのが俺たちが所属する「師団」だ。



 聡い方ならおわかりかもしれないが、これは「俺が万年伍長な理由」と「補給部隊の運用を任されている理由」である。



 分かりやすい話、猪に媚びへつらうか袖の下でも使わない限り什長や中隊長にはなれないのである。


 かつての部下も昇格して色々なポストに就いているのだが、猪の承認が無いと異動が出来ない構造上、奴が御戯れか落命でもしないと俺は万年伍長から上にも下にも行けない。


 かといって給金の割りには楽な仕事だし「あくまでも副業」なので辞める気はない。


 …奴に好かれるよう態度を変えたり山吹色の菓子を用意する気はさらさらないのだが。忙しくなっても困るし。



 そして猪は「失敗をせず言うことを聞く部下」と「才色兼備な女性」が大好きである。


 普通、失敗をしないためには下準備をおろそかにせず実行に移す事がベストだろうと思う。


 だが、この方法だとたまには失敗するだろうし、何より突撃至上主義の猪の「言うことを聞いて」作業を行わなければならない。


 特に作戦立案なんかではあの猪将軍の言うことなんか聞いていたら裏方ですら散華するだろう。


 なので、猪将軍のズル賢い部下は自らが失敗しない第二の方法をとる。



 …身分や階級が下の者に丸投げする。


 …誉められたことじゃない。



 今まで無茶振りも数あった。


 で、その無茶振りを投げる気はないがもう投げる相手もない俺がエーコラヒーコラしてこなし。


 成功すれば上の手柄。


 失敗すれば俺のミス。


 と、伍長になってすぐに上の将軍が猪に代わってから俺を含め不器用な野郎どもが貧乏クジを引き続けている、という訳だ。



 まあ、元が無茶振りだし、俺が降格したところで色々と困る輩もいるようなので何のお咎めも無い。



 当然、縁の下の力持ちも数年やってれば報われる機会は無くはなかったようで、もう一個の師団からの移籍などの打診は幾度もあったようだ。


 つまりは、ヘッドハンティングである。


 …当然「給金以下の仕事も以上の(以下が未満じゃないのは間違いじゃないぞ)仕事もしない」を地で行く俺だって、この不遇を改善されたいって思いは多少はある。


 何より、もう一個の師団の将軍は「姫将軍」で美人で知り合いで元同僚で美人でと行かない理由は無い。


 …大事なことは2回言うものだ。


 だが異動の権限は猪が以下略。という訳である。


 あの姫将軍閣下もあの猪将軍のことを「あの猪」と言ってることだし。…猪は俺が言い出しっぺじゃないぞ、一応な。



 …そしてこの問題での一番の悩みは同期が伍長にはいないということだ。


 まあ、(戦闘には直接参加しない隊の)伍長の皆も色々と事情はわかってくれているから、そこまでアウェイ感は感じなくて済むのだけど。


 というわけで目下の悩みはケビン嬢が近々昇格して軽口を叩き合えなくなることだ。


 存外に寂寥の念に駆られる。



 野郎が言うと若干キモいな。


 というか何故彼女は降格したのだろう。


 ポカやらかしたとか、そんな情報は全く無いのだが…。



 …と、廊下を歩いてる最中に長々と思考出来るのも角部屋なことを除くと洗濯物が良く乾く他には良いところの無い、玄関からクソ遠い場所に位置している我が小隊部屋(2階)のお陰である。



 ちなみに最上階である3階は○○と煙は高いところが好き、の例に漏れずエリート連中が独占している。


 1階は利便性が色々と高いので実戦部隊が我が物顔で居座っている。


 上からはゲロ甘アロマ(香のほうが正しいか)、下からは男の汗スメルが漂ってきそうな部屋だ。実際そんなことは無いので思いっきり偏見だが。



 そんなことを考えているうちに我が小隊の部屋の前に到着。


 すると、珍しいことに部屋の前に待客がいるようである。


 その待客は豪奢な軍服に仮面…怪しさ…MAXです…。



 なので当然、スルーして部屋に入ることにする。



「…待たんか」



 …あ、やっぱダメ?



「ダメに決まっているだろう


 カイチ・サカモト」



 …「いつものように」こちらの考えを先読みしおる。



「んで、何しに来たんだね。


 ンな部屋まで」



「…っふふ。


 変わらないな、『隊長』は」



 そう言いつつ『彼女』は笑いながら前屈みになり仮面を外す。


 …俺より出世しても未だに『隊長』と呼ぶ奴は多い(考えると悲しくなる)が、仮面の下にさらに片眼を隠す、眼帯のような仮面を着けてる女性なんかそうはいないだろう。



「何、隊長手製のグリーンティー(緑茶)を飲みに来たんだ。


 …取り敢えずはそれだけ」



 奴はテュテュ・モンデシー。


 俺にとってはエリートのクセに補給部隊に入って来た超変わり種な元部下である。


 一般的には『隻眼の姫将軍』。かつては『剣姫将軍』とも呼ばれた、色々と面倒臭い奴だ。


 だって俺より遥かに強いんだもん。

テュテュって呼びづらいですね。

嘉市君ならきっと呼びやすい愛称を考えてくれることでしょう。


…ええ、まだ未定です。

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