補給部室にて
日本刀出したいなあ。ポン刀。
でも、中世ヨーロッパには出せません。作れないから。
どうしよう?
「あんのエロショーグン、ジロジロと見やがってぇぇぇぇぇ」
…どうやら意識は部屋の中に残していたようである。
しかし、本当に舐めるようにケビン嬢を見ていた。
報告をしている俺を怒鳴り付けながらにも関わらず、だ。
ケビン嬢を見ながらあの熱弁(中身こそ無いが)を奮っていたのはある意味尊敬に値する。気がする。
違う向きに並列思考をしてくれればなあと、尽くづく思う。
「で、アンタらは一々報告してきたってわけ。
アタシが付いてった時もジロジロ見てたねぇ。
全くあやつは懲りんねぇ」
で、猪をあやつ呼ばわりするのはエルフの姐さん。
外見は妙齢の美女なのだが、実年齢と外見の比例具合はエルフによって異なる。
…女性には必要ないなら年齢は聞かないのがマナーだ。
本名は知らないが皆からはシェードと呼ばれている。
本人が言うには自分はフォレストエルフで、けしてシェードエルフではないのだが、訂正するのはもう疲れたとのこと。
閑話休題。
「かといって、話をしないわけにもいかないし。
姐さん、戦死判定受けたろ?
補給部隊員が戦死とか、本来あっちゃならんのに」
戦死判定とは、斬られる代わりにマーカーをつけられた状態を指す。
要するに「騎馬戦のハチマキを取られた」状態のことだ。
本来は陣の後ろにいるべき人員が簡単に死ぬ現状は推して知るべし。
というか…。
「損耗率3割で『大敗』なのに、半壊ってもう…」
「というかアタシを含めて3人だっけ?
ウチの隊の戦死判定。
相変わらず弓隊も死んでるみたいだしまるで末期戦だよ」
期間を限った戦闘ならば(雨季や積雪時はほとんど進軍が出来なくなるのでこういった戦闘は結構ある)前衛がボロボロになり後衛はほとんど被害がない、というのが普通である。
だが、あの猪将軍が指揮を取ると「ノーガード戦法」と言えば聞こえはいいが、とにかく緩急もつけずに攻めて攻めて攻めまくるため、前衛の隙間から敵が入ってくるという恐ろしいことになる。
仮想敵の将軍が戦巧者なこともあり相手の損害は15パーセントくらいに押さえられてはいる。
よく専守に徹する相手から15パーセントも削ったものだ、ともとれなくもないが、こちらの5割強の屍があってのこと。
本物の戦闘だったら脱走や投降が続出するに違いない。
俺もテントの布を棒切れか何かに結び着けて力の限り振る。そう決めている。
だが頭の固い連中は「防御に徹する相手からの15パーセント」や「華々しい突撃と散り様」を評価しちゃう連中がいるんだな、これが。
で猪が増長して、俺みたいな部下の進言を聞き入れない。
よって半壊、の悪夢のローテーションが構築されている。
なんだか陰に山吹色の菓子が絡んでそうな…げふんげふん。
「まあ、なんだかんだで実戦で死んでないのはアンタたちのおかげさ。
精々胸張って体張って頑張るんだね」
そう言って部屋を辞するシェード。
そういえば修練の時間も近い。
というわけで、オセロ盤と地図を持って修練場に…って俺しかいない。
ケビン嬢、どこ行った?
シェード(仮)さんの登場です。フォレストエルフは植物の知識が豊富なので、彼女は薬品を扱うのに長けています。
ケビンさんは体を動かしに行ったようですが…。
ちなみに訓練-団体訓練、修練-隊・個人修練のことを指します。
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