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急発進、急ブレーキは

戦闘描写とは、何かが違う。

 ほとんどの剣豪っていうのはだいたい正対に構えるものだ。


 なんでかって言うとタイマンで戦うなら正対して構えるのが一番防御に向いているからだ。一撃貰えばしまいだし。


 攻撃の威力に念頭を置くならば、つま先を横に向けて半身に構える。


 どこぞの表裏のあるスポーツで言うオープンスタンス、クローズドスタンスのそれぞれの利点が理解できるならわかりやすいと思う。


 …なぜこんな話をするかというと、オレがたまに巻き込まれるトラブルの発端から説明しなくちゃいけない。


 各国の勇者召喚の濫発らんぱつのせいで「黒髪黒目は強者」なんて風評がある。


 あちこちに伝説の剣豪やら当代随一の軍師とか万夫不当の将軍などの話が散見さんけんされるが、半分くらいが「黒髪黒目」の特徴を持っている。


 どこぞのイカレた国では戦士だか騎士だかの叙勲資格に「黒髪黒目の男性の生首」なんてのを公に認めてるらしい。


 要するに黒髪黒目の男性の首級しゅきゅうを挙げると武芸者としての箔がつくというわけだ。


 ここまでの前提を踏まえた上で、ケビン嬢をなんとかなだめすかして就いた帰路の途中での目の前の現状である。


「俺、ほとんど丸腰だから帰ってくんないかな」


 目の前に頭巾をかぶった剣士が立ってるんだよな。明らかに通行人という雰囲気ではない。と言うかこんな町外れの道の先にはだいぶ荒れている果樹園しか無いのだ。



「………」



 無視か。


「俺に何か用でも? 無いなら失礼する」


 どう見ても俺に用があるようにしか見えないが一縷の望みにかけてスルーを試みる。



「貴殿に聞きたいことがある」



 と口を開いたのは俺が横を通り過ぎようとした時だ。思いのほか甲高い声だ。


 こちらとしては聞きたいことがあるんなら頭巾も外して武装解除もしていただきたいところだが、どうやらあっちはボディランゲージのほうをお好みらしい。…めんどくせぇ。


「じゃあ明日砦の方で伺いますんで本日はお引き取り…」



「答えてくれるのであればな」



 そう言いつつ、剣士は剣のつかに手をかける。特に隠すことなんざ無いのに甚だ迷惑な客である。


「じゃあ、うちにお招きしますよ。大したおもてなしは出来ませんが」


 おそらくは無駄であろう柔軟な提案をしつつしれっと距離を取る。一応こういうポーズが大事なこともある。死して屍なんとやらとも言うが。



「私の聞きたいことはそれでは聞けんのだ!」



 ああ、抜きやがった。刃に夕焼けが跳ね返ってチカチカする。…やるしか無いのか。


 ここらの野生の獣は樹の枝で打ち払うくらいで十分追い払えるのでナックルダスターぐらいしか得物がない。というか個人で剣が買えるほど金が無いという懐事情が一番大きいのだが。


 逃げたところで逃げ傷もらうのが目に見えてるので、右手にはめて拳を某四角いリング上で行うスポーツのように構えることにする。ありがたいことにあっちも抜剣するなり襲い掛かりはしなかったし。


 …正直、号笛ごうてきを力いっぱい吹きたいところなんだが無駄だろうしなあ。


 剣士の方はどうやら集団戦闘経験が豊富のようだ、が多くの場数をくぐっているわけでも無いらしい。軍隊上がりや冒険者みたいな複数の人数で戦い慣れてるとタイマンでも半身に構えてしまう事が多いのは剣術大会でよく知っている。状況でスタイルをコロコロ変える俺が異端なのかもしれないが。


 それに対する初見殺しも知っている。殺しはしないって言ってるし多分大丈夫だろうとは思うが。


 相手の装備は…胸当てに鎖かたびらか。まあ、昏倒させられたくはないので一糸は報いる。


 …相手がそろそろ焦れてくる頃だろう。相手にせんを取らせるのは愚だと言われているが、俺自身先を取るのが好きじゃない。相手に対応するほうが楽でいいよね。


 もうひと押しかな。ということで偽物の欠伸あくびをひとつ入れる。挑発って大事だね。


 すると、しびれを切らしたのか相手が剣を振りかぶったまま走って距離を詰めてきた。おおう、見事な前傾姿勢で。…これはすぐには止まれないね。


 おおかた近づいて打ち下ろしてくるんだろうな。と言うかそれしか無いか。


 経験があるとわかるが、目の前まで来たものがストンと落ちると視界から消えたように感じる。それを見たことがないと対処なんてものはまず不可能だろう。


 剣士が目の前まで来たところで急にしゃがんで。勢い良く突っ込んでくる剣士のがら空きの肝臓を力いっぱい殴れば。

何合も打ちあうとか非現実的です。


誤字脱字などあれば教えてくだされば幸いです。

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