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あなたの存在はまるで左投げ右打ち

タイトルで遊んでるのは趣味ですけど気にしないでください。


アマチュア程度にはいるけどね、って意味合いです。

 言っておくが俺に剣術のセンスはない。


 標準武器が剣であるのが当たり前の兵士が何言ってるんだって感じだが、事実なんだから仕方がない。


 天賦の才とか天禀とか欲しかったよなー、10年位前は男の子だった身としては。


 いっくら練習しても勢い良く振りすぎてバランスを崩したり、相手を剣の腹でぶっ叩いて剣が折れるなんてことをやっていたため、20歳位の時に剣を諦めメイスなどの鈍器に逃げることにした。


 だが如何せん兵士として出場しなければいけない「剣」術大会というものがある。


 俺としては武闘大会とかにして武器の制限を取っ払ってもらいたいもんだが、そううまくいかないのが世の常である。


 結果、防御は人並み以上にできても有効打を与えられないので、時間切れで一回戦判定負けや蹴りを入れて反則負け、なんてのが俺の初参加からの常となっている。


 さて、そんな奴がまともな訓練環境を勝ち取れるとお思いだろうか。答えは否である。


 ぶっちゃけた話、落ちこぼれ以外の何物でもない。


 猪が俺の階級を万年据置きするのもこれが原因というか、結果だけ見たら俺でもそうするわ。


 もう伸びしろも多くないだろうに、実力を如実に表す大会結果が惨憺さんたんたる有り様だからなあ。


 というわけで体力づくりしかやることがないので、訓練場の端っこをランニングしている。要するにぼっちだ。


 だが、俺を戦闘力の面で評価してくれている奴はありがたいことにいるにはいる。


 そんなに胸を張れることではないが、防御や回避、逃げや閃きなど、攻めに関しては人並みよりは優れているようだ。そうでもなきゃそもそも兵士にはなれないってのはあるが。


 その証左と言ってはなんだが「時間無制限」一本勝負なら負けたことがない。本当に全戦無敗(剣以外を使って昏倒などの反則負けを除く)なのだ。数少ない誇れることのひとつである。


 …通算成績? 0勝なので、あんまり突っつかないでほしい。


 負けてる理由が積極性とか覇気とか気迫とかよくわからんものが足りてないので判定負け、とか言うあやふやな理由ばかりなんだよなあ。まあ、ほとんど攻めてないからと言われれば何も言えないが。


 最近になっては初戦突破の噛ませ犬みたく、俺から見てもひどいのが相手になることが多い。…どうせ判定負けになるんですけどね!


 正直拳で殴ればすぐ終わるけど反則だからなあ。


 単純に戦い方に華がないのはわかるけど。センス☓でも人生はガチャ切りできないんだよ。辛いです。


 あとは実際対戦したことのある当時は一兵卒、今はお偉いさんみたいなお方とか。ぶっちゃけた話転属の誘いもないことはなかったが、今のお仕事が比較的緩いので階級、給料、名誉、全て据え置きのままにさせてもらっている。…向上心がないのはわかっているがこういう性分だから仕方がない。


 だから、階級の割りには顔が利いたりする。補給部隊って飯だけじゃなくて武具の支給なんかも含まれるから折衝役とかもやらされてる。正直、上に黙らすコネがないと大変なお仕事ではある。


 そんな日常の板挟みとデスクワークがあるのに鍛錬も行わなきゃならないということで、身体能力の伸びしろも時間も足りない。


 そんなわけで、剣術の克服は諦めてメイスやら格闘術やらでお茶を濁す方向性で訓練を行っている。


 で、ランニングをしながら魔術を使う鍛錬を行っている。


 魔術と言っても指先に種火を起こすので精一杯だが。種火をつけながら走るのですらだいぶかかったんだ。


 …サリ・カニュ半端ないわ。圧倒的な攻撃能力は早死にの種だとわかっているので術のセンスは羨ましくても欲しくはないが。


 …術はセンスだと思うんだよなあ。魔力の蛇口が針の穴みたいに細いかバケツの底に穴を開けたみたいにダバダバ出るかとか、俺からはサーバーからみかんジュースしか出ないけど、サリ・カニュは複数出ますよ! みたいな。


 でも、この世界での術って宗教と密接に絡んでるから下手なことを言ったら吊るしあげられかねないので、「神に愛される」という婉曲というかガッチガチな宗教色のある表現を使わなくてはならない。まあ、優秀な奴らが絞りとる機構が存在するのは何時の世も同じ…おっと、いけない。



 でも、この方法だと四行の術とその複合技以外発達しないような気がするんだよなぁ…魔法科学(俺の造語ね)的視点から考えて。事実、熱したものをぶつけるっていう概念をサリ・カニュは持ってなかった訳だし。


 …いらん事考えたな。


 結論としては「生きていく上では魔術なんて種火を起こすくらいで十分だよ」ってことだ。異論は認めるが。


 それに、対一般的な魔術用の裏技もあるにはあるしな。


 …そろそろ、事務作業をしないといけないのでそろそろ切り上げることにする。


 皮鎧や帯剣をしてその上種火とはいえ魔術を使いながら息を切らさずランニングできるようになったのは我ながらすごいとは思う。


 曲芸と言われたらそれまでだし、何の役に立つのかと言われたら詰まらざるをえないのだけれども。


 遠くで威勢のいい掛け声が聞こえるから、エリートが雁首がんくび揃えて素振り千本でもやっているのだろう。


 素振りなんて、スポーツならともかく剣術だと意味なくないか? とは思う。頭固いやつからはギャンギャン言われそうだが。


 とりあえず一騎当千とか万夫不当とか、そんな世界もあるんだなあとしか思えない。


 そんなことを考えながら帯剣していた模造剣をカゴの中に打ち込むルーティンを今日も行う。自前の剣持ってないのよ。


 どっちかといえば俺は文官向きだし、チーター的な活躍はジュンくんやサリ・カニュあたりに任せておくのがいい。


 …ケビン嬢に何言われるか憂鬱な思いで部屋に向かう小心者だからなあ、俺は。

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