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空腹が調味料なら居心地の悪さも調味料だ

「なぁ」



「ああ」



「酒をたらふく飲むって言ったわなぁ」



「あたしは酒を持ち込めるならどこでもいいって言っただけ」



 ………。


「金を払う立場としては大いに助かるが、なんで酒っ気のあるものが一つもないんだ」



「そこは謎の多い女ってとこでひとつ」



 …こいつのことは本当にわからねえ。良くも悪くも。


 優秀な戦闘糧食の検分役ってこととウワバミってこと以外はとんと素性が知れない。


 こんなに長時間(と言っても小一時間位なのだが)シラフな彼女を見るのは本当に久しぶりだ。


 …多分シラフだろう。多分。


「しかし、なんだって俺とメシを食うんだよ。男相手ならともかく女同士ならあんたを慕うやつなんていくらでもいるだろうに」


 滅多にないシラフの彼女にする質問にしては随分と頓狂とんきょうだが、そこは俺の対女性コミュ力の低さ故である。本当はいろいろ聞きたいこともあるのだが。


「気分だよ、気分。…悪いかい?」



 そう答えつつ彼女はテーブルに頬杖を突き、ふふんと言いたげに微笑んでくる。


 この1シーンだけ切り取れば妙齢の美女とデートしている風に見えなくもないが、どうにも普段のへべれけっぷりを知っているので、とにかく違和感が半端じゃない。


 …どちらにしろ対異性スキルでは勝てないのは目に見えているので、心静かに飯を食う他出来ることはない。



「ところで隊長」



「藪から棒になんだよ」



「お金は溜まったかい」



 本当に藪から棒だな。まあ、似非軍人をやってる理由は知れているから黙ってるわけにもいかんか。



「…まだ当分先だから気にすんな」



「あたしにとっては上司が変わらないのは大事なことでさ」



「…と言うか、俺以外が上司になったらはじかれるんじゃないか? 昼日中ひるひなかから飲んでんだから」



「エルフの生はあたしからしたらどうにも長すぎるんだよ。酒を呑んで意識をはっきりさせてる時間を端折はしょりたくなるくらいにはね」



 そりゃあ、そうかもしれんな。せいぜい生きても100余年の俺らにはわからん感覚だが。


「だったら薬師でもしてたらいいじゃないか。少なくとも上司なんていないし、酒をあおりながら仕事をしても文句をいうやつなんかいないぞ」



「…20半ばの若造にはわからんさ」



 …時にガキ扱いしたりオッサン扱いしたり、この女は一体俺のことをどう思っているのか。


 確かにわからないんだろうな。俺には苦し紛れに軽口を叩くのが精一杯だ。


「なぁに、外見だけなら10年もすりゃ追い抜くさ」



「くくっ、そりゃあそうだね。…くっくっく」



 …なんだろう、この悔しさは。



「まあ、専業農家に戻ってもたまには付き合ったげるよ。同僚が得難い友人なんてめったにないからね」



「そりゃあ、どうも。ケビン嬢の見送りの時も似たようなことを言ってやってくれ」



「…どういうことだい?」



「昇進ついでに首都に戻るのは知ってるだろ? あいつには昇進を蹴る理由もここに居続ける理由も、居続けていい理由も無いはずだ」



「…寂しくなるかな」



「…またトンデモ物件がくるんじゃないか?」



「違いないだろうけどね」



「日替わり2つ、お持ちしました!」



「あ、ありがとう。…食べますか。栄転だぞ喜べよ、ってな感じなんだろうけどなあ」



「………」



「…諸行無常って感じなんだろうな」



「その言葉の意味がわからん」



「…気にすんな。飯が冷えるぞ」



「ごちそうさまです」



 うわっ。


「…敬語を使われると気持ち悪いんだが」



「じゃ、次も頼む」



「悪かった、ちっとは敬意を表してくんないかな」



「おうおう、ごっそさん」



 …いろいろ期待するのは諦めることにした。

会話形式が主でほとんど主人公がしようと意識した時にしか状況説明をしない理由は主に2つ。


ひとつは私の文才と技量がないこと。これが大部分。


もうひとつは、いちいち私が慣れた状況で生活していて状況確認することなんて無いからだ。

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