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正午までの十数分間を指折り数える感覚

 部屋に帰るなり箱の鍵をふんだくられた挙句追い出された。


 無駄に腕っ節は男の俺よりは優れている二人である。淑女協定を結ぶのは早かったといった所だろう。何とかして給料から天引きできないだろうか。ケビン嬢はともかくティー将軍は無理だろうな。


 人生諦めが肝心である。なんとか経費で落とせるようにしよう。なんにせよ生産量が増やせないからなあ。


 しょうがないので、進軍ルートなんかを練ったり盤上演習なんかをしたりする資料室…とでも言えばいいのか?


 そこで昼飯までの僅かな時間を潰すことにする。


 やっとこさ訪れた平穏である。


 カチャッ。


 …プーンと漂う甘ったるい香りと酒精が混ざったような匂い。


「昨日はサボったなシェード」



「カイチこそ幼子とデートしてたじゃないか、おあいこだよ」



 …文句を言われる前に先に弱みを握っておく。彼女らしい。


 ぐうの音も出せないが気に入らねえ。


「…将軍から差し入れはもらっていただろう」



「ありゃ食前酒にもなりはしないね。あんたんとこのジュースと蒸留酒を混合したヤツのほうが万倍マシさね」



 …褒めてくれてんのか?



「まあ、カイチとあたしは午前中は二人っきりでこの資料室の中で進軍路の盤上演習してたってこと」



 口裏を合わせろってことね。


「俺は用事があったから応接室にいたんだぞ。シェードと一緒にアリバイ作りする必要なんか無いんだが」



「ところがギッチョン」



 意味のわからんセリフを吐くなり、シェードは俺に抱きしめてくる。


 止めようとしたのにすり抜けられるあたり、俺の格闘センスのなさとシェードの技量の高さが感じられる。


 …頬がくすぐったいのと、あちこち柔らかい。



「今朝方は静かなもんだったよね。本当に誰もかもが暇でさ。


 カイチは朝一にここにこもってさ。あたしと二人っきりで」



 ………。


「4時間も盤上演習とは念入りだな、我ながら」



「本当にね。今なんてまさに逢瀬の最中じゃないか」



「…そろそろ離れてくれないだろうか。酒臭い」


 でも、なんでなんだか女性特有のいい匂いはする。イメージ的に風呂入ってない感じがするのに。


 ようやく離れてくれた。こっちは椅子に座ったまま覆い被されるような形で抱きつかれたので密着してはなかったのだが、なんか照れくさい。



「ん、たまにはいいもんだね。ま、そういうことだからお昼オゴって」



「何に対してそういうことなんだかハッキリせんが」


 午前中のことは喋らん方がいいという忠告のことか、それともサービスタイムの対価のことか。


「俺にそんなに金が無いのは知ってるだろう」



「なんだっていいよ、あたしはビーフジャーキーもフィッシュアンドチップスもカルアミルクもチーズも大好きな生臭エルフさ」



「全部、カクテルと酒のアテじゃねーか」



「それがあたしさ。かわりにエダマメちょうだいよエダマメ」



「時期が合わんし備蓄もない。美味いのは激しく同意するが」



「とりあえず、早く行かないとあたしにオゴるってのがあの二人に悟られるんじゃないかな」



 そりゃイカンな。


「姐さん、ランチデートしようか。あんま高いところ行けないんだけどさあ」


 こういうセリフを言う時は、白々しさがコツだな。



「酒を持ち込める店ならどこだっていいさ」



 全くブレないな。この酔いどれエルフは。こいつによって、俺の想像の中の清廉潔白を旨とするエルフ像は粉微塵になるまで打ち砕かれた。


 まあ、人間でさえあんな振れ幅があるんだからエルフにも振れ幅があるわな。という価値観を抱かせてくれたことには少し感謝している。


 あとは給料分働いてくれればなあ。能力はあるとは思うんだが。エスケープが非常に上手いし。



「…全く、20半ばにもなろうというのに初々しさが抜けないね、カイチは」



「…歳には触れないんだから触れるなよ、あとほっとけ」


 この人、マジで何歳なんだろ。触れないけど。

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