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しかし、まわりこまれた

「…とまあ、そんな塩梅で逃げてきたんだよ。まあ、褒められたもんじゃないわな」


 というわけで、今はケビン嬢に事の顛末を遅刻の言い訳代わりに話している最中です。



「確かにあっさりレディを見捨てるなんて最低もいいとこですね」



 …はっきり言われたよ。


 でもちょっと待て。



「何で、被害者が青年女性って知ってるんだよ。一言も言ってないよな?」


 …ああ、応援を読んだ俺にも累が及びそうだな。



「あら、あの方はもともと被害者の立場だったんですか。


 女性を含めて『3人とも』捕縛されたんですよ。


 恐らくはサカモトさん一人で対処していたら、間違いなく逃げられていました。


 だからサカモトさんを乙女としては怒りたいけど、凄いなーって気持ちもあって複雑な乙女心ってやつなんですよ」



 冗談でも逃げたい一心での行動だったなんて言わなくてよかった。




 つまりは、俺の呼んだ応援があの悪漢をフン捕まえた後に女性を保護しようとしたら、応援がブン殴られたらしい。結果、あのお姉さんも捕縛されたそうだ。


 …公僕を公衆の面前でボコるとは、大した度胸と胆力である。そんな毛の生えた心臓欲しくはないけれど。


 ちなみに美人さんだったとのこと。そうだったんだね。


 しかも応援はかなり強かったはずだったのに、不意を打ったとはいえ一撃入れた、と。


 おまけに美人さんだったとのこと。そうだったんだね。


 是非、悪漢ともどもその御尊顔を拝しにいきたいところだけど悲しいかな僕にはお仕事が待っている。嗚呼ああ、残念だ。


 …絶対ツラ合わせたくねー。



「…湿気た顔してるなぁ、隊長?」



 …ここでティー嬢のお出ましである。いい予感はしないな。


「俺は至極真面目にお仕事中だ。将軍様に刺される指は人差し指も後ろ指も無いはずだぞ」



「私だってパシリなんだから私に何言ったってしょうがないじゃないか」



 細かいことは置いといて、最近嫌な予感が途切れやしない。


「俺、今から早引けしていいすか」



「「却下」です」



 ケビン嬢まで。



「…いい予感はしないけど、一応聞くわ。一言にまとめてくれよ」



「難しい注文を…。


 中年男性が保釈金に賄賂を積んで隊長に面会希望」



 …つまり。


 あのおっちゃんが。


 保釈金を払って。


 あの3人の誰かを保釈し(おそらくはあの女性か3人全員かな?)。


 その金を多めに誰かに払ったんだろうなぁ。


 そして、猪将軍あたりには間違い無く積んだんだろう。


 で、なんでか俺にご面会希望、と。



 おそらくは特定の原因である黒い頭髪を思わずガシガシと掻いてしまう。


 いっそ頭髪を剃り上げるという考えがチラついたが、会いに行ったほうがマシだろう。


 ただ、なんで俺を呼びつけるに至ったんだろう?



 しかし、こんなにあっさり釈放されるなんて、ボコられた兵隊が浮かばれないな。死んでないが。


「面会はいいけどな。訓練とか雑務とかはどうするんだ?」


 こんなことある訳無いだろとか、あったとしていくら積んだんだよとか、考えてもしようのない事ばかりが頭をよぎる。


 お互い、どうしようもないんだろうが。


 …そもそも通報しただけのはずなのに、どうしてこうなった。


「逃げの文句を言ったって無駄。お給料もらってるんだからさっさと行きなさい」



 それを言われると痛い。


 …行くとするか。



 重い腰を上げて部屋を出ると何やら部屋がワイワイキャイキャイとしている。心が弾むような出来事でもあったのだろうか。



 話は変わるが、最近来客用の茶菓子やジュースなどが無くなることがしばしばあった。


 そういうわけで、この前貯蔵用の木箱に蝶番ちょうつがいと鍵をつけてみた。


 まさか俺が部屋を離れた隙にガールズトーク兼女子会なんかするわきゃあるまいし、こんな朝一に駄弁るような来客も無いはずだ。


 俺が鍵を持っていても問題無いだろう。


 …何故かすごく愉快な気分だ。

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