門扉は開かなければ始まらぬ
あーあ、本日もだるい仕事が終わった。
で、今オレは帰宅の途についている。
ちなみに、ケビン嬢とかは宿舎のはず。確か首都から出向してるからね。細かいことは覚えてないけど。
オレはフスティリア近辺在住の予備役のような存在なので、今日もメシとお給料もらってまた明日~だ。
「よっ、門番」
「よっ、オヤジ」
…この無礼者が砦壁ってか城壁の門番である。俺はまだ20代前半のオッサン予備軍だ。
「だから、名前で呼べとあれほど」
「と言ってもオヤジがここの最古参なんだから仕方ないッスよ」
…確かに普通なら、長くても2年ぐらいで首都出向か退役だしな。
「それにしても勇者のお付きさんたち可愛かったッスね」
「まぁ、見た目は…てか、あのローブを目深にかぶったヤツが女の子ってわかったのか?」
「そりゃあもう。オレッスから」
「あ…、そう」
まあ、流石といったところなのだろうか。けして褒められることではないのだろうけど。
「まあ、あいつらには手を出すなよ。文字通り灰になるかもしれんぞ」
「ですよねぇ。流石のオレだって命は惜しいッスよ」
どうだか。こういう奴こそ『地雷原にあえて踏み込んでこそ漢』とか思ってたりするんだよな。
「程ほどにな。手ぇ出すならシェードくらいにしとけ」
「オレだって嫌ですよ、見た目はともかく中身があんな呑んだくれバ」
この反応を引き出すがために話を振ったので、重要ワードを吐く前に口を押さえる。
…わかるよね?
こくこく。
OK。
「…まあ、確かに話振られて簡単に乗っかったオレが悪いんスけども」
わかってるなら乗っからなければ良かろうに。
「まっ、『地雷原に踏み込んでこそ漢』ッスから!」
………いい笑顔だ。…何も言うまい。
「…じゃあな」
「え? …え?」
どうやら、ツッコミ待ちだったようだ。
…帰路を急ぐとしよう。