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両手に花を掻き抱く様を見る

 店の中を抜け、そして目の前の細い通りを抜ければ目的地。


 なのだが、ちょうど細い通りを抜けた先を勇者ハーティが横切るってのも変だが通っている。


 と言うことは、その後ろをティー嬢なりケビン嬢なりがついていっているはず。


 …不意に、イタズラ心が芽生える。


 まあ、今から出来ることといえば脅かすくらいのことしか出来ないが。


 サリ・カニュはどうなのかなと後ろを振り返ると、



 サムズアップ。


 彼女の口元を見ると口角がつり上がり、白い歯が覗いている。



 俺も無言でサムズアップを返す。


 しゃべらずに意思疎通が出来るなんて、まるで数年来の相棒のようだな。


 まあ、いいか。


 ………。


 通り過ぎた。後ろから…。



 「…わっ!!!」


 ギャリィン!!!



 「た、隊長? び、びっくりした~。か弱い女の子に何するんですか、も~」



 …俺の知りうる『か弱い女の子』は脅かした瞬間、振り向き様に斬りかからないと思うのよ。いや、脅かした俺が全部悪いし、斬られることも可能性の一つとして踏んでいて準備もしていたんだけれどもさ。


 でも詰所(部隊室のことね)に置いてあった、来客用の自家製林檎ジュース(ちなみに果汁100パーセント無香料。もちろん濃縮還元なんて概念は無いので当然ストレート。うまいんだこれが)を一本盗んでその場でラッパ飲みしていた最中に鉢合わせたという、乙女としては劇薬並みの弱みを握っているので、よほどのことが無い限りキレることは無いと思う。



「ま、いいですけど…。慣れっこですし」



 そう、不意打ちも割りと日常茶飯事なことなのだ。敵意をもって斬りかかっているか否かはさておき。


 ティー嬢どこ行った。あの言いだしっぺ。


「闇討ちよりは良心的だろう。…そんなことよりパツキン将軍どこ行った」



「シェードさんについては当たり前のようにスルーですか。…でも確かにあのお姉さんがまともな仕事をまともに仕事してたら違和感どころじゃないですからね」



 酷い言われ様だが確かにその通りだ。彼女がやる気を見せたことなんて、酒の密造の摘発の際に押収した密造酒の輸送任務以外では全然思いつかない。


 海に廃棄する際に量を改めたのも彼女だった気がする。任務報告書では押収した酒は全て廃棄されていた…ことになっている。


 …真偽は、姉さんの五臓六腑のみぞ知る…といったところだな。


 閑話休題。


「噂をすれば影って言うだろうが。あることあること言って姉さんに肥え薬盛られても知らんぞ、俺は」



「隊長、間違えてますよ」



「わざとだよ、流せそんくらい。ところで将軍は…ほら、噂をすれば」


 勇者ハーティのさらに向こう側に、頭一つ抜けた金髪。やっぱり目立つねえ。


 そういえば、ローブのちびっこは…ずっと俺の後ろにいたみたいだ。なにやらプルプル震えている。


「どーした? サリ・カニュ」



「…まるでコント」



 どうやらツボにはまっているらしい。こいつ感情の発露が乏しいだけで喜怒哀楽はちゃんと出てるんだよなあ。


「こっちの寸劇も終わったことだしあっちに言ったらどうだ?


 矢野島、とられちまうぞ?」


 こっちとしてはひとかたまりになっててくれてると楽なんだがなあ。



「透けて見える」



「…思惑が?」



「確かに隊長、『まとまって行動してくれれば楽なのにな』って感じが見え見えですもんね」



「まあ、あからさま過ぎるか」


 …それも本音だが、違う。


 …俺も状況的には『両手に花』なんだよ?!


 俺にも射抜くような視線が刺さるのが嫌だから一人くらいあっち行ってよ、ってのがまぎれも無い本音だ!


 …俺はこんな衆目にさらされる耐性なんて無いんだから。貴族と勇者の一味とは違ってさ。


 こんな状況を楽しめるようなタラシ能力など一般男性には備わっているはずが無い。


 シェードみたいにフェードアウトしたい。冗句抜きで。

終わり方が多少投げやりだが致し方ない。

あんまりだと思ったから次話の書き出しに合わせて書き直す予定だよ。

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