進歩
瑠実那さんは、次の日オレの部屋にやってきた。
そして、普通にコレクションを誉めてくれたんだ。
で…
その隙にオレは、ポケットからとあるものをそっと出して瑠実那さんに向けた。
「えっ⁉︎な…な…」
瑠実那さんが固まった。
やっぱりだ。
瑠実那さんは、強い。
でも、実際に刃物を目の前に突き出されるとパニックになるんだ。
まぁ、これはもちろん偽物だ。
瑠実那さんは、正義感が強くてかっこいい。
でも、そんな人こそ事件に巻き込まれてしまわなくもない。
だから、オレは…わざと嫌われる覚悟でこんなことをした。
もっと他にやり方があったかもしれないけど、オレにはこの方法しか思いつかなかったんだ。
「これは、おもちゃだよ」
「えっ…なんでそんなこと?」
こちらを振り向く瑠実那さんにオレは答えた。
「瑠実那さんは、武術習ったことある?」
「ないけど…」
「じゃあ、もし凶器を突きつけられたら相手の表情をじっくりみて、ふと犯人の後ろのほうに視界を向けてみて。犯人も一瞬気を取られる。その隙に手首を捻って凶器を奪うんだ。もしくは、だれもいなければ遠くに投げる」
「なぜ…そんなこと、わたしに?」
「瑠実那さんは、強いけど…でも強いだけじゃ敵わないものもある。だから…だから…さ、わかってほしくて…ね。瑠実那さんには、怪我して欲しくないんだ」
オレは、そっと自分の前髪を上にあげた。
「え、その傷は…?」
「昔、スキーに行ってさ…そこでクマに遭遇してね。あの頃のオレは、無敵だと思ってたんだ。でも、違った…クマは、悪くなかった。オレが勝手に森の奥に入って…雪をぶつけて…勝手に不法侵入して暴れたのは、オレの方だ。皆は、オレは悪くないって言ってくれた。でも、そうじゃない。あ…なんか話がめちゃくちゃズレたけど、その…なんていうか…」
「わかった。言いたいこと、伝わったよ。」
「なんか…自分の話ばっかりで、挙句に怖がらせて、オレのこと嫌いになったでしょ?もうオタク友達もやめてくれて構わないから」
「うん。なら、やめる。」
「そっか、なら…家までおくる?それとも、もう一秒でも顔見たくない…か。」
「ううん、友達はやめる。けど、彼氏になってほしいな」
「えっ⁉︎」
「好きだなってずっと前から思ってた」
「いきなり刃物突きつけるやつを?」
「だって、あれはわたしを守るためにしてくれたことでしょ?それに、たぶん…職種は違うけど、方向性が同じな気がする」
「あ、それはオレも思う。オレは保護的なことに全力を注ぎたいんだけど、瑠実那さんも誰かを守るてきな感じかな?部屋にダンベルあったもんね。」
「あー、バレたか。実はわたし警察官になりたいの」
「瑠実那さんって正義感強いもんなぁ。」
「もしかして、色々バレてる?」
「うん。でも、そんな彼女ができたら心強いなって思うよ」
「わたしも、優しい彼がいたら心強いな。保護って大変だと思う。でも、その大変なことに立ち向かおうとする蓮夜くんを、そばで応援したい。」
「瑠実那さん…ありがとう。」
二人で見つめ合って握手を交わした。
「これから、よろしく。瑠実那さん」
「うん、よろしくね。蓮夜くん」
こうして、オレたちの日々のまもるたたかいがはじまる。
瑠実那さんは、強くて美しい。
そして、なによりもオレの唯一の理解者だ。
たくさんの秘密を持ったオタクの、彼女になった。
「わたし、こんど武術習おうかな」
「いいところ紹介するよ?」
「その前に蓮夜くんから、基本習いたいな。迷惑じゃなければ」
「うん、全然いいよ。」
「あとさ、第一回保護計画成功したね」
「え?」
「だって、わたしの心がガッチリ蓮夜くんに保護された♡」
「あー、そういうことか。てか、保護って…心が保護されるって…なんかどうなの?」
「だって、ほんとに保護されたんだよ?なぜなら、わたしずっと恋とか知らなくてさ、でも蓮夜に出会って、恋を知ったの。恋愛迷子を保護してくれた」
「そういうことか。なら、よかった。これから先、ずっと迷子にならないように保護しなきゃだな」
「ふふ、そうだね。」
「でもさ、瑠実那さんも警察官になる第一歩大成功だね」
「なんで?」
「だって、オレの心捕まえた」
「ほんとだ♡」
こうして、一歩ずつ進んでいけばいいかな。
おしまい♡




