4-4 Stable Diffusion
彼は真面目に話してくれた。
「先ほど時空間の歪みをプレートの歪みにたとえましたが、実際にプレートが歪みやすい領域ほど時空間の歪みが発生しやすいという傾向にあります。具体的には、日本、インドネシア、メキシコがそれらの報告が多い地域です。私は第2時空研究所と言いましたが、第1はメキシコ、第3はインドネシア、第4は南米、第5は他の地域を総括しています。今後あなたが会う人もおそらく時空研究所の人だと思います。もし出会ったら私の名前を伝えてみてください」
リョウはそういった。
「気をつけてくださいね」
その瞬間身体の浮くような感覚がしたのち、気づいたら自室のベッドの上にいた。どうやら眠っていたようだがそれにしてはやけに記憶が鮮明だ。名刺は無くなっていたので夢だった可能性が高そうだ。スマートフォンは胸の上にあった。僕は忘れる前に瀬尾遼と言う名前と第2時空研究所と言う名前を書き留めて、彼の名前を調べてみたが何も出てこなかった。引っ掛かりを覚えつつも、異常に眠かったので自分はそのまま眠りに落ちた。
次の日、自分は講義を受けにそのまま大学へと向かっていった。どうにかして向こうの世界に行くことができないかと調べているのだが難しそうだ。机にタリーズのブラックコーヒーを置いて、SNSで認知した諒太の近くの席に座って授業を受けた。
「前回の授業では複素解析について扱いましたが、今回はフーリエ変換で指数関数と三角関数の間の関係式を導くことを目的とします。今回の講義では積分と極限の交換をラフに行いますので、厳密な変形が知りたい方はこちらの本を読んでください」
穴埋め形式の講義スライドで授業が行われるが、授業後のレポートをオンラインで提出すればそれが出席点がわりになるので自分はあまり真面目には聞いていなかった。授業が終わった後、僕と諒太が部屋に残った。涼太はいつも机の上にリンゴジュースを置いているイメージがある。諒太は画像生成AIで遊んでいるようだった。
「Stable Diffusionだっけ?」
彼はそうだと言って画像生成AIを動かしていた。自然言語で描いてほしい絵の概要を入力するだけでそれに合ったようなイラストが生成できるらしい。実際に自分が適当に「時空のおっさん」と入れてみたところ、2分ほどで背景に巨大な時計が複数あるような部屋の中で時計を持って佇んでいる40代ほどの男性の画像が生成されていた。
「すごいね」
自分はそういった。目に見えているものと同じものが生成できる時代が来るのではないかと怖くなる。今は言語というメディアを通じてしまっているため想像とは若干違う画像ができているが、もし脳波から直接思い浮かべている画像が出力できれば思っているものをそのまま絵にできるはずだ。
画期的な未来であるのは間違いないと思うが、同時に自分は怖く感じてしまった。




