3-3 高校時代の彼女
「明日の夜、焼肉行かない?」
僕は、せっかくだし行こう、と伝えた。アイドルを諦めたのは残念だが、僕はレイと2人で食事に行くのが楽しみだった。
次の日、僕は駅の近くの焼肉店でレイを待った。数分して彼女がやってきた。男子高校生として平均的な身長の僕よりも少しだけ背の高いはずの彼女が、普段よりやけに高身長に見えた。足元を見てみるとハイヒールを履いていた。僕たちは店の中に入っていった。
「いろいろごめんね」
彼女はそういった。僕は謝ることじゃないと伝えた。そこから彼女とは付き合うこととなった。
「正直、私のことどう思ってる?」
彼女は僕に問いかけた。正直なことを言うと自分も彼女に対して恋愛感情を持っていたこと自体は否定できないが、それを人に対して言うことはしないようにしていた。アイドルを本気で目指している彼女に対して失礼だと思ったからだ。
彼女がアイドルを諦めたのは僕のせいではない。それはわかってはいるが少し申し訳なくなる。彼女の決断とはいえ僕に関係がないとはいえないからだ。
「なるほどね、これからよろしくね」
彼女と一緒にいられるのは嬉しいが、それでいいのかなとも思う。自分は肉や米を食べながらそんなことを考えていた。
それから二人は同じ大学を目指して受験勉強を行なった。受験勉強は決して楽なものではなかったが、理系に適性のある(と、少なくとも自分では思っている)ためそれほど苦しいとも感じなかった。それはレイも同じようだった。
そして僕、彼女含めた第一志望の大学を共有する高校同期7人で受験したが、残念ながら彼女は落ちてしまった。他の5人は私立大学や、後期で合格した国立大学に進むようだが、彼女は浪人して同じ大学を目指すことにしたと言っていた。僕は彼女に焼肉を奢ることで気持ちを紛らわしてもらおうと考えた。
そこから彼女は予備校に通っていたようだが、1年後、彼女は無事その大学に合格した。彼女は僕がいたから大学生活を想像して頑張れたと言ってくれた。僕も合格した彼女のために過去問もある程度残していた。
自分とレイは1学年差になってしまったが、彼女自身はそれはそこまで恥ずかしいとは思っていないようだし、自分としてもそうは思ってほしくない。自分の大学には1浪は3割程度いるし、2浪以上も5%ほどいる。浪人生で言えば下手したら4割近くいるかもしれない。少なくとも、決してマイノリティではないのは間違いない。そもそも受験自体最終的には運だ。自分も当時の学力のまま試験をもう1回受けて合格できる自信はない。
彼女は「今度は私の番」と言って僕に焼肉を奢ってくれた。




