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3-1 彼女との出会い

 改めて考えると、僕は幼少期からかなり奇妙な体験をしていると思う。 はっきりと覚えているわけではないのだが、幼稚園の頃に遊園地に行ったことがあった。周りに人がいて、賑やかな雰囲気の場所だった。保育士たちが僕たちを監視しており、迷子にならないようにしてくれていたのだが、僕は突如として周りから人がいなくなったということに気がついた。


 僕は何が起こったのかも理解できていなかったように思う。そもそも周りに人がいないこと自体をそこまで疑っていなかった気がする。周りが無人になったことよりも先生を見失った程度の不安の方が大きかったかもしれない。その場に立ち止まっていると、近くにいた女性、今思うと30歳くらいの女性が僕に話しかけてきた。


「大丈夫、怖がらないで。ここは安全な場所だから。少し数えれば治るよ」


 彼女はそう言って、僕に1から10まで数えるように言った。僕が数えている間に、その女性がふっと消え、目の前には先生が戻ってきていた。どうやら、僕はぼーっとしているように見えたらしい。先生に「大丈夫?」と声をかけられた。虚空を見つめていたようだ。


 小学生の頃まではそれが普通だと思っていたので気にも留めていなかった。むしろ自然な現象だと思っていたように思う。迷子になっただとか、公園で野良たぬきに会っただとか、そういう「頻繁にはないが、たまにあること」として捉えていた。


 初めて時空のおっさんという概念を知ったのは中学生の頃だった。当時インターネットで「オカルト不思議ネタ」のようなまとめサイトをよく見ていた。ある日、時空のおっさんに関する記事を見つけた。内容は自分が幼少期から経験したことと非常に似ていた。僕はその記事を読んで、自分の経験が普通なものではないことを知った。


 当時は今ほど時空のおっさんの知名度が高くなく、知る人ぞ知るような存在と言えた。Naverまとめや2ちゃんねる(現5ちゃんねる)のオカルト板などで「時空のおっさんスレ」のようなものが立っていたり、Twitterでも時空のおっさんについて当時から投稿している人はいたが、クラスの友達でも知っている人はほとんどいないレベルだった。


 僕には中学生の頃から仲が良い女友達のレイがいる。彼女は時空のおっさんを奇跡的に当時から知っており、隣の席になったときに話題で盛り上がった記憶がある。彼女は僕が時空のおっさんに会ったことがあると話すと、信じられない、と言っていた。信じて欲しいとは思っていないが、話を聞いてくれているだけでも十分嬉しかった。


 レイはそういったオカルト系の話が好きな子だった。時空のおっさんだけでなく、きさらぎ駅といった架空の駅の話や、ゲラゲラ医者のような少し不思議な都市伝説が好きな子だった。決してスピリチュアルな人間ではないし、パワーストーンだとかそう言ったものには惹かれないと言っていた。よくわからないものがよくわからないという状態が好きだったようだ。ヴォイニッチ手稿など未解読の謎に惹かれるタイプだった。

 

 それとは別に、彼女は小学校に入る前から本気でアイドルになりたいと思っていたらしく、女性アイドルにも推しがいたようだった。小学生の頃から目指していたらしいが、中学2年生の頃になるともう無理だと思うようになっていたようだ。しかしながら、高校生になってからまた本気で調べるようになったらしい。そこから彼女も忙しくなり、僕と話す頻度も減っていた。僕も彼女がアイドルになることを応援していたので、自分から積極的に話しかけることは控えるようにしていた。そんな中、ある程度落ち着いたと言っていたタイミングで彼女に話を聞いてみた。


 「それで、アイドルを目指しての活動はどう?」


 僕はレイにさりげなくそう聞いた。彼女は少し考えた後、答えた。

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