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2-10 大事な話

 僕は思っていることを伝える。


 本音で言うと別れたくはないが、それとは別の気持ちではレイの言うことを尊重したいと思っている。本来ならば1回は引き留め、どのくらい本気なのかを見た方が良いのかもしれないが、自分はそうしない方がいいと(全く根拠はないが)そう思っていた。


 僕は、レイが本気なら止めることはしないと伝えた。そして、将来ファンとメンバーの関係として会えることを楽しみにしていると伝えた。


「わかった、今までありがとう」

「こちらこそ、2年間楽しかった、ありがとう。もし落ち続けて、アイドルへの道を諦めたらまた付き合ってくれる?」

「わかった」


 僕はそう言った。正直、何にも手がつかない感覚だ。変な別れ方ではないだけ良いのかもしれないと自分を納得させることしかできない。


 目指している未来が現在の関係と両立できない場合、どちらかを捨てることとなる。レイは目指している未来と現在の関係を天秤にかけ、未来を選んだだけだ。


 僕はそう納得し、届いたビールを飲みながら届いた唐揚げを食べた。


「せっかく最後になるかもしれないから、色々話そう」


 レイはそういった。彼女がアイドルになった場合、レイとこうやって話すことはできなくなる。僕はラストチャンスを逃さないようにすると心に決めた。


 彼女がアイドルになれる資質を持っているのかは僕目線ではわからない。個人的にアイドルになるために何をする必要があるのは知らないし、そもそも僕が知る必要のないことといえばそれまでだ。確かに顔たちは整っていると思うし、身長などのスタイルもよく、運動神経も平均よりはあると思う。歌については絶望的に下手というわけではないが、そこまで上手い印象はない。アイドルに向いている性格かはわからない。そして一番重要なことなのだが、アイドルになるために何がどれくらい必要かもわからない。もしかしたら他の要素もあるのかもしれない。


 そんなことを考えていると、僕たちに後ろから話しかけられた。僕というより、レイの方に話しかけていそうだった。


「あれ、レイちゃん今日ライブじゃなかった?」


 振り向いてみると、今日タリーズで話しかけられたあの女性がいた。レイは戸惑ったような表情で困惑していた。レイは僕に「誰?」と聞いた。僕は、レイと鉢合わせる前にカフェで話しかけられた子で、なぜか僕の名前を名乗っていた謎の人物だと伝えた。


 謎の女性は、私は池下凪です、といって学生証を取り出した。そこには彼女の顔写真とともに「池下凪」と書かれていた。書かれている誕生日も僕と同じだ。


 同じ日に同姓同名の子が生まれていたのだろうかと自分はふと考える。よく見ると、学籍番号まで一緒だった。僕はかなり怖くなってしまっていた。


「すみません、もう直ぐ時間です」


 彼女はそう言ってどこかに行ってしまった。彼女の姿を見てレイは話す。


「知らない子だけど、なぜか初対面な気はしない」


 レイは僕だけに聞こえるようにそう言った。ライブとは何のことかと聞いてみたがわからないと言っていた。

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