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2-7 停点理論


 彼はそう聞いてきた。僕は、聞いたことはあるがよくわかっていないと伝えた。彼は話し始める。


「停点理論とは、2008年のスレに登場した概念です。簡単にいうと、時間の流れを、停点というものを線で繋いだものとして説明するという概念ですね。停点とは可能性として存在しうるフレームのような『瞬間』で、その瞬間を一貫する形で繋いでできるのが『歴史』というものだ、と説明する理論ですね」


 僕は、なるほど、といって彼の話を聞いていた。と言いつつも、あまりはっきりとは理解していなかったと思う。


「たとえば可能性としてはこのインタビューをしていない瞬間の可能性もありますよね。さらに言えば、私がいなかったという可能性もあります。そのような無数の可能性、物理的に考えられないような可能性も無数にありますが、その1つ1つが停点として存在しているという理論です。その点を辻褄が合うように並べたただ1つの道筋が歴史である、という考え方ですね。その系列を時間の流れだと感じているということで、我々はその流れを意識として感じる、ということらしいです」


 僕は彼が言っていることを頭で理解した。その上で、その理論が正しいとは思えない。


「もし自分の中に入ってくる記憶がパラレルワールドの自分の記憶だとすると、その停点理論というものは自分の体験から逸れるため、理論としては面白いとは思いますが、正しいものだとは思えません」


 僕は素直にそう言った。彼も停点理論を本気で信じているわけではなく、あくまで掲示板にあった理論の1つとして紹介してくれたようだ。


「その理論でいうと、無数の可能性を線で繋いでできる世界が無数にある、と言われたらしっくりくるかもしれません」


 彼は自分の話を、嘲笑せずに真摯に聞いてくれた。納得してくれてはいないだろうが、それでも自分の話を1つのストーリーや世界観として理解してくれていそうなことに嬉しかった。自分で言っておいて何だが、まともに取り合ってもらえる話だとは到底思えないからだ。



「興味深い話をたくさんありがとうございます。今日はありがとうございました」

「こちらこそ、ありがとうございました。自分の話を聞いていただく機会ってなかなかないので、色々話せて嬉しかったです」

「先ほど申し上げましたが、今回のインタビューはあくまで参考資料という扱いになるので、あなたが話されていた時空のおっさんに関する内容や他に話したことがそのままの設定で映画に利用されるとは限りません。しかしながら、話を聞けて嬉しかったです。大学生活頑張ってください」

「こちらこそ、映画を楽しみにしております」

「今日はありがとうございました」


 彼はそう言った。僕もありがとうございました、と言って部屋を出ていった。


 杞憂かもしれないが、最近「何かの弾みで今までの日常が崩壊しないか」という感覚に襲われることがある。それがどういう形かはわからないが、何かしらの形で来るのだろうという予感だ。SNSで炎上して今のアカウントとしていられなくなるとか、雷に打たれて即死するとか、突然大学を除籍されないかとか、そう言った次元の「漠然とした不安」だ。


 今日は19時から彼女に大事な話があると言われていて、その話のために駅前の飲食店で待ち合わせすることになっている。現在の時刻は17時過ぎだ。僕は僕は残りの2時間を、駅前のカフェで時間を潰すことにした。


 僕はコーヒーを飲みながら、課題をこなしつつその合間に今回インタビューで受けた内容をPCでまとめていた。1時間ほどすると、見覚えがないのにも関わらず初対面な気がしない女性が話しかけてきた。

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