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異常

久しぶりの投稿です。まあ……とりあえず、楽しんで読んでいただけると幸いです。

「まずお前らは体作りから。武術はそのあとだ。これから俺が日程を組んでいく。それ通りにやれ。後、体が壊れることの無いように気をつけろ。」

「は。」

「やってるな、宿(しゅく)。」

「これぐらいは常識の範囲です。今までどのような訓練をなさっていたのですか?」

「基本的には個人個人に任せる形でやってきたからなぁ…」

「どおりで……これでは、並の兵でも二人がかりですよ。もし本当に中華全土を取りたいのなら、一人で、少なくとも五人は同時に倒せるほどの勢力でないといけません。」

「お前、意外と乗り気なんだな。」

「俺はもともとやとわれの武人です。衣食住がついて、それに仇討の手伝いもしてもらえる。これ以上の場所はないと判断しただけです。もっとも、あの約束が果たせないと判断すれば、すぐに離れることになりますが。」

「ハハッ。なら、俺たちも頑張らないとな。そういや晨璃(しんり)は?奴にも稽古をつけてほしいんだが……」

「あいつなら、そこに。」

俺が指さすのは、猿たちがけいこをつけている近くにある森の一角。そこには、真剣なまなざしで槍を振るう晨璃の姿があった。

「稽古は付けないのか……?」

「それが今悩んでいまして……」

あいつ…晨璃の体の使い方は、どちらかといえば男性の動かし方、力をのせるものだ。だがそれだと、女性は十分な力が乗り切らない。それならば、女性の柔軟な体の動かし方に変更するのがよい。だが、晨璃は女性的な部分も織り交ぜている。おそらく、周りの猿たちの体の動かし方を自分なりに合わせたのが、あの動かし方なのだろう。今更変更しても、戦力が落ちるだけなのは明らかだ。だが、最初から槍術を教えても、上達することは難しい。

「お前も気づいているだろうが、あいつは、元は人間なんだ。」

「でしょうね。周りとは雰囲気が違う。」

「山にいた捨て子でな。見つけた以上、そのままにしておくのは忍びないだろう?もっとも、あいつは才能の片りんを見せている。」

「………あ、」

「どうした?」

「いえ……すこし、晨璃借りてもいいでしょうか?」

「ああ、あいにく俺は稽古をつけるのが苦手だからな。」


「晨璃。」

「なに?」

俺が声をかけると、晨璃は槍を振るうのをやめ、俺のほうに向きなおって見せる……が、その目には不信感と警戒の色にあふれている。面白いだのなんだの言って連れてきた割にはこの態度はどうなんだと思う一方、初めての自分と同じ種族である以上、多少の緊張もするだろうとも思う。あと、単純に好かれていなのだろう。

「体の使い方は悪くないな。でもお前、人間に慣れないと、戦うのも難しくなるぞ。」

煩い(うるさい)。わかってる。」

「……お前、人間の町に行ったことはあるか?」

「居、食、住、すべてここで解決できる。わざわざ人間どもの町に降りる必要なんてあるわけない。」

「やっぱり……まあ、また今度でいいか。」

「何の話だ?」

「いや、こっちの話だ。」

「人間、稽古をつけろ。」

「人にものを頼むときの態度すら知らないのか?おまえは。」

「人間に礼儀など必要ない。」

何かあったのだろうか。晨璃のそれは、明らかに「嫌い」からくるものではない。どちらかといえば、「嫌悪感」に近いような気がする。

「時期にわかるか………わかった。何をすればいい?手合わせか?それとも、お前用の訓練日程でも組んでやろうか?」

「手合わせでいい。結果の出ていない訓練より、よっぽど建設的だ。」

「そうか。ならいい。」


「グ……」

「予想通りというか、なんというか。体の動かし方がいびつだな。自分流か?」

「ああ。仲間たちの動き方を見ながら、動きやすい感じにしている。」

「……」

「不満か?」

「不満……といえば不満だが、別に文句を言うつもりはない。そこについては、お前の勝手だからな。まあ、その戦い方だと、俺に勝つことはできないが。」

「………わかっている。まずまず、私がお前を連れてきてのは、お前の使う槍の技に興味があっただけだ。お前自体に興味はない。」

「だろうな。お前は極端に人間を嫌っているようだし。だが、その体の使い方だと、槍術を学ぶこともままならないぞ。」

「なぜだ。」

「お前の仲間たちが使う武器は基本、剣や棍棒などの振る武器だが、槍は突くのが主だ。体の使い方が違う。お前は仲間たちの体の使い方を見て学んでいるから、まずそこを強制するところからだ。それが嫌なら、別の方法もあるにはあるが、この花果山にそんな技術があるとは思えない。」

「花果山をなめているのか?」

「そうじゃない。明らかにない……というより、作ることのできない技術だから、それは今度にしてやるが……どちらがいい?このままにするか、厳しくはなるが―」

「槍術を習得するには、それしかないのだろう?わかった。そうしよう。」

「話が早くて助かる。ならまずは……」

俺が修行の内容を離そうとすると、近くの茂みの奥から一匹の猿がやってくる。その猿は顔全体に汗をかき、ひどく慌てた様子だ。

「晨璃様!!それに宿!」

「なんだ?随分と慌てた様子だが。」

「俺には敬語なしか。まあいいが。それで?」

「大聖様がお呼びで。急ぎ来るようにと。」


「突然呼んですまないな。」

大聖に呼ばれてきてみれば、そこには俺たちのほかに、花果山の猿たちの幹部たちもそろっていた。奥に座る大聖の顔は険しく、周りの猿たちとしきりに何かを話している。

「いえ、別に。」

「それより、大聖様。何故?」

「落ち着いて聞いてほしい。俺たちは迅速に対処しないとならない。……お前たち、贄喰、という妖怪を知っているか?」

「いえ。」

「私も同じく。」

「贄喰は、生贄を主食としている質の悪い妖怪だ。とある人間たちが信仰している化け物だ。どうやらそこの人間たちが、この花果山を狙っているみたいでな。ちょうど今、この花果山を贄喰とその軍勢が登ってきているところだ。」

「と、言うことは…」

俺がしゃべるより早く、晨璃は近くの木に立てかけていた槍を手に取り、目に殺意をたぎらせる。

「どこのあたりですか?」

「南の方だ。俺もあとで行く。お前たちは先に行ってくれ。宿。晨璃を頼むぞ。」

「御意。」

そして俺は、晨璃と同じところに立てていた得物を手に、南に向けて走り出す晨璃の後ろを追いかけるのだった。

次回かその次ぐらいにもしかしたら、新しいキャラクターが出るかもしれません。今回の話は古代中国を題材にしていますが、今度出すのは中国らしからぬ雰囲気の人物にする予定です。

どんなキャラクターが出てくるのか、楽しみにしていただけたら幸いです。

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