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「日付がさまざまだな。出来事もちぐはぐしている。言っていた事に矛盾がいくつもあるな」


 5枚の資料の中身に書かれている、虐めの内容はさまざまだった。

 場所も周りの様子も、目撃者も違う。

 同じ日に同じ時間に違う場所で虐めだと言うのもある。

 どう見ても可笑しいだろう。

 

 

 僕は虐めを一切見ていない。

 なのに、でるわ出るわの数々の虐めの内容。しかも一貫性がない。


 なのに、その出来事に合わせるかのようなレティシアがミランダを虐めた証言がある。なぜだろうね?

 僕はアレックスたちを見た。彼らは何が起きているかわかっていないようだ。


「アレックス、お前ら。公平な眼で見ろと言ったはずだが?」

「確かに、レティシア嬢はミランダを虐めていました。間違いありません」

「どうやって調べた?」

「それは・・・」

「彼女は王太子妃として、王宮に行く日もあった。もちろんそれも調べているよな?記録に残っているからな」

「えっ、あっ・・・」


 気づいたのか、顔色が悪くなっていく彼ら。


「ミランダ、どうして、こうも内容が違う?」

「いちいち覚えていません。間違うこともありますわ」

「・・・そうか。ならば、王宮側もきちんとした証明をだそう」

 

 父を見ると、頷いた。陛下が右手をあげると、すっと、音もなく三人の人物が現れる。

 

「この者たちは『王の影』だ。わたしをはじめ、わたしの婚約者、そして聖女である君にもついていた者だ」 

「私に?なんで?」

「『聖女』だからだよ。当然だろう。いざと言う時に『聖女』の行動を把握する為だよ」

「聞いてないわ!」

「当然だろう。『影』なんだ。国王陛下直属のね。見えるところでいたら、生活が不便じゃないか」

「そんな!早く言ってよ!!」


 ミランダが声を荒らげる。


「で、『影』は何を見た?レティシアはミランダを虐めていたのか?」


 僕は聞いた。

 誰が誰を担当していたかは知らない。

 彼らの名前だってどうでもいい。


 一人が小さく呟いた。


「レティシア様は何もしておりません」


 違う一人が答える。


「聖女様も虐められてはおりません。虐められる以前にレティシア様を貶めようとして画策しておられました」

「嘘よ!!!嘘に決まってるわ!」


 ミランダは顔を真っ赤にして叫ぶ。

 

「『影』が嘘をつくわけはない。国王の『影』だ。それを疑うことは国王を疑うことに等しい」


 ミランダは真っ白なドレスが黒い影を作るほど握り締めていた。

 真っ赤な顔で禍々しくこちらを睨んでくる。


「ミランダ。君は『聖女』だよな・・・」

「そうよ。聖女よ。私は国王の次に偉いのよ!」


 僕は何を見ていたのか?

 聖女と、奢らない誠実な女性と思っていた。少し甘えっ子の可愛い妹同然とも。


「聖女は人を疎むのか?人を貶めるのか?」

「私だって、人間だわ。好き嫌いだってあるわよ。だから何?それのどこがいけないの?」

()()だから・・・。そうだな、誰もが気が合うわけではない。反りの合わない者だっている。でも、君はレティシアを心配もしなかった」

「何よ!勝手でしょう」

「あれだけ血を流して倒れていたのに、心配もしなかった。『()()』としての()()()()も使わなかった・・・」

「・・・あっ・・・」


 そうだ。

 違和感はそこだった。


 心配どころか、君は僕とレティシアが婚約解消になったことを喜び、自分が婚約者になる事を喜んだ。


 一人の()()として。

『聖女』と言う立場を忘れて・・・。


 だから・・・。

 気持ち悪く感じたのだ・・・。

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