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006.実行委員と合唱と

次の日、教室に行くと、すでに昨日の話題でざわついていた。


黒沢と女子2人の周りに人がいた。

俺はそおっと、自分の席に座った。


黒沢は元気そうだ…でも、腕に包帯がある。

なんだ?


有岡先生が入って来た。


「起立、おはようございます!着席」

黒沢の号令。


有岡先生は

「学芸発表会の実行委員を2名クラスから選出する。

この期間限定の専門委員だ。

ちょっと、忙しくもあるが、学校の設備等に触れたり、面白いと思う。

当然、通知表、内申にも書き添えられる。

2名選出なので、帰りまでに考えて欲しい。


あと、クラス合唱コンクールがある。

曲は先生が職員室でくじ引きで決まった。

このクラスは『Believe』になった。

詳しくは音楽の時間にパート割と歌い方について指導がある。

決めるのは、指揮と伴奏なんだが、希望者はいるか?」


教室が静かになった。


まあそうだよな。


有岡先生が

「もしどうしてもやりたい人がいない場合、吹部の人に声かけてみてって内田先生から言われている。」

と言った。


俺は、夏コンの頃、指揮台に立っただけで吐いて、ピアノを打楽器って思ってて、ホルンは楽しいと思っているけど、合唱を率いることが出来るほどの吹部員ではない。


「はい!」

女子2人の声が聞こえた。


「私達で指揮とピアノやります!」


おお…。

有岡先生は

「他に候補がいなければ、依頼するが、いいか?」

と聞くと、拍手が起きた。


有岡先生は

「じゃあ、金田と木崎、詳細は後ほど、声かける。

あと、有志合唱っていうのがあってな。

これはやりたい人が舞台にでる。

今年は『Mrs. GREEN APPLE - 僕のこと』をやるとのこと。

毎年、この有志合唱も楽しみにされてるプログラムの1つだ。

委員会とか部活とかその他、色々忙しいと思うが、

先生達もできるだけ生徒が参加しやすいよう、

委員会も部活もスケジュールを組むので、出来るだけ参加してみるといい。」


合唱もMrsか…いいな!

『僕のこと』って、思わず泣いた曲だ。


Mrsはずっと大好きで聞いている。


学芸発表会、楽しみになって来たな。

歌で、ホルンで、好きな曲が出来る。


吹部は、どうなるんだろう…。


------


音楽の授業では、3パート分けをした。


男子は全員テノール、一部アルトで俺はアルトになった。

女子はアルトとソプラノで分かれた。


声変わりが始まっているのもあって、思った音が出せない、外れるということが多々あった。


喉が痛くなって、体がだるくなった。


これ、来月まで続くのか?


「練習は、音楽の時間と学活のうち2回までの時間制限を設けている。

なお、指揮者と伴奏者はこれに限らない。」


過去に練習をめぐっていろんな価値観をすり合わせて、現在の方針で進めたら平和になったから、ということだった。


なんとなく察知した。


内田先生は喉の休憩中『僕のこと』の合唱映像をスクリーンに映し出した。

どこかの高校の合唱部が歌っていた。


合唱が、力強くて、じーんと響いてくるものがある。

やってみたいな…。


内田先生は

「実質、練習は4回、それにリハで5回で仕上げる。

パート別音源と楽譜をアップしておくので、それぞれ自分の希望するパートを覚えてくるように。参加希望者は今週中にフォームに入力しておいて。」

と言った。


何か急に忙しくなってきた。

クラスの合唱、有志合唱、吹部。

今更わかったことだが、学芸発表会って小学校でいう学芸会か。


急に音楽の課題が増えたな。


------


今日は部活がないので、久しぶりに黒沢、高坂、バレー部のやつとの帰り道になった。


高坂が昨日の野次馬の中にいたようで詳しい話を聞きたがった。


「なんとなく聞こえていたんだけどよ、生徒会長が吹部とダンス部に無茶振りしてたから、クロが抗議したらぶっ飛ばされて、救急車で病院送りになったっていうの、マジか?」


というと、バレー部のやつが

「そうそう、それ朝聞いてビビったんだけど、お前大丈夫なの?ほんと?」


と立て続けに聞かれた黒沢は

「ざっくりすぎるが、おおむね合ってる。」

と答えた。


「んで、何で殴られてんのよ?」

と高坂が聞いた。

黒沢は

「先輩達が話し合いに行ったから、俺も情報共有のつもりでその場に居ようと思って行ったの。

内容は、生徒会長は、吹部が今年、Mrsの『青と夏』やるっていうのに乗っかってきて、指揮をやる、と。

それにダンス部が踊るってコラボをやりたいんだ、と勝手に決めて、先に先生にOK取ってすすめたから、それはないだろうと、話したんだけど、『え?何で、やればいいだけです。』みたいな。」


バレー部のやつが

「何か言い方腹立つな。上から目線というか、命令口調というか、高飛車で。」

と言うと、黒沢は指差しながら

「そう!それで先輩達とか、ダンス部の人とかブチ切れてて。

これ、何とか話し合いをさせないと、えらい目にあわせるぞ、っていうつもりで、俺は

『こんなに話し合いにならないなら、生徒会不信任案を提出します。』

って言ったんだ。

さすがに、これなら話し合うだろうと。

そしたらいきなりバーン!よ。」


と言った。


バレー部のやつが

「不信任案って、よく国会とかである、アレか?生徒会にもあるの?」

と聞くと黒沢は

「ある。詳しい手続きまでは頭に入ってなかったんだけど、生徒手帳に書いてあったわ。

全校生徒の3/2が不信任案に賛成したら、辞めさせられる。

ほんとにやるつもりは全くなかったよ。

その不信任案を通すまでの活動するぐらいだったら、生徒会長が手を引けばいいだけだと思った。

俺だって練習したいし。

雰囲気悪いの何とかしようと思っただけだし。

壊すための活動とかするぐらいなら、何かしらアイデア出そうとも考えていたと思う。」

と言うと、高坂はマジか!と驚いていた。


「で、どうなるの?」

とバレー部のやつが聞いてきた。


「うーん、まだ、こじれてるんだ。

今日部活ないけど、明日はあるから、再度話し合いになるんじゃないかな。

どういう形式になるかわかんないけど。」

黒沢がそう答えると、高坂が

「今度の怪我は大丈夫なのか?」

と聞いてきた。


俺も気になっていた。


「うん、CTもレントゲンも異常なかった。

腕はちょっとガラスで切ってたみたいなんだ。

興奮してて気が付かなかったんだけど。

3針縫ってる。すぐ治るよ。」

と、さらっと答えた。


あの時のガラスか。

頭ばっかり心配で、近くで藤井も泣いてたから腕まで見えてなかった。

頭押さえてたから、見えない角度だったんだ。


「俺お祓い行ってこよっかなー。」

黒沢がそう言うと高坂が

「巻き込まれてるのか、自分から巻き込まれに行ってるのか…。」

とぼやくように言った。


バレー部のやつが、落ち着いた口調で

「クロ、ちょっと言葉が強かったんじゃねえか?

気持ちもルールも吹部も、あたおか生徒会長もわかるけどよ。

最近の怪我は、クロが特攻してるパターンじゃねえか。」

と言った。


黒沢は、おどけた調子で

「てへ、ごもっともっす。井関先生、気をつけまーす!」

と言うと、バレー部の奴は、少し真剣な顔で

「先生とかいうな。クロは賢い子なんだから、もうちょっと考えろ。」

と、黒沢のおでこをぺちっと叩いた。


バレー部のやつは、井関っていうのか。


黒沢は、はーい、と軽い返事で、分かれ道から後ろスキップで帰って行った。


黒沢の頭の回転や反応の早さはすごいと思いつつ、

それが怪我になってしまうのは、怖い。



黒沢が怪我すると、俺も藤井も泣いて心配することを、黒沢は頭の隅っこに入れておいてくれないだろうかと思った。




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