003.コラボる?
昼休み、教室の移動をしていたら、前から山田先輩と、その友人らしき人が歩いていた。
こういう時って会釈ぐらいしたほうがいいんだろうか?
と思っていたら、隣の友達らしき人と怒りながら話している。
山田先輩:「あいつ!まじで吹部なめんな!」
その友人:「ほんと!ダンス部なめんな!」
山田先輩:「どうやって黙らせる?」
その友人:「とりま、両方の部活中に、奴、呼び出して締め上げるか。」
山田先輩:「部活で情報共有後、ちょっとそっち行くわ。」
その友人:「わかった、奴の計画には乗れないし、無理やりにでもやるなら、ステージ上で叩きつぶす方法を考えるわ。」
山田先輩:「あのさ、よくある、本番やるのと違うやつ教えとくってのは?」
その友人:「ちょっと手間かかるけど、奴が聞く耳持たないなら、面子つぶしぐらいやってやるよ。
あいつかっこつけたい、いいとこどりしたいだけだろ。
自分とあのボーカルと重ねてそう。腹立つわー。
似てないのに。
何か目立って『実績残しました!』ってやりたいだけ。」
山田先輩:「どうせ内申とか、面接アピールネタだよな。ふざけんな!マジで。」
俺の事は全く視界に入ってないようだった。
あの山田先輩が…怖い。
黒沢が
「あの様子だと、生徒会で何かあったな。」
と言った。
「どういうこと?」
と聞くと
「ほら、あそこ」
と黒沢が差す方向に「生徒会室」があった。
そこに背の高い、思わず見とれるイケメンがいた。
「生徒会長。
俺、学級委員だから委員会で生徒会とも顔合わせる事があるんだ。
頭も顔もいいんだけど、行動が結構クセ強めで、委員会中ちょいちょい炎上するんだよね。
でも本人メンタル屈強で全く動じない。」
学級委員だと、そんな情報が入るのか。
部活で何が起こるんだろう?
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放課後、音楽室へ行った。
集まったところで、山田先輩が、話がある、と切り出した。
「今日、昼休みに部長会があって、出た話があるの。
学芸発表会に向けての各部活の活動経過報告で『今度の学芸発表会で青と夏を演奏予定、順次曲目や演出等決めていきます。』って言ったの。
そしたら、生徒会長が
『その曲、僕が指揮振るから、吹部の演奏でダンス部、あのMVみたいな青春ダンスをしてくれる?吹部とダンス部コラボ、僕主導するから。』
って言われました。
詳しい事は何も決まってません。
方向性を打診された段階です。
賛成や反対、その他のご意見など、教えてください。
それを持って生徒会等で意見交換します。」
と冷静に言っていた。
昼休み、めっちゃ怒ってたじゃん。
気持ちは大反対なのは察知した。
「言い方、進め方、部員の気持ち無視してる。」
「指揮、なめてるんじゃない?」
「今日、初見で合奏の場に呼んで指揮台で指揮してもらおうか。
『これどうやってまとめるの?』って。」
「いったん内田先生に相談したほうがいいよ。」
「ダンス部の顧問、松田先生だっけ?なんて言ってるのかな?」
「てか、ダンス部のほうはどうなんだろ?」
「吹部とコラボっていうか、そうなると、BGMになるじゃん。」
「あいつナルシストで強引だから、ちょっと早いうちに手打ったほうがいいぞ。」
「立候補の時はめっちゃいいやつだったのに、しばらく経ってから、暴走しはじめたよね。」
「ほんとそれ、今独裁者になってきてる。」
だんだん生徒会長の悪口になってきた。
そういえば、山田先輩のお兄さん、すばる先輩も生徒会長だったって言ってたな。
こんな事言ったり言われたりしてたのかな?
山田先輩は
「いいにくいかもしれないけど、賛成って人、手挙げてくれる?
何人ぐらいかな?」
手を挙げた人はいなかった。
山田先輩は
「ごめん、雰囲気で手を挙げにくいって感じかな?
遠慮せず、面白そう、って思ったら手を挙げて欲しい。」
と言った。
それでも手は挙がらなかった。
山田先輩は続けて
「反対の人」
ほとんど上がった。
俺は両方手を挙げなかった。
山田先輩は
「両方に手を挙げなかった人、理由を教えてもらえると説明で助かるんだけど…。」
と言うと、
「何を言ってるのか、いまいちわからないからです。」
という声が聞こえ、それに続いて「同じでーす。」「同意です。」
という事があちこちから上がった。
山田先輩は、ありがとうございますと言った後、
「この後ダンス部に…」
と言ったところで、さっきの友人の人が音楽室へ来た。
友人の人は
「ミーティング中?ちょっといい?」
と言った。
山田先輩は、どうぞと言って音楽室へ誘導した。
「ごめんね、行くって言ってたのに、待たせたね。」
と言うと、
「いや、いいよ。もうダンス部は速攻意見一致したから伝えに来た。」
と言った。
山田先輩はその友人を紹介した。
「こちらダンス部の部長、北沢 彩さんです。
今回のコラボについて、どうするかと相談してました。
で、どうだった?」
「ダンス部、一瞬で大炎上してる。生徒会室殴り込みに行く勢い。
もうやりたいダンス決まってて、実は夏休みから練習してたんだよね。
『吹部がやりたい人いたりするかもしれないし、何か案あるかもしれないし、出るかもしれないから、いったん吹部行って、状況聞いてくる』って待ってもらってる。
で、どう?」
と北沢先輩は聞いてきた。
山田先輩は
「大体同じかな。
っていうのは、実はテーマに沿って、曲も決まっていたから、
後は練習で曲を仕上げて演出を企画進行してるの。
それを途中で変な横やり入れられて、正直イラっとしてる。
あんまり企画内容話したら、あいつ絶対絡んでくるじゃん。
いいとこだけかじって手柄を俺様ものにするから、
一緒にやることはしない。
内田先生にも相談しようか、ってことになってる。
ダンス部も松田先生に相談しておいたほうがいいかもよ。」
北沢先輩は腕を組んで考え込む様子で
「そうだね。」
と言った。
そこへノックの音がした。
失礼、と言って入って来たのは、生徒会長だった。
「あ、もうコラボの話が進められていたんだね。
じゃあ、吹部とダンス部での合同練習はいつにしようか?」
と切り出した。
うわ、話聞かない感じだな、この人。
クセつよってこのことか。
白川先輩が
「小谷ー。お前、人望失くしてるぞ。
勝手にコラボ企画進めてるから。」
と言うと、生徒会長は、フッと笑って
「新しい事をしようとすると、必ず反対勢力が発生する。
そこをどう説得していくかがリーダーの役割。
今、僕は、新しい学校のリーダーになっているんだ。」
と、にこやかに言った。
ちょっと何言ってるかわかんない、ってこういう時に使うんだよな、きっと。
白川先輩は
「お前の場合、反対勢力の前に、味方がいないじゃん。
やりたくないことを強要するのって、権力の乱用だろ。」
と言うと、生徒会長はまたフッと笑って
「生徒会のメンバーが『頑張ってください』って言ってくれている。」
と言うと、北沢先輩が
「言っても聞く耳持たないし、小谷って反対意見を言う人いじめるじゃん。
だから、今年の生徒会役員、全員目死んでるじゃん。」
と言った。
生徒会長はまたフッと笑って
「僕は論理的、合理的に意見を述べ、反論も聞いている。
それに対してまた意見を言うのはいじめとは違う。
とりあえず、内田先生と松田先生には話をしたところ、『部長間で調整とって』と合意を取ってある。
あとは君達が共通目標に向かうだけだ。」
と言った。
「はあ?」
「何それ!聞いてない!」
山田先輩、北沢先輩はもちろん、吹部の部員もどよめいた。
生徒会長は
「じゃあ、改めてスケジュール調整しようか。
吹部、ダンス部ともに、頑張りましょう。
部員にも情報共有して、音楽とダンスで楽しい舞台、空間を作りましょう。」
と言って、音楽室を出て行った。
…は?
結論は、やるってこと?
「帰る。」
江口先輩はそう言った瞬間、立ち上がって、音楽室からダッシュで立ち去った。
あっと言う間で、気が付いた黒沢があわてて追いかけて行ったが、間に合わず、ぐったりした様子で戻って来た。
山田先輩は
「この後、内田先生と松田先生と北沢とで話してくる。
みんなはこの後パート練、基礎練と青と夏の譜面練習してください。
さっきの件は、何とかしてくる!」
部員のはい、という返事と同時ぐらいに、山田先輩と北沢先輩は職員室へ向かって行った。
俺はなんとなくモヤっとした感覚を持ってはいたが、
練習に向かうことにした。




